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6. 僕、悪い精霊じゃないよ

 

 森の精霊さんが考えた作戦は、こんな感じ。


 まず、貴族の少女が乗ってる馬車を、部下の魔物に襲わせる。


 そこへ、たまたま通りすがりの森の精霊さんが、貴族の少女を助けるという算段だ。


 そして、そのまま貴族の少女と仲良くなり、馬車に乗せてもらい、そのまま街まで連れてってもらう作戦である。


 まあ、1人で街に行ってもいいんだけど、ほら、俺って引き籠もりじゃん。

 結局、異世界転生してから、100年間もずっと森から出なかった訳だし。

 誰かに、お手て繋いで連れ出して貰わないと、ビビって森から出られないんだよね……


 ん?そんなに上手くは行かない?


 そん時は、森の泉を餌にしてやれば大丈夫だろ?


 森の泉を汲ませてやる代わりに、俺を街に連れ出して!て、感じ。


 泉の水って、良い人にしか効果ないから、全く問題ない。

 超絶善人ならエリクサーにもなるし、普通の人なら、ただのポーションぐらいの効果しかないからね。

 まあ、悪人が飲んだら、タダの毒になるから、即死するかもしれんけど。


 と言っても、所詮、森の泉って、俺の鱗粉が混ざっただけの水なんだよね。

 俺の鱗粉の方が、森の泉より効果があるって話。


 実際、俺の鱗粉を魔物に振り掛けると、弱い魔物なら消滅する勢いだし。

 精霊王の鱗粉は、伊達じゃないのである。


 まあ、現在は、職業 魔王もカンストしてるので、鱗粉を聖よりでも魔よりでも自由に調整出来るんだけど。実際、今は少しだけ聖よりにしてる感じ。

 部下の魔物が、俺の鱗粉浴びて死んじゃうと、目覚めが悪いしね。


 でもって、作戦通り部下の魔物に、馬車を襲わせようとしたんだけど、


 アレ? なんか、馬車を護る騎士同士が戦闘始めちゃったんだけど……


 俺は、何が起こったか分からず、一緒に行動してたシロを見る。


「仲間割れですかね?」


 シロは、そのままの状況を話す。

 ウン。そんな事は見れば分かる。

 だがしかし、これじゃあ、俺の作戦が……


 なんか、どうしたらいいか分からず、静観してたら、多分、馬車を護ってた騎士が全滅して、裏切ったと思われる騎士達が、貴族の少女が居ると思われる馬車に乗り込もうとし始めた。


「これは、イカン奴だ!」


「殺しますか?」


 シロは、冷たく言い放つ。


「シロは待機! 最悪、全員死んでも、ザオ〇クじゃなくて、エリクルで生き返させられるから!」


 俺は、急いで、馬車に向かう。


 そして、今まさに、悪い騎士に殺されそうになってる貴族の少女の前に出て、騎士が突き刺そうとしてた剣を、真剣白刃取りで受け止める。


 これは、職業 武士をカンストした事により得た真剣白刃取りスキル。


 まあ、今の俺は、スキルをわざわざ使わなくても、真剣白刃取りくらい出来ちゃうんだけどね。


「❊-……~○&」

【何だ……剣が動かん】


 どうやら、貴族の娘を殺そうとしてた騎士には、俺の事が見えないようである。

 というか、言葉通じないのかよ!

 ハイエルフには、普通に通じてたのに!


 まあ、コマンドが翻訳してくれるからいいんだけど。


 とか思ってると、


「○♡……?」

【妖精……?】


 どうやら、貴族の少女の方は、俺の事が見えてるようである。

 多分、俺の事が見えるという事は、良い子なのだろう。


 というか、翻訳スキルはないのかよ!

 やっぱり、メッチャ不便だよね。

 異世界転移モノって、翻訳スキル必須じゃなかったの?


 まあ、コマンドでは翻訳してくれてる訳で……こんな所で、RPGファミコン時代のドラ〇エ方式?


 なんか、メッチャ面倒くさい。

 ていうか、俺の言葉は分かるのか?


 試しに話し掛けてみる。


「僕、悪い精霊じゃないよ!」


「……」


 貴族の少女は、首をコテンと捻っている。


 コチラの人間には、ドラ〇エのコマンドが出ないのかよ!相変わらず、俺だけドラ〇エ仕様。


「E❃!↑○@!」

【クッ!どうなってるんだ!】


 なんか、貴族の少女を襲おうとしてた騎士が何か喚いてる。

 面倒臭いので、蹴りを入れて、騎士を馬車の外に追い出す。


 俺は、身振り手振りで、助けに来た事を説明するが、貴族の少女は、全く理解してないようである。


 暫くすると、また、悪者の騎士が馬車の中に乗り込んで来た。

 こっちは、必死に説明してるのに、本当に邪魔。


 面倒臭いので、騎士の顔面をグーパンで破裂させて、ついでにそのまま馬車の外に出て、仲間と思われる悪者の騎士達も、全員、手刀で首をチョッキンパしてやった。


 そして、再び、馬車に戻ると、俺の所業を見てた為か、貴族の少女が震えている。


「だから、僕は、悪い精霊じゃないんだよ!」


 俺が、いくら言っても、貴族の少女は理解してくれない。


「何なんだよ!どうすれば分かってくれるんだよ!」


 俺は、考えあぐねた結果、貴族の少女を護る為に殺されてしまった騎士達を、エリクルで生き返させてやった。


「&……○♡KY?」

【えっ……生き返った?】


 生き返った騎士達が驚いている。


「○♡Tの$?」

【妖精様の力?】


 騎士達が生き返ったのを見て、少女が驚いている。

 どうやら、行動で示す方が簡単だったようだ。


「@M&/M5、❊&○@-✮✯♡?」

【もしかして、私達を助けてくれたんですか?】


 少女は、目をキラキラさせて聞いてきたので、俺は、ウンウン頷く。

 これは、俺の事を尊敬しちゃったな。


「&@&、○♡?」

【もしかして、森の泉にいらっしゃるという妖精様?】


 なんか、俺の事を妖精と勘違いしてるようだ。俺、精霊なんだけど。

 ハイエルフは、俺の事を精霊だと最初から分かったのだけど、人間には分からなのか?


 俺は、見ただけで、この娘がカーランド王国の第一王女セリカ・カーランド姫って分かったのだけど。


 そう、よ~く見てみると、コマンドにカーランド王国第一王女。名前、セリカ・カーランドと記載されてたのである。

 まあ、高貴そうな整った顔立ちしてるし、プラチナブロンドの髪も、良く手入れされてるのかツヤツヤだし。着てるドレスも、高そうだし。


 本当に、ドラ〇エ方式は、鑑定要らずだよね。

 翻訳もコマンドがしてくれるから、便利と言えば便利だけど、普通、異世界転生者は翻訳スキル標準装備だろ!


 なんか、改めてムカついてきた。


【姫様、その精霊様が、私共を生き返らせてくれたのですか?】(現地語省略)


 なんか、一番偉そうなダンディーな騎士のオッサンが馬車にやって来て、セリカ姫に質問する。

 どうやら、一番偉そうな騎士は、俺の事が見えるらしい。この人も、良い人決定。


【精霊様?妖精じゃなくて?】


 セリカ姫は、エッ!て、顔をしてる。

 そうそう。俺は森の精霊さんなんだよね。

 まあ、俺も、森の精霊さんに転生して、始めて妖精と精霊の違い知ったけど。


 というか、コマンドに精霊と書いてるから精霊なんだろ?

 この世界には、精霊魔法とか、俺みたいな精霊王が実在するから、妖精じゃなくて、精霊と呼ぶのが正しい解釈なのだが。実際は、妖精も精霊も一緒なようなもんらしい。


【この方は、精霊様ですね。私は、少しエルフの血を引いてるので、感覚で精霊様だと分かるのです】


 そうそう! 俺、精霊だから!実際、体も霊体で、人を殴る時は、魔力をブワッと出して、魔力で拳を固めて殴る感じ。

 結構、高度なこと、やってるんだよね。


 なんか、やっと話が分かる人が出て来て、俺は嬉しくなっちゃう。

 俺が見えるという事は、良い人決定だし。


「セイレイ、アリガットウ」


 なんか、ダンディーな騎士のオッサンが、たどたどしい日本語を話し出した。


【オットン、その言葉は?】


【古代エルフ語ですね】


 どうやら、ダンディーな騎士のオッサンはオットンという名前で、まさかの日本語が、古代エルフ語のようだった。


 たしかに、森に住んでたハイエルフには、日本語がバッチリ通じてたし。


 でも、これで、この騎士のオッサンのオットンが居れば、何とか意思の疎通が出来る。


「オットン、お前ら、何で、この森に来たんだ?」


 俺は、オッサンのオットンに質問してみる。

 何で俺が、オットンに、偉そうに接してるかというと、さっき、「セイレイ、アリガットウ」と、タメ語で話して来たから。


 無礼な奴には、無礼な言葉使いで接するのが、俺のルール。


 どんだけ、俺が可愛らしくても、年上にタメ語はダメでしょ!俺、もうこの世界で100年も生きてるんだよ!


「セイレイ、オレ、エリクサーホシイ! クレ!」


 なんか、日本語覚えたての外国人のような、俺を小馬鹿にしたような喋り方で、本当にムカつく。


「古代エルフ語使わんでいいから、普通に喋れ!

 俺は、お前らが何言ってんのか、理解出来るから!」


【すみません。古代エルフ語は、苦手で……それでは、共用語でお話致します】


 どうやら、オットンは、ちゃんと敬語を話せたようである。あの変な外国人のような喋り方でずっと話し掛けられたら、ムカついて殴ってしまいそうだったから良かった。


「で? なんで森に来たんだ?」


【精霊様。私共は、この森の中心にあるという、エリクサーが湧き出る泉で、少しだけエリクサーを分けて貰おうと思い、訪れた次第でございます】


 オットンは、仰々しく頭を下げながら話す。


「なんで、お前ら、森にエリクサーが湧き出る泉が有るって知ってるんだ?

 俺が知ってる限りでは、100年は、人間が泉に訪れた記憶が無いんだが?」


 そう。俺が泉を縄張りにしてから、人間など泉で見た事ないし。


【はい。今から150年前に、時の賢者が、エリクサーが湧き出る泉の水を飲んで不死者になったという記録があるのです】


「生き証人が居たという訳か?」


【ハイ。ですが、今から6年前に、もう一度、森の泉に訪れようとしたのですが、森の番人であるレッドドラゴンに消し炭にされて死んでしまったのです……】


「不死者でも、消し炭になれば死ぬのか?」


 俺は、気になり質問する。


【流石に、不死者でも消し炭になれば死にますね。実際、死んでますから】


 不死者、全然ダメじゃん。

 鳳凰のアオなんて、水ぶっかて消滅させても、暫くすると復活するし……。


 やはり、所詮は、俺の煮汁。正確には、多分、俺の前任者の精霊の煮汁だし。

 効果も、そんなもんでしょ。

 一応、賢者は不死者になったのだから、余っ程の人格者で善人だったのだろう。


 まあ、俺の本気の鱗粉を直接掛けてやれば、灰になっても復活すると思うけど。


 まあ、そんな話は置いといて、オットンに現実を教えといてやる。


「おまえらの実力では、森の泉にたどり着けないぞ!」


 俺の言葉を聞いて、オットンは、焦りながら語りだす。


【伝承によりますと、森の中心の泉のある場所は、聖域になってる為、森の外周部に居るドラゴンをなんとかすれば、森の泉に辿り着けるという伝承があったのですが……】


 なるほどね……俺がドラゴン倒しちゃったから、今なら森の泉の水を汲めると思っちゃった訳ね。


「残念だけど。今は、森の中心に近付けば近付くほど強い魔物がいるからね!」


 俺が、森を護ってた元四天王のドラゴンを全部倒しちゃったから、森の生態系が激変してる事を、人間は知らなかったようである。


【私共では、森の泉に辿り着けないと?】


「まあ、俺様が居れば辿りつけちゃうけど」


【ですよね。伝説の森の泉の事も詳しく知ってるという事は、貴方様こそが、森の泉を守護してらっしゃるという大精霊様でいらっしゃいますもんね】


「えっ?! 何で知ってるの?」


【そりゃあ、私共を魔法で生き返らせて下さいましたし。それこそが、殆ど、エリクサーの効果みたいなものですし……】


 どうやら、俺はエリクサー並の魔法を使えたようである。

 エリクルは、ハッキリ言うとザオ〇クで、ドラ〇エだと、僧侶でも覚えられちゃう呪文だったんだけど。

 やはり、ドラ〇エ仕様は凄かったみたいである。


「というか、エリクサーって一体、何?

 不老不死になる霊薬か何かじゃないの?」


【エリクサーは、どんな病気でも治る薬と言われてます。そして、体が欠損してても復活し、頭さえ残っていて、死後2日までの人間を生き返らせれると言われてますね】


「不死者になる薬じゃなかったのか?」


【賢者様は、特別でしたので】


 なんか知らんが、エリクサーより、俺のエリクルの方が凄いという事が分かった。

 俺の魔法は、全てドラ〇エ基準だから、3日後でも1ヶ月後でも、MPさえあれば簡単に生き返らせる事ができるし。


 やはり、ドラ〇エ仕様は超絶チートだ。

 翻訳機能だけは、コマンド使わないと翻訳されないからポンコツだけど。


 というか、やっぱり、エリクサーと森の泉は別モンだろ?森の泉って、効能、人によって変わっちゃうし。


【あの、もし宜しければ、森の泉の水を少しだけ汲まして貰いたいのですが……】


「別に汲ましてやってもいいけど、何で?」


 どうせ、森の泉って、俺の出汁だから、汲ませるくらいいいけど、一応、理由を聞いておく。


【我が国カーランド王国の国王が原因不明の病で、床に伏せているのでございます!】


 オットンは、悲痛な表情をしながら理由を述べる。


「一応聞くけど、その王様って、良い人?」


 悪人が森の泉飲むと、死んじゃうからね。


【カーランド王国では、賢王と呼ばれてます!】


 賢王なら、良い人かな? まあ、勝手に死んでも知ったこっちゃないし。

 最悪、悪人だったとしても、俺のザオ〇クじゃなくて、エリクルで生き返させればいいか。


「どうしようかな」


 俺は、ここでごねる。

 俺のお願いも聞いて貰わないといけないからね。


【そこを、なんとか】


【精霊様、私からもお願い致します。どうか、私の父を救って下さい!】


 姫様も、俺に頭を下げてきた。

 よし!ここで、やっと作戦に移れる。


「僕、悪い精霊じゃないよ!」


【へ?】


 オットンは、素っ頓狂な声を出す。

 俺が、何したいのか分かんないよね。

 だけど、これこそがドラ〇エ仕様。

 俺も、絶対に、これだけは譲れないのである。


「僕、悪い精霊じゃないんだよ!」


【オットン、精霊様は、何を仰られてるんですか?】


【ええと……悪い精霊じゃないと言ってます……】


 姫様も、困惑してる。

 突然、悪い精霊じゃないと言われても、俺だって意味わかんないし。

 だが、ドラ〇エ好きとしては、様式美に拘るのである。


「悪い精霊じゃないから、僕を森から連れ出して欲しいんだ!」


 しょうがないので、ちょっとだけ詳しめに言ってみる。


【ええと……精霊様を森から連れ出せば、森の泉に連れてってくれるという事ですか?】


「そんな感じ!」


【姫様、精霊様を森から連れ出せば、森の泉まで案内してくれると言っております!】


【えっ? そんな事だけでいいのですか?】


【精霊様は、そう仰っています】


【分かりました。そんな事でよろしければ、このカーランド王国第1王女セリカ・カーランドの名に掛けて、森の外に連れ出して差し上げますわ!

 勿論、精霊様が、森の外で、何不自由なく暮らせるようにサポートしてさしあげます!】


 やったね!第1王女の言質取った!これで遂に、森の外に出れるぜ!


 ーーー


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 今回は、森の精霊さんは、ドラ〇エ大好きという話しでした。

 まあ、100年間も、飽きずに、ドラ〇エ式のレベル上げやってた訳だしね。

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