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その体で『男友達』は無理があるだろう!?  作者: 赤金武蔵
第1章 大親友として──
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第15話 知らぬが仏

 4人で学校を出て、駅前に向かう。

 この町の駅前はかなり発展していて、無いものが無いと言われるくらい、なんでも揃っている。

 格安スーパーはもちろん、商店街。ショッピングモール。映画館。プラネタリウム。バスでちょっと足を延ばせば、動物園まである。だからか、放課後のこの時間になると、うちの高校の生徒だけじゃなく、他校の生徒も多く集まって来ていた。

 見渡す限りの、小、中、高、大学生。休みなのか親子連れも多く、いつも通り賑わっていた。


 俺たち住民にとってはいつも通りの光景。だがしかし、奏多は物珍しそうにあちこち見ていた。



「おー、すっごい人だね」

「カナち、駅前は初めてなの?」

「うん。ぼく、こっちに来てまだ日が浅いから」



 ガキの頃は、公園で遊ぶことが正義だったもんな。駅前なんて、家族と一緒じゃないと近寄らないし。

 目的のクレープ屋に着くまで、萬木があちこちを説明しながら案内している。

 本当は明日、俺が奏多を案内してやるつもりだったけど……俺より、駅前で遊び慣れてそうな萬木に任せた方がいいか。

 ……寂しいなんて思ってない。全然、思ってない。

 浮上してきそうな気持ちを押し殺していると、九条が俺の隣に並んだ。



「取られちゃったね、彼女」

「彼女じゃないって。九条こそ、寂しそうだぞ」

「あはは、まさか。純恋は大切な親友だけど、私だけのものではないよ」



 だよな。俺だって、アイツが誰と一緒にいようと、気にしない。

 ……相手が男だったら、ちょっと……だいぶ……いやかなり、気になるけど。

 って、この考えもなし。なんかむかむかする。

 頭を振っていると、前を歩いていた2人がこっちに手を振ってきた。



「行こうか。お子様たちが呼んでる」

「だな」






 お目当てのクレープを買い、4人で駅前を離れて閑静な住宅街を歩く。

 駅前って人が多すぎて、いつ誰かに絡まれるかわからないからな。これも自衛のためだ。

 と言っても、こっちに来ても何もない。あるとすれば、いつも俺たちが遊んでた公園くらいだ。

 どこに行こうか悩んでると、萬木が立ち止まって辺りを見回した。



「あれ? この辺、来たことあるよーな」

「私も同じこと考えてた。確か、小さい公園があったよね」



 2人の言葉に、奏多と目が合った。小さい公園って、あの公園しかない。



「その公園、ぼくたち知ってるよ。誰も来ないしベンチもあるから、ゆっくりするならいいかも」

「ほんと? よし、じゃあ公園にれっつごーだ! ウチにつづけー!」

「純恋さん、場所わかんないでしょっ。ぼくが案内するー!」



 あ。……行っちまった。まあ、場所はわかるから、問題ないけど。



「行っちゃったね。それじゃあ氷室くん、案内よろしく」

「ああ」



 九条を伴って、特に会話も盛り上がらないままのんびり歩く。



「九条たちの家って、どの辺なんだ?」

「隣町。歩いて帰れる距離だよ」

「隣町なのに、この辺に公園があるって知ってるのか」

「昔、純恋と一緒に探検しててね。公園で出会った2人の子供と喧嘩したんだ。今でも覚えてるよ」



 へえ。公園で会った子供と喧嘩……ん? あれ?



「あ。安心して。喧嘩と言っても、派手なものじゃないから。軽い取っ組み合いだよ」

「そこは心配してないけど……覚えてたらでいいんだが、もしかしてその時、公園にあった段ボールハウス壊した?」

「ああ、そう言えば壊しちゃったね。本当、彼らには申し訳ないことを………………え」



 目を見開いた九条と目が合う。

 急に、その時の詳細な記憶が思い出された。顔も、声も、鮮明に思い出せる。

 あの時、取っ組み合いになった子供……当時の面影がある。間違いなく、九条だった。てことは、隣にいた子は萬木ってことか。

 九条も当時のことを思い出したらしく、能面のように顔を青白くさせた。



「あ、あの、えっと……!」

「落ち着いて、九条。慌てなくても大丈夫だから」

「だ、だってあの時、君たちに絡んだのは私たちで……! ご、ごめんね。謝って許されるかわからないけど……」

「だから落ち着けって。何年前のことだと思ってんだよ」



 思わず苦笑いを浮かべた。今更、昔のことでとやかく言うような年齢じゃない。ガキじゃあるまいし。



「でも、それじゃあ私の気が収まらない。なんでも言ってくれ。私にできることなら、なんでもするから」

「……なんでも?」



 一瞬、良からぬことが脳裏をよぎったが、すぐにその考えは捨てた。馬鹿か俺は。そんなことしたら、普通に犯罪だわ。



「なら……奏多と、これからも仲良くしてやってくれ。アイツ、友達がお前らしかいないからさ」

「……ああ、もちろんだとも」



 九条が真剣な顔で頷く。そう言ってくれると思った。学校で自分を出せないと、アイツも可哀想だからな。

 十字路を曲がると、いつもの小さい公園が見えて来た。が……先についてた奏多と萬木が、地面にしゃがみこんで何かしている。ありんこでも見つけたか?



「おーい。何してんの?」

「あっ、京水! 大変、大変だよ!」

「ウチがね、ここで2人の子供と喧嘩したって言ったら、カナちたちも喧嘩したんだって!」



 え……やば。2人もそのことを思い出すなんて。

 まさか、そのことでまた喧嘩を……?

 九条も慌てた顔をして、俺と2人を交互に見て来た。仕方ない、助け舟を出してやるか。



「2人とも。実はさっき──」






「ぼくたち、おんなじ2人組と喧嘩してたんだよっ!」

「すっごい偶然だよね!」






 ……ん? え、もしかして、気付いてない?



「あの時は引き分けだったけど、次あったらぼくの鉄拳で思い知らせてやるんだっ」

「ウチだって、股間に蹴り入れてやるんだからっ」



 シュッシュッ、とシャドーボクシングや蹴り上げをする2人を見て、とりあえずかばんで股間を隠した。蹴られたくない、切実に。



「あの時は2対2だったけど、今は4対2だし、絶対勝てる!」

「ウチらの強さを思い知らせてやろう!」

「「おー!」」



 ……あー……うん。そうですね。

 また九条と顔を見合わせると、どちらともなく笑った。

 血の気の多いこいつらには、真実は言わないでおいてやるのが吉、だな。

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