21. 四天王第三席クロが、カーランド城に現れた!
厄災級の魔物アラクネのシロが、カーランド城に現れてから1週間後。
そいつは、何も前触れもなく、カーランド城正門前に現れたのだ。
にゃ~
そいつは、白と黒のブチの子猫。
正門前を護る衛兵の私に、物凄く愛想を振り撒いているのだ。
「クッ! 触りたい!」
だけれども、私は職務中。
カーランド王国は、現在、ローランド帝国と戦争中。敵国のスパイとかが、城に入ってこないように守っているのだ。
実際、カーランド王国には、たくさんのローランド帝国のスパイが紛れ込んでいるのは事実。
セリカ姫が、魔の森にエリクサーを捜しに行った時も、兵士の中に敵国スパイが半数以上紛れていて、セリカ姫も危うく、命を落としそうだったという話もあった。
しかも1週間前に、厄災級のアラクネを城の中に入れてしまうという大失態を犯してしまったばかり。
(この衛兵さんが、結構強かったとしても無理な話。この国の騎士団長でさえ簀巻きにされてるぐらいだし)
にゃ~
今度は、ゴロンと転がり、お腹を見せている。
『ちきしょー!職務中じゃなければ、お腹をモフモフ触りたいのに~!』
何故か解らないが、子猫は、私の前でずっと可愛らしいポーズをとっているのだ。
もしかして、私に飼われたいのか?
そうに違いない。この子猫は捨て猫?
ならば、私が保護しなくては!
ここまで来ると、もう、どうにでもなれと、城を護るという職務を投げ出して、私は子猫の元に駆け寄ってしまう。
庇護欲の暴走。この子猫には、それだけの魅力があるのだ。
「安心しろ! 私が責任を持って飼ってやるからな!」
そして、私は、ニッコリ微笑んで、子猫を抱き上げようとするが、
スカッ!!
子猫は、私の手をすり抜けて、城の中に入って行ってしまったのだった。
「な……何で……私の事が好きだったんじゃなかったのか!?」
衛兵の男は、子猫に振られて絶望のドン底。
しかし、すぐに現実に引き戻される。
「コラーー!!」
正門の前で、私の上官が怒鳴っている。
まあ、職務中に、子猫を追い掛けて、フラフラ歩いてたら流石にね。
子猫に振られた衛兵は、すごすごと正門に戻り、上官にこっぴどく怒られたのであった。
ーーー
「アッ!」
俺は、フッサー。セリカ姫専属の護衛騎士さ!
でもって、俺が何故、驚いたかというと、先日、エリクサーを求めて魔の森に行った時に見た白黒の子猫を、城の中で見つけたから。
「やあ、白黒君! 精霊様に会いに来たのかい!」
俺は、精霊様に生やしてもらった、ブロンドの金髪を、フッサーとなびかせ、白黒子猫に質問してみた。
だが、白黒子猫は、興味なさそうに、精霊様がおられるセリカ姫の部屋に真っ直ぐ、向かって行ったのだった。
ーーー
「キャー! 可愛い子猫よ!」
人間が五月蝿い。
自分が可愛いのは、よ~く分かっている。
ご主人様も、ウザイくらい自分を猫可愛がりしてくれるし。
まあ、それはいいんだけど、ご主人様が居なくなった森は、本当に退屈なのだ。
数日前までは、ご主人様に置いてかれたシロが癇癪を起こして、部下の魔物を殺しまくってたので、それなりに面白かったけど、やはり、ご主人様の面白さは、別格なのだ。
なんたって、厄災級の魔物であるベビモスの自分を、子猫と間違えて飼うくらいだし。
普通、厄災級の魔物を飼おうと思わないから。
しかも、お風呂に入れるとかいって、森の聖域の泉に入れられちゃったんだよ。
普通の弱っちい矮小な魔物なら、溶けて無くなるよ。
しかも、本気で自分の事を子猫だと信じてて、3年間も気付かなかったから。
体が、2メートルを越える大きさになって、やっと気付いたから。
気付かなかった理由が、ご主人様も小さくなってたから、イマイチ、猫の大きさが分からなかったという理由だったらしい。
ご主人様は、本当に面白い。
しかも、自分が森を護る聖なる精霊だというのに、同じく森を護ってた銀の母親のフェンリルを、「俺の経験値になれ!」とか言って、殺しちゃうし。
本当に、ぶっ飛んでる。
でもって、それでも飽きたらなかったのか、森を護ってた4体のドラゴンも殺しちゃうし。
何で、森を護るドラゴンを、森の聖域である泉を護る精霊が殺しちゃうのって話。
しかも、ウッヒョー! 経験値物凄〜!!
とか言って、喜んでたし。
本来なら、森の防衛力が落ちてしまい大事になる筈だったんだけど、そこはご主人様。
それ以上に、強くなってたから。
まあ、普通、精霊がドラゴンなんか倒せないよね。
しかも、精霊の癖して、魔王になっちゃってるし。意味が分からな過ぎる。
それ以上に意味が分からなかったのは、料理人になった時。
毎日、ご馳走様作ってくれて、お腹いっぱいで死にそうだった。
だって、作る量が半端ないんだもん。
なんか、レベルを上げる為には、自分が作った料理を他人に食わせて、しかも満足させないといけないと言っていた。
早くレベル上げたいからって、無理矢理食べさすのは駄目だよね。
美味しいけど、オエ~となって、満足できないから。
お腹いっぱい食べさす=満足ではないという事を、優しく分からすのに、どれだけの日数を費やしたか……
今、思い出しても吐きそうになる。
兎に角、とても楽しいご主人様と早く会いたい。
真面目な銀は、ご主人様が居なくなった森を、四天王で護らないといけないとか言ってたけど。
自分は、そもそも森を護る聖獣や神獣じゃないし。魔物なんだよね。
ご主人様が居る場所こそが、帰る家なのだ。
だって、自分は、物心ついた時からご主人様と一緒だったから。
そして、最初の記憶は、ご主人様に聖なる泉に入れられて、死にそうになった事。
ご主人様との記憶は、最初からスリル満点。
刺激がない生活など、つまらないのである。
てな訳で、ご主人様の匂いがする部屋をみつけて入ったのだ。
今日からここが、ご主人様の四天王の第三席。ベビモスのクロこと、私の家にゃ~
「アッ! クロ~お前も来たのか!? 可愛いでちゅね~」
早速、ご主人様に見付かって、猫可愛がりされてしまう。
にゃ~
いつものように、猫のふり。
「クロまで何で来てるの! 僕が四天王を代表して、ご主人様を守るって言ったよね!」
シロがプンプンに怒ってる。
シロは、自分が一番、ご主人様と長い関係だからと、いつも上から目線なのだ。
だけれども、ご主人様に一番可愛がられているのは、自分だと自負できる。
だって、自分は可愛い子猫なのだから。
にゃ~
「お~ヨシヨシ。クロちゃん、どうしたんでちゅか~」
「クロ! 普通に喋れる癖に、ご主人様の前でだけ、猫のフリするなんて狡いです!」
シロは、プンプン。
まあ、普通に喋れるし、人型にもなれるけど、自分は猫としてご主人様に拾われたので、この姿でいるのが正解なのだ。
だって、この姿だと、ご主人様がとても可愛がってくれるから。
自分は猫だから、小言が多くて、お姉さんぶってるシロに何を言われようとも、自由きままに、好きなように生きちゃうんだもんね。
ーーー
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
クロまで、森の精霊さんを追って、カーランド城に来てしまいました。
クロは子猫の姿に拘りがあるようです。
まあ、森の精霊さんに子猫として拾われた経緯もあるので、子猫の姿だと、森の精霊さんが、猫可愛がわりして嬉しがると思ってるのかも。
因みに、クロはメス猫です。違ったメスベビモスでした。(^^;;
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