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25. カーランド王都を探索してみる

 

 清々しい朝。今日は天気も良いので城下街の探索をしちゃおう。

 城の探索も飽きてきたし、やっぱり異世界転生したなら、冒険者にならなきゃでしょ!


 てな訳で、冒険者登録する次いでに、街の探索をする事にしたのだ。


 カーランド王都は、カーランド城を囲むように、放射線状に街が広がっていて、南北東西に十時に大通りがある。城の周りは貴族街。その次は平民街。

 簡単に言うと、金持ちほど城の中心の方に住んでる感じである。

 そして、カーランド王都は、一応、城塞都市で、城塞付近は貧民街が拡がってたりする。


「ウッヒョー! テンプレナーロッパは、やっぱり趣きがあるよね!」


 俺はテンションマシマシ。

 やっとこさ、ドラ〇エ生活(レベル上げ生活)から抜け出し、異世界転生者らしく冒険者生活が出来るのである。

 もう、冒険者ギルドに入ったら、冒険者ギルド併設の酒場に行って、ミルクを頼む事まで決めているのだ。


 でもって、お子様は、家に帰ってママのオッパイでも吸ってな!と、荒くれ冒険者に言われちゃうのである。

 そして、物凄~く舐められながらも、ズドン!と、正拳突きで、荒くれ冒険者を吹っ飛ばしちゃうのだ。そして、冒険者ギルドに居る者達が、ポカンと口を開ける所までがお約束。


『こんな小さな森の精霊さんに、どうしてこんな力があるの?!』


 とか、受付のお姉さんに言われて惚れられちゃうのだ。


 グフフフフ。なんか興奮して来た。無い筈の下のナニが、ビンビンになってくる。


「異世界、俺TUEEEハーレム。遂に、キタァー!!」


 てな感じで、ルンルン気分で飛んでると、チビッ子達が俺の事を指差しでワイワイ騒いでる。

 どうやら、純粋なチビッ子達には、森の精霊さんがしっかり見えてるようだ。


 エルフに至っては、俺を見ると、手を合わせて拝んでるし。

 まあ、ハイエルフみたいに土下座までされてしまうと引いてしまうが、手を合わせて拝まれるくらいなら問題ない。気分いいし。


 兎に角、今日の目標は、冒険者登録して、冒険者ギルドでミルクを頼んで、受け付けのケモ耳お姉さんと仲良くなる事。

 間違っても、人族や男の受け付けには行かない。


 俺は、ケモ耳の女の子の友達も欲しいのだ。


 てな訳で、超絶ルンルン気分で、冒険者ギルドの扉を開ける。

 冒険者ギルドは、石造りの3階建て。王都の冒険者ギルドなので結構デカい。

 入って左側が、ギルド併設の食事処。右側に、依頼が貼ってある掲示板と、何やら、色々なランキングの張り紙とかが貼ってある。

 そして、正面が受け付けカウンターになっており、5人受け付けが居るようである。


 居た!ケモ耳受け付け嬢発見!

 俺は、絶対に、あの一番人気のケモ耳受け付け嬢の列に並ぶんだ!


 一応、目星を付けて、俺は、入口左側にあるお食事処のバーカウンターの椅子に立つ。


 クッ! 椅子の上に立っても、バーカウンターに届かねー!


 仕方がないので、フワフワ飛んで、バーカウンターに居るオッサンに、計画通りにミルクを注文してみる。


【よぉ! 親父、ミルクジョッキで1杯!頼むぜ!】


 俺は、マリンに書いて貰った、現地語のカンペを見ながら、格好良くミルクをオッサンに頼む。


 しかし、


【ん?! 何か聞こえた気がしたが、空耳か?】


 どうやら、バーカウンターのオッサンは、悪者のようで、俺の事が見えてないようである。


「嘘だろ! 何で、俺のこと見えねーんだよ!

 バーカウンターのオッサンぐらい、善人な奴を雇えよ!

 店の売上げ、盗まれんぞ!」


 俺が、オッサンの目の前まで飛んでいって、悪態を付くと。


「オイ、聞こえてんぞ」


 目の前に居た、ツルッパゲ髭面タンクトップ筋肉隆々の強面バーテンダーが、憮然とした表情をして、しかも、古代エルフ語で喋り掛けてきた。


「お前、俺のこと見えるのかよ! しかも、古代エルフ語まで喋れるのかよ!」


「ああ。俺は善人じゃねーが、悪党でもないからな。薄らとだが、お前さんの事が見えるぜ!それから、俺にはエルフの血も入ってんからな!自慢じゃねーが、古代エルフ語ペラペラだぜ!」


「何で、エルフの血が入ってるのに、筋肉隆々の強面なんだよ! 普通、エルフは禿げないだろうが!」


「エルフの血が入ってるたって、俺はクォーターだ! エルフの血より、人族の血の方が濃いんだよ!」


 強面のオッサンは、ブツブツ言いながらも、ジョッキに入ったミルクを机の上に置く。


 基本、エルフの血が入ってる者は、なんやかんや森の精霊さんに優しいのである。


「で、お前さんは、姫さんが、カーランド城に連れて来たっていう、精霊様なんだろ?

 その精霊様が、何しに、このむさ臭い冒険者ギルドなんかに来てるんだ?」


 ハゲのオッサンが、不思議そうに尋ねてくる。


「そんなの荒くれ冒険者に、おちょくられる為に来てんだよ!

 普通、俺のような可愛らしい森の精霊さんが冒険者ギルドに来たら、悪そうな荒くれ冒険者に絡まれるだろ!

 俺は、それを味わいに来たんだよ!」


「精霊様は、変わってんな。わざわざおちょくらる為に、冒険者ギルドくんだりまで来たのかよ……だけれど、その計画、最初から破綻してるぜ。何せ、精霊様をおちょくるような悪党は、最初から、精霊様のこと見えねーからな……」


 ハゲのオッサンは、残念そうに、俺のことを見る。

 確かに、もう、ここに来て5分くらい経ってるのに、誰も俺の事をちょっかい掛けて来ないのだ。


 悪そうな奴らは、完全に俺の事など目に入ってない様子だし、逆に、優しそうな冒険者達が、心配そうに俺の事を見守ってくれてるようだし。


「ガッデム!!」


 俺は、バーカウンターの上で、ショックのあまり、四つん這いになる。

 確かに、俺の計画破綻してる。なんで、俺にちょっかい掛けて来るような奴が、悪党だと気付かなかったんだ……


「お前さん、俺が聞いた事ある精霊様と、全然違うな。口は悪いし、なんか世俗的だし……」


 ハゲのオッサンにまで、心配されてしまっているし。

 しかしながら、今日、一番楽しみしてた異世界テンプレを、まさか、森の精霊さんが、清い心の者にしか見えない設定のせいで、潰されてしまうとは、流石の天才の俺でも気付けなかった。


 やはり、ラノベの中の世界と現実とでは、相当違うという事を、今日、学んだ。


「こんな筈では……」


 俺は、テンプレイベントが、絶対に起きないと知って、想像以上のショックを受ける。


「まあ、気を落とすなよ。冒険者に絡まれたいなら、悪い冒険者を頑張って公正させればいいんだよ。

 要するに、精霊様が少しだけでも見れれば、問題解決じゃねーかよ。

 荒くれ冒険者を、ド真面目にするのは無理かもしれねーけど、少しだけマトモにするだけなら、何とかなるんじゃねーか?」


 なるほど、それは一理ある。

 悪者を善人に変えたとしても、それ程、性格までは変わらないだろう。

 人に絡む奴は、善人になっても人に絡むものなのだ。


 中には、無茶な冒険をやらさない為に、敢えて絡んで、冒険を思いとどまらせるベテラン冒険者も居ると、前世のラノベで読んだ事があった。


 じゃあ、どうしよう。

 鱗粉振りかければいいのか?

 鱗粉振り掛けると、悪者は火傷するからね。

 悪者を止めないと、ずっと痛い思いするの嫌でしょ。


 てな訳で、精霊王の本気の鱗粉を悪者に掛けてしまうと、悪者の冒険者が溶けてしまうので、職業魔王時代に培った悪の鱗粉も混ぜて、悪そうな冒険者の頭上から鱗粉を振り掛けてやった。


【イテテテテテ! アツアツアツアツ!】


 鱗粉を掛けられた、荒くれ冒険者達は、卒倒する。

 というか、俺の事を全く見えてないようで、ただひたすらのたうち回っている。


 意味ねーじゃん……


 悪そうな冒険者達、何で、体が痛くなってるのか、理由が全然分かってないし。


 それどころか、俺を見守って見ててくれた全良な冒険者達が、俺の行動に引いてるし。


 俺は、バーカウンターに居るハゲのオッサンを見てみると、ハゲのオッサンは、あーあと、呆れてるし。


「おい! どういうこったよ!」


 俺は、バーカウンターに戻り、ハゲのオッサンに抗議する。


「コッチにくるんじゃねーよ! 俺が指示して、お前さんに、鱗粉かけさせた思われるじゃねーかよ!」


「お前が、荒くれ冒険者を公正させろと、言ったんだろ!」


「そんな事、言ってねー! 少し真面目になれば、精霊様が見えるようになるんじゃないか?と、言っただけだ!

 まさか、直接、鱗粉振りかけるとは思わないだろうがよ!」


「そんなの、俺は精霊なんだから、やる事くらい大体分かるだろ!」


「そんなの分かるかよ! 普通、お前さんのような上位の精霊様なんて、一生拝める者じゃないんだし、ただの鱗粉が、あれ程の攻撃力があるなんて、誰も思う訳ねーだろ!」


「俺の鱗粉を、毒蛾の鱗粉と一緒にすんじゃねーよ!

 俺の鱗粉は、聖なる鱗粉なの!悪者には猛毒になるけど、良い心の持ち主には、エリクサーにもなるんだからな!」


「エリクサーだと?そうなのか?」


 ハゲのオッサンは、エリクサーという言葉に反応する。


「だから、俺は聖なる森の精霊さんなんだよ!死んだ王様を生き返らせたのも、オットンを若返らせたのも俺の鱗粉の力なんだからな!」


「王様って、死んでたのか……病気で寝込んでたとは聞いてたが、まさか死んでたとは……そして、オットン騎士団長を若返らせたのも精霊様なのか?」


「そう! 俺俺! 森の精霊さん、すげーでしょ!」


「ああ。凄いぞ。そしたら、俺の古傷も治せるか?」


 ハゲのオッサンは、バーカウンターの上に、右足を乗せる。

 今迄、気付かなかったが、どうやら、ハゲのオッサンの右足は義足であったようだ。


「う~ん。微妙。ハゲのオッサン、俺の事、薄らとしか見えないんだろ?」


「アレは嘘だ。まあまあ、見える。お前とは初対面だったからな。お前さんが、悪い精霊かもしれないので、人となりを観察してたんだ」


「俺様は、精霊王なんだぞ! 悪い精霊な訳ないだろ!」


「まあ、悪い精霊様じゃないと思うが……まあ、純粋な精霊様なんだな……」


 ハゲのオッサンは、言葉を濁して、目を逸らす。

 こいつ、俺の事をアホだと思っている。


「もう、治してやんない! 俺の鱗粉なら足の欠損程度など、問題なく治るんだけどね!」


 誰が、俺の事をアホだと思ってる奴を、治してやるもんか!


「いいのか? このままだと、お前さんの鱗粉が、毒蛾の鱗粉と思われてしまうぞ?

 しかも、この冒険者ギルドに居る、全良な冒険者達にも、精霊様は悪い精霊様だと思われたままだし。ここで、俺の足を治しておけば、精霊様の鱗粉は、良い心の持ち主にとっては、良い薬になると示せると思うんだが?」


「お前、計ったな」


「成り行きだ。まさか、お前さんが荒くれ冒険者に鱗粉かけて、ダメージを与えるなんて、普通思わないだろ?」


「あ~あ。分かったよ!治してやんよ!

 その代わり、俺の鱗粉は、超絶良い鱗粉って古代エルフ語が喋れない奴に説明しろよ!

 俺は、現地語喋れないから、どんなに頑張っても説明できないんだから!」


 俺は、これから、俺の鱗粉が毒蛾の鱗粉と同様だと思われるのが耐えられない。

 だって、毒蛾の鱗粉って、痒くなっちゃうんだよ。


 俺が近付くと、みんなに避けられるなんて、到底許容出来ないのだ。

 逆に、精霊様、鱗粉掛けて掛けてと、猫耳ギャルに追っかけられたいのである。


【オイ! おめーら見とけよ!森の精霊様の鱗粉の効力を!】


 ハゲのオッサンが、冒険者ギルドに居る冒険者達が注目するように、大声で怒鳴る。

 そして、俺に目配せしたので、カウンターの上にデンと置かれた義足が外された足に、鱗粉を振りかけてやる。


 するの、無くなってた筈の膝から下の右足が、スクスク伸びてきて、そして、元通りの足の戻ったのである。


【奇跡だ……】


 目の前で見ていた、エルフの兄ちゃんが、涙を流して感動してる。

 サクラかよ。まあ、エルフ族の冒険者は、最初から俺の事を白い目で見てなかったけど。

 ここまで来ると、縁日の祭りの屋台にいるサクラにしか全く見えない。


【あの精霊、スゲーぞ!】


 なんか、俺の事が見えている全良な冒険者達が騒いでいる。


【よーし! お前ら、精霊様が大盤振る舞いしてくれるとよ!

 これからみんなに鱗粉振りかけてくれるらしいから、古傷がある奴は、存分に振りかけれてもらえよ!

 ただし、さっきも見たと思うが、精霊様の鱗粉には、心が腐った奴には毒にしかならねえ!

 俺のように、心が清々しいと思う奴だけ、精霊様の鱗粉にかかるように!】


 なんか、ハゲのオッサンが勝手な事を言っている。

 だがしかし、これはチャンス。人気者になるチャンスなのだ。

 ボッチな俺が、一躍、クラスの人気者になれる一大イベント。

 それを、ハゲのオッサンが演出してくれたのだ。


 やはり、エルフの血を引いてる者達は、俺の事を悪いようにしない。

 というか、ハゲのオッサンくらいのクゥオーターぐらいが丁度いい。


 ハイエルフやエルフは、俺に対して、仰々しい態度を取るから、対応が面倒なのだ。

 ハゲのオッサンみたいに、軽口叩かれるけど、一応、誠意を持って接してくれる方が、俺的に楽しいし、話しやすい。(通訳までしてくれるので、森の精霊さん的に都合も良い)


「しょうが無いな! それじゃあ、俺の実力を見せてやんぜ!」


 その日、冒険者ギルドでは、森の精霊さんに涙を流して拝む者や、胸が大きくなって嬉しがる女の子、何故か性別が変わり歓喜する者、そして、床でのたうち回って苦しむ者、様々な冒険者が、続出したという事だった。


 ーーー


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


 面白かったら、復活の呪文【ブックマーク】か、☆☆☆☆☆を押してくれると、嬉しく思います。

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