第16話 第四章【不思議な話】ぬいぐるみの初恋#3
ぽち『皆さん、こんばんは。ぽちです。コロナウイルスに感染してから五日ほど経ちましたが、何とか熱も下がってきました。
最初は三十七度台を行ったり来たりでしたが、今は平熱を保っています。』
白夜「まぁ、あんまり無理すんなよ。」
ぽち『ふふ、ありがとう。金曜日から仕事も再開できると思います。
さて、その間も小説はいっぱい書けるといいな。』
白夜「さて、ちょっと気になっているよ。ぬいぐるみの男の子と人間の女の子の恋の行方は・・・!?」
ぽち『ふふ、そうですね。それでは皆さん、今日も先日の続きです。こんな話はいかがですか?』
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風呂で洗ってもらって、俺は見違えるくらい綺麗なぬいぐるみになった。それこそ、発売されたばかりの俺に戻っていたようだ。
俺を買ってくれた女性、椿は俺をまるで壊れ物を扱うように丁寧に抱っこしてくれた。
人の手の暖かさを感じられるなんて何年ぶりだろう・・・。俺は彼女の手の中でうとうとし始めてしまった。
そっと、俺は寝ぼけ眼で彼女の顔を見上げた。彼女と目があった。彼女は俺の顔を見て優しい微笑みを浮かべていて、思わず俺はドキッとしてしまった。
こんな優しい顔をした女性なんだ・・・俺にはもったいないくらい可愛らしい女性だ。
俺は思わず彼女にもたれかかった。風呂場から彼女の部屋に向かっていく途中だった。
『は~い、ローズ君。ここが私の部屋だよ。そして今日から君の部屋ね。』
そう言われて、彼女は俺を抱きかかえ部屋を見せてくれた。
お・・・・おおおお・・・。
彼女の部屋は俺一色だった。俺のポスターが天井に一枚、右側と左側の壁に一枚ずつ、机には俺のマスコットが三体、俺のフォトが一枚飾られている。
まるでアイドルの扱いだぜ。
と、思ったらドアの横に等身大俺のパネルもあるんですけど・・・!!本格的な俺のファンだ。
でも、俺は結構前のアニメの主人公で、アニメ〇トに行っても多分なかなかないキャラクターだ。
アニメも半年くらいで終わったはずだ。だからマイナーなファンしかいないと思っていたが、そのマイナーなファンに買ってもらったんだと自覚した。
『えへへ、びっくりした?私ね、小学生のころローズ君のこのアニメを見てずーっとね、ローズ君に恋しているんだよ・・・。』
そう言うと、彼女は俺にちゅっとキスをしてくれた。
久々にキスされた俺は心臓がバクバク鳴っていた。まぁ、ぬいぐるみだから気づかれるはずがないのだけど・・・。
『ええと・・・君はどこに飾ろうかな。机・・・本棚・・・う~~ん・・・。』
俺の居場所を必死に考えてくれてて・・・なんだかそれがとてもうれしく感じた・・・。
『いっぱい考えたんだけど・・・・やっぱベッドかな!?』
そう言って、椿は俺を枕の横にちょこんと置いてくれた。
『・・・これからよろしくね。』
そう言って、彼女は俺と他の俺のグッズと一緒に携帯で写真を撮ってくれた。そして、それをSNSに投稿した。
”祝☆ぬいローズ君ゲット!!一生大切にします☆★”
と、投稿していた。
『ほら、ローズ君見て!!ぬいローズ君の祝福コメントこんなに来たよ!!』
椿はそう言って、全然反応しない俺に見せてくれた。俺を膝の上にのせてくれた。
コメント欄には
”よかったですね!!””ぬいローズ君も椿さんに買ってもらってきっと幸せですよ!!”
というコメントが殺到していた。彼女はフォロワーが四千人もいる女性だった。
俺が好きだとSNSで沢山投稿しているらしい。
頭を優しく撫でてくれて、俺の凍った心が溶けていく気がした・・・。
その夜、俺は彼女のベッドに彼女と一緒に寝た。すると、どこかで話し声が聞こえた。
「お前、新入りだな。」
「!!??」
「椿はいい子だぜ。俺達十年以上前に彼女に買ってもらったけどずっと大事にしてくれている。
いい子に買ってもらってよかったな。」
「あ、あぁ・・・すごい嬉しいよ!!」
パネルの俺や、小さいキーホルダーの俺がぬいぐるみである俺に話しかけてきてくれた。
彼女はいい子だよ。
その情報だけで嬉しい・・・。周りの人の言葉ってこれほど大事なんだなって思えた・・・。
俺は彼女を信頼できそうだと思った・・・・。
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ぽち『はい、今日はここまでです。
他のローズ君達が喋りましたね。他のローズ君達が言っているように椿ちゃんは本当に信頼できる女の子なんでしょうね・・・。
もしかしたら、ぬいローズ君のライバルなのでは・・・?と、思っちゃいました。
ぬいローズ君と椿ちゃんとの人種を超えた恋の行方、これからも楽しみですね。続きはまた後日に・・・。
それでは皆さん、おやすみなさい。』
第16話/END




