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二十三  心陽先生


 立てこもり事件を起こしているのは陽奈乃さんのお母さんだと僕から言われても警察は、にわかには信じられず。


「中にいるのは陽奈乃さんのお母様、、、て、なぜそう言える?本当にそうなのか?」

「そうだよ。結華ちゃんが目撃している。間違いないよ。ね、結華ちゃん。」


僕が、そう言って結華ちゃんを見ると


「陽奈乃って子のお母さんかはわからないけど。女の人です。それは確か。」

「女性?」


丈さんも、警察の人たちも顔を見合わせて困惑している。丈さんに僕が、


「東雲先生が男性が立てこもってるって言ったの?」

「ああ、通報はそうだった。女性の声で、クリニックに男が押し入って来た。患者の家族で、緑川と名乗っていると、、、。」

「丈ちゃんが、先生と約束している時間?」

「いや、それよりも早い時間だった。」

「やっぱり、東雲先生に陽奈乃さんの事で呼ばれたんだね。」


約束している陽奈乃さんのお母さんが来院してたのだから先生だってなんの迷いも無く招き入れる。

丈さんは少し考えて、


「もしかしたら、通報は、陽奈乃さんのお母様からってことなのか?」

「そうだと思うよ。自分でクリニック関係者のように通報して、そして立てこもった。」

「そう言う事か、、、。」


分かれば単純な事だよね。


「約束の時間よりも早く来たのは、丈ちゃんを中に入れずに立てこもるため。

犯人は丈ちゃんが狙いだから中にいたら襲えない。

それに立てこもり事件を起こせば丈ちゃんを誘い出せるし、事件に気を取られている丈ちゃんの隙を見て襲えるって考えたんだよ。」

「、、、うん、そうか。でも自分の首にナイフって。颯、何か見えたのか?」


僕は首を振って


「なにも見てないよ。」

「じゃあ、どうして?」

「東雲先生は合気道の有段者だよ。学校関係者も患者さんもみんな知っている。男の人ならともかく、女の人が一人で押し入ったとしたら東雲先生、とっくに制圧しているでしょ。」

「確かに。」

「陽奈乃さんのお母様だって分かってるはず。制圧されないためには、こうして自分の首にナイフを当てる。そうしていたら東雲先生だって手は出せないよね。」


丈さんも警察の人もめちゃめちゃ関心してた。


「西園寺警部。甥っ子さんですか?すごく論理的に物事を整理している。いやー警部によく似てますね。」

「違うよ、この子のじゃじゃ馬な母親と幼馴染なだけだ。」


丈さんのそんな返答に僕は、ちょっぴり寂しかった。


「丈ちゃん、急いで。たぶんお母様ギリギリの精神状態。東雲先生やご家族の事は傷つけないけど、自分の事を傷つけるのは簡単にしちゃうよ。」

「そうだな。急ごう。」


結華ちゃんが


「こっちに来て。庭に回れる。先生、いつも窓を開けてるから入れると思う。」


 庭に回るチームと、玄関から声をかけるチームに分かれて突入することになった。結華ちゃんが案内してくれた道は、大人たちには少し窮屈で、みんな葉っぱだらけになりながら進んで行ったんだ。

もちろん僕も後ろをついて行ったよ。

葉っぱだらけの丈さん。緊迫してる場面だけど、僕は笑い出しそうになちゃった。


先生の家の掃き出しの窓は結華ちゃんが話した通り開いていた。

立てこもり犯なら全ての窓に施錠させて、カーテンを引かせるだろうに、陽奈乃さんのお母様は、そんな事も思いつかないほどに追い詰められていたんだ。


東雲先生達に危害を加えないと分かっていての制圧だったし、立てこもっている間中、先生が陽奈乃さんのお母様を説得していたから、無事に事件は終焉した。


丈さんは、優しい声で陽奈乃さんのお母様に尋ねた。


「シェルターにいたのに。なぜですか、なぜまだあの人と連絡をとっていたのですか?」


お母様は、首を横に振りながらただ涙を流していたね。


「ゲームでしょ。」


僕がそう言うとそこにいた全員が僕を見た。


「アバターになって陽奈乃さんのゲームの中から指示を出して来たんでしょ。言う事聞かなかったら今度は陽奈乃さんをって。」


丈さんは陽奈乃さんのお母様の肩に手を置くと


「僕らは頼りなかったですか?確かに事件が起きなければ警察は動かないのかもしれません。ですが、あなたが暴力を振るわれた時点でもう犯罪が起きたのです。どうかこれからは声をあげてください。

僕ら警察の事も、東雲先生やカウンセラーの皆さんの事も頼ってください。そして、どうか信じてください。その声に応えられる人間は必ずいます。」


陽奈乃さんのお母様は大きな声で子供のように泣いた。


 丈さんは、手錠をかけなかった。代わりに自分の上着をかけると女性の警察官だ肩を抱いて連行していった。


 ー丈さんって本当に優しい。

  大好きだよ丈さん。ー


って思ってたら、心陽先生が


「あの、西園寺先輩。覚えていらっしゃいますか。東雲ししののめ 心陽このはです。西園寺先輩の三学年後輩の。先日、警察署でお姿を拝見したのですが、ご挨拶できずに大変失礼いたしました。」


 ーえ、ちょっと、ちょっと。

  心陽先生、その瞳の中いったい何ですか!

  丈さんで溢れているんですけど!

  丈さんだらけなんですけど!ー


「あああ、こ、心陽先生。えっと、、、。」


そう言われても、心陽先生を思い出せないでいる丈さんに東雲先生が笑いながら


「心陽、やめなさい。西園寺くんが困っているじゃないか。」

「お父様。」

「申し訳ありません。西園寺くんは学生の時から有名人だから心陽はよく知っていて、憧れの先輩なんだよ。だから君に会えて、間接的ながら仕事もご一緒できて嬉しいのでしょう。」

「あ、そうですよね。すみません、、、。西園寺先輩は、私のことなんて、ご存知なくて当たり前ですよね。申し訳ありません。」


 ーそうだよ。三学年も違ったら中等部でも、高等部   でも会いません。

  もはや他校の生徒だよ!

  丈さんの全く知らない人ってことです!ー


「こんな所での再会だけど、どうか娘のことをよろしくお願いします。」


 ー再会って、東雲先生まで何言ってるんですか。

  再会ってまた会った人たちが使うんです。

  娘さんには再会でも、

  丈ちゃんには初めましてですよ!ー


「いや。こちらこそ。お世話になっています。これからもお力添えよろしくお願い致します。」

「はい。」


 ーまあ〜心陽先生、良いお返事ですこと。

  でも、よろしくは仕事だけだよ。誤解しないでよ!

  なんだよ心陽先生、ニヤニヤしちゃって。

  もー、丈さんを渡すもんか!ー


僕は丈ちゃんに


「丈ちゃん。僕、なんだか急に怖くなっちゃたよ。」


って、心陽先生の前で丈さんに飛びついたんだ。本当は全然怖くなんてなかったけどさ。丈さんは、


「よく頑張ったな。颯のおかげだぞ。」


僕を抱っこしながら頬ずりして、よしよしって頭を撫でてくれた。


 ーへへへ、どうだ。心陽先生。

  丈さんは僕と母さんの丈さんなんだよ。ー


僕を抱っこしたまま東雲先生に一礼をして部屋を出た。僕は丈さんの背中越しに心陽先生と目があったから


あっかんべー


ってしてやったんだ。心陽先生と結華ちゃんが並んで立っていて


「今の、あっかんべーって、何?え、私に?」

「ふふん、なるほどねー。颯真くんの宣戦布告ですよ、心陽先生。」


さすが結華ちゃん分かっていらっしゃる。

まあ、僕らの勝ちは決まってるけどさ。


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