一、 母 蘭子 と言う存在
平凡に静かに目立たない人生を送りたい僕なのに、神様からのプレゼントと母さんの存在がそれを許してはくれないんだ。
僕の母さんは、わがままで自分勝手な人。
自分を中心に世界が動いてるって普通に思ってる。
名前は、鏑木坂 蘭子。
ーいかにもって感じの名前だよね。ー
「人生は、たった一度よ。モブキャラになるなんてごめんだわ。
私は、私を生きるの。結婚なんて絶対にしない。
結婚なんてして、旦那の為、子供の為なんて生き方、モブのすることよ。
人生の主役はこの私。私は、自分で稼いで、自分の為に使う。
誰にも遠慮なんてしたくない。誰の指図も受けないわ。」
そんな母さんが通った学校は、幼稚園から大学までストレートで、いわゆるセレブって呼ばれる人たちがこぞって通う、清雅英明学院。
母蘭子が通って、そして今僕が通わされているんだ。
茶道や華道、武道などの代々家元の子や、大会社の社長、重役クラスの子が通う学校で、挨拶はどんな時でもは「ごきげんよう」たったこれだけ。
ー 楽だね。ー
ただすごく狭き門だけど学費全額免除制度があってメチャメチャIQが高い成績優秀者や、運動神経抜群でスポーツ特待の子達もいるけど。
清雅英明学院には密かに生徒たちを分ける呼び名がある。
それは、源氏と平家。
学校創立の時に平安英明学院だった名残りもあり、こうした呼び名で生徒を分けているんだ。
家元の子や社長の子供達は、出生の源がわかるってことで源氏と呼ばれて。
学費全額免除制度を利用する、優秀だけどごく一般的な家庭で育った子達は、一般的な家庭、つまり平民になぞって平家と呼んでいる。
ーなんて時代錯誤。歪んだ人たち。ー
源氏の家柄や経済的に豊な子達は、学校の品格や経営には大切な要素だけど、それだけでは学校の名誉は保たれない。
学費が全額免除になるような優秀な頭脳や、スポーツの世界で名を馳せるほどの生徒は学校の名誉のために重要らしい。
平家の存在意義はそれだけじゃない。
甘やかして育てた我が子に家を継がせ、全てを任せるのは不安である源氏の親たちは、抜きん出て優秀な子供が揃っている平家から、婿や嫁を取り自分たちの家の繁栄を保ってきたそうだ。
平家の生徒にしても将来、会社の社長や名のある家元の一員になるのは悪い話ではないから、ウィンウィンの関係ってわけ。
僕の母さんはのんびり学校生活楽しめちゃう源氏組なんだけど、世界トップクラスのわががままお嬢様だからとにかく自分が誰かに下に見られるなんて許されないんだ。
源氏でありながら、常に成績上位者の集まり平家の中に常に食い込み、一位を取ることさえあった。
とにかく自分の存在を全ての教師、全ての生徒に認めさせたい人なんだ。
「源氏?平家?くだらないわ。私は、私よ!」
現在、同じ学校に通っている僕にとっては、学生時代のこうした母さんの態度はとてつもなく迷惑な存在。
ーなんで同じ学校に入学しちゃったんだろう。
僕は、そっと生きていたいんだ。ー
この歪んだ世界の人たちに僕は振り回されて行くんだけど
それは、もう少し先のお話。