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十七  残像の意味


 丈さんは、僕から見えやすい位置にホテルのスタッフを並ばせた。

僕は、集められたスタッフの中に畑中先生のコップに水を注いだ人物を探す。さすがに顔まで見ていなかったが、畑中先生の瞳の記憶が教えてくれている。


まずは軽く『めめ』、神様からもらったギフトの力を使わせてもらうよ。


 畑中先生は豪快に見えるけど、誰にでも気配りのできる素敵な先生。

母さんと話しをしている時に、邪魔をしないようさりげなくコップに水を入れてたウェイターにもありがとうと、目を見てお礼を言う先生だ。


 ーいつもの気遣いが、先生を救います。

  待ってて、畑中先生。ー


 丈さんは僕の力を知っているから、並ばせたスタッフを前にして、僕の方をチラリと見た。

僕は意識を取り戻した時の畑中先生の瞳の残像からウェイターを確認していたので丈さんに目で合図を送る。

丈さんは頷いて、一人のウェイターの前で止まり


「この中で畑中先生、つまり倒れた男性のコップに水を足した方は?」

「、、、。」

「もう一度伺います。コップに水を足したのはどなたでしょう?」

「あ、は、はい。私です。た、担当テーブルですので。」

「責めているのでは無いのです。お話を伺いたいだけです。」


丈さんは、そのウェイターを僕の近くに立たせて話を聞いた


「始めからずっとあなたの担当でしたか?」

「、、、はい。ただ、、あの、、」

「はい。なんでしょう。」

「ずっと一人で同じテーブルを担当していたわけではなく。」

「一人ではなく?」

「なんて言ったら良いのか、、、」

「事実をそのまま。こちらで判断いたしますので。」


ウェイターは、事実を話すことをためらっているように感じて、丈さんは少し彼に不信感を抱いているようだ。


「はい。えっと、、、ですね。途中で少し、、、あの、、、電話をかけに抜けて、、」

「持ち場を離れたと言う事ですね。食事会が行われている最中に。」

「す、すみません。すみません。少しの間です。本当に少しの。」

「その間、誰かにフォローしてもらっていた。」

「、、、はい。」


すると一人のウェイターが小走りにやって来て


「申し訳ありません。主任の私がフォローしておりました。彼、奥さんが緊急に入院して、、、その、、お産が予定より早くなって。」

「は、えっ、お産ですか?」

「はい。清雅英明学院様の進級試験の一つであることは私共も重々承知しておりました。ですので、彼も抜けることなく現場に残ってくれたのです。

が、私がフォローするからと私の一存で電話を携帯させていました。普段は絶対にしないのですが、、、本当に申し訳ありません。」

「なるほど、、、いやいや、きちんと理由がわかれば何も問題はありません。」


そう、何も彼に問題は無いよ。元々彼は犯人じゃない。

そこじゃない。僕が求めていたのは、彼の瞳の中なんだ。


 瞳に映った直後に見るならば、どんな物でも残像として見える。

でも『めめ』の本当の力は、防犯カメラを再生するのとは違う。

映ったものを再生するんじゃ無い、記憶の中を見るんだ。

だから記憶に残っていなければ、瞳に残像として現れない。ウェイターの彼に強く記憶に残ることが起きていなければ残像は見えない。

出産に気を取られていただろうから、この件について彼の瞳の残像は期待できないってことだ。


 ーくそっ。ー


丈さんは、まるで僕の中の感情が見えたように穏やかな口調で話し始めた。


「颯真くん。どうした。急に怖くなったかな?刑事さんが一緒だから大丈夫だ。おいで。」


怖がってる少年をなだめていますといった風に僕の肩に手を置いて、ウェイター二人の前に立たせた。


なるほど、もっと瞳が見えやすいようにだね。

でも丈さん、この二人の瞳に意味はなさそうだよ。


そんな僕の心を見透かすように、丈さんはニコッと笑うと続けた


「どんなに他に気を取られていても、あなた方はプロです。何か異変はありませんでしたか?電話から戻ってきた時に誰かとぶつかった、とか。フォローしている時にいるはずの無い人が立っていたとか。どうでしょうか。」


二人のウェイターは顔を見合わせて、考えているとテーブルを担当していた彼が、


「あ、そう言えば戻って来た時。主任の後ろに誰かいたような?ぶつかると危ないなと思ったような、、、でも、それが誰だったか、、、」


 ーそれだ、さすがだよ丈さん。ー


僕は丈さんに飛びついた。丈さんも僕をちゃんと受け止めてくれたね。

僕は、ウェイターの顔を押さえて瞳を覗き込んだ。


見つけた!

そうか。君か。盲点だったよ。

でもなぜ君がこんな事を?


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