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22. リーフの苦悩の日々

 

 そいつは、私の前に、突然現れたのだ。


 最近、城の中を彷徨いてると噂されてる白黒の子猫。否、魔の森に生息してる筈の厄災級の魔物ベビモスが!


 私は、カーランド王国の宰相リーフ。

 その私が、カーランド城に入り込んでいるローランド帝国のスパイの洗い出しで、忙しい日々を送ってる時に、ふと、仕事部屋から窓の外を見ると、厄災級の魔物であるベビモスが、優雅にフラフラと城の庭を散歩してたのである。


 見た目は、ただの子猫にしか見えないが、魔力操作が得意であるハイエルフには、子猫に内在する魔力量が分かってしまうのである。


 それは、猫のそれではなく、ベビモスのそれであるのだ。

 しかも、ベビモスのそれと言っても、ただのベビモスのそれではない。

 何千年かに1匹生まれるかどうかと言われてるユニーク種のそれである。


 あのような化け物が、この城に……

 ベビモスは、魔の森で、アラクネと共に恐れられている厄災級の魔物。


 アラクネ同様に、人を食べる。

 しかも、人をいたぶり遊んでから食べるのだ。


 まだ、リーフが子供の頃、ハイエルフがベビモスに捕まって、手足を引きちぎられて、3日間ベビモスに転がらされて遊ばれていたのを見た。


 本当に、アレは悲惨だった。

 ハイエルフは、下手に精霊魔法が使えるから、自分の傷を治してしまう。なので、中々死ねない。欠損まで治してしまえれば逃げられたかもしれないが、ハイミではそこまでの傷は治らなのだ。


 しかも、ベビモスは、ハイエルフの里の外壁の周りをグルグル、ダルマになったハイエルフを転がして遊んでたのだ。

 三日三晩、ベビモスによって玉遊びされてるハイエルフの悲鳴。


 リーフは、窓の外の子猫を眺めながら、子供の頃の記憶を思い出して、吐きそうになる。


 ローランド帝国との戦争も、城に住まうアラクネも厄介だが、リーフにとっては、ベビモスの方がより厄介なのだ。なにせ、心に残る根深いトラウマがあるから。


 リーフは、取り敢えず、ベビモスを見張る事にする。

 最悪、協力関係?であるアラクネに頼んでも良いが、出来るだけ頼りたくない。なにせ、アラクネも厄災級の魔物で、人を食べる魔物なのだ。


 リーフは、気配を消してベビモスに近づく。なのだが?


「何してんのにゃ~?」


 いつの間にか、背後にいたベビモスに喋りかけられた。


 いつ移動したのだ?

 全く、一瞬。目も離してないのに、その時には、もう既にリーフの背後に、ベビモスは移動してたのだ。


「あ……あの……貴方様は、魔の森のベビモス様ですよね?」


 リーフは、恐る恐る質問する。


「違うにゃ。私は、可愛い子猫なのにゃ」


「いや……猫は、人の言葉をしゃべりませんので……」


「知ってるにゃ。冗談なのにゃ。ハイエルフなのに私を知らないという事は、お前、はぐれか?」


 ベビモスは、眼光鋭く質問してくる。


「ハイ。200年前に、森を出てますので……」


「お前、良かったにゃ。はぐれじゃなかったら、お前、今頃微塵切りにゃ」


「で……ですか……」


「嘘にゃ!にゃんこジョークにゃ!」


 リーフの背中を、生暖かい汗が流れる。


「まあ、だけれども、私がベビモスだという事を、誰かに喋ったら殺すにゃ。ご主人様には、人を殺すなと言われてるけど、ご主人様に見られてなければ、全然OKなのにゃ!」


 やっぱり、ベビモス恐ろし過ぎる。

 しかし、聞いておかないといけないワードが出てきた。


「あの……すみません。ご主人様とは、精霊王様の事であらせられますか?」


 ご主人様が誰か想像できるが、一応、聞いてみる。


「そうにゃ。ご主人様で、お母さんにゃ」


「お母さん?」


「子供の時、拾われて育てられたのにゃ。しかも、子猫として。

 だから、私は、ずっとお母さんの前では、子猫のままで居ないといけないのにゃ!」


「そ……そうなんですか……森には、普通、猫など居ないのですが……」


「お前、ご主人様をディスてるのにゃ?」


 ベビモスが、ドスの効いた声で聞いてくる。


「いえいえいえ。ハイエルフである私めが、精霊王様をディスるなんて、とんでも御座いません!

 多分、精霊王様は、貴方様がベビモスと分かってて、敢えて、子猫として拾われたのですね!

 そんな事、本当に、最初から分かってましたから!」


 リーフは、必死に言い訳する。


「分かってればいいにゃ。だけれど、決して、私の秘密を、誰にもバラしてはいけないにゃ。

 私は、ご主人様と一緒に、城に住む事に決めたにゃ。

 もし、誰かに、私がベビモスだとバレたら、全てお前のせいにゃ。

 いつでも、お前など殺せる事をゆめゆめ忘れるでないにゃ」


 ベビモスは、そういうと猫耳の獣人の姿になって、爪で、リーフの頬をスーッと、傷付けた。


 やはり、このベビモスは、ユニーク種。ベビモスが人になど化けれるとは、聞いた事がない。

 まあ、アラクネも人の姿になってるので、精霊王様にお仕えする魔物は、全て特殊個体なのかもしれない。


「承知致しました!」


 リーフは、直立不動で返事をする。


「それから、やたらと私を捕まえようとする奴が多いから、注意しておくにゃ!

 どんだけ、私がプリティーでも、私はご主人様にだけ仕える子猫なのにゃ!」


「イエッサー!」


 ベビモスは、リーフの返事を聞くと、再び子猫の姿に戻って、欠伸をしながら王城の庭に消えていった。


 緊張から解放されたリーフは、その場に崩れ落ち、ガクッと、膝をつく。

 それにしても怖かった。

 人に化けれるベビモスなど、恐怖でしかない。

 人語を操り、人に化けれるという事は、簡単に人間世界に紛れる事ができるという事を意味するのだ。


 カーランド城に紛れてるローランド帝国のスパイなんかより、カーランド城に紛れるベビモスの方が、余っ程、ヤバい。


 だって、ベビモスは、一瞬でカーランド城など消滅させてしまえる力を持ってるから。

 リーフの苦悩の日々は、まだまだ続く。


 ーーー


 その日、カーランド城に居る者全員に、カーランド王国宰相リーフの名前で通知があった。

 最近、カーランド城をウロウロしてる白黒の子猫は、城で飼ってる猫なので、捕まえて家に持って帰ろうとしないようにと。


 この普通では有り得ない通知に、森の精霊さんが見える優しい心の持ち主だけは、また、精霊様関連なんだなと思い。

 森の精霊様が見えない悪い心の持ち主達には、カーランド王国の宰相リーフは、とうとう、ローランド帝国との長い戦争のせいで、ノイローゼになり、ついに頭がおかしくなってしまったのではないかと思ったのであった。


 ーーー


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


 厄災級のアラクネだけでなく、ベビモスまで城に住み着き、リーフの苦悩の日々が続くようです。


 1匹でも、厄介なのに、それが2匹。

 少しでも機嫌を損ねてしまったら、カーランド王国は滅亡必死。


 まあだけど、クロは、リーフをからかって遊んでるだけかも。基本、自由気ままな猫なので。


 面白かったら、復活の呪文【ブックマーク】か、☆☆☆☆☆を押してね!


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