74 神力の底力
直ぐにエドナードさんと陛下が部屋にやって来た。
ギルバードさんの表情から、急務だと察したのだろう。
「お忙しいところ申し訳御座いません陛下」
ギルバードさんが立ち上がろうとした瞬間、陛下がそれを制した。
「ギルバード、礼はよい。それより火急の用事と聞いたが?」
そう言って、陛下とエドナードさんもソファに座った。
「はい、実は此方の鉱石なんですが……」
言い難そうにギルバードさんが発した。
「ん? これは昨日アレックスに褒美としてくれてやった、オリハルコンと、ヒヒイロカネ、ん? ミスリルもあるな。それが何かあったのか?」
不思議そうに首を傾げた陛下にギルバードさんがゆっくりと低い声で言った。
「いえ、此方にある鉱石は、陛下から賜った物では御座いません。私の息子、ここにいるアレックスが作成、いや『複製』した物でございます」
「「は?」」
陛下と、エドナードさんが同時に言った。
その表情はまさに呆気に取られていると言っていいほど、驚いている様子だ。
「複製?」
エドナードさんが、俺の顔を見て言った。
「……はい。ごめんなさい! ちょっとした俺の浅はかな好奇心で……本当にごめんなさい!」
俺はテーブルに頭をつけ、必死に謝った。
「アレックスくん、顔を上げて? これは『水の子』を使って出来たのかい?」
エドナードさんが優しく語りかけるように俺に言った。
俺がゆっくり、顔を上げると、陛下とエドナードさんの表情は硬く驚いた感じではあるが、顔に怒りはない。
「エドナード、俺の責任だ。すまなかった。先にアレックスくんに注意しておくべきだった」
ギルバードさんが陛下と、エドナードさんに頭を下げた。
俺はギルバードさんの姿を見て、自分の軽率な行動で、ギルバードさんに迷惑を掛けてしまったことを改めて後悔した。
「ギルバード頭をあげよ」
陛下の低い声が部屋に響いた。
「この『鑑定書』を見せて貰っても?」
エドナードさんがギルバードさんに言う。
「ああ、念の為ギルドで鑑定し、本物であると言う『正式鑑定書』を作成した。俺のサインも入れてある」
「なるほどな……では間違いないのだなぁ……」
そう言ってエドナードさんは『鑑定書』を手に取り中身を確認し天を仰いだ。
そしてそのまま、陛下に『鑑定書』を渡した。
二人とも天を仰いだまま、腕組みをし沈黙した。
──暫くの沈黙が続き、陛下が重い雰囲気の中ゆっくり発した。
「出来てしまった物は仕方あるまい。寧ろ希少と言われておる、ヒヒイロカネや、伝説級のオリハルコンが増えたんだ。これは喜ぶべきことではないのか? エドナードよ?」
「そ、そうですね……これが増産できるとなれば……我が国の財政は……」
「エドナード!」
ギルバードさんが声を荒らげた。
「いえいえ、冗談ですって、ギルバード。流石にそこまでは私も……欲しいのは山々ですが……これがあれば一気に財政も立直せるけど……ゴニョゴニョ。いや失礼……」
エドナードさんが苦笑いした。
陛下もそれを見て呆れている様子だ。
「『複製』か……神の力か。とんでもない力だなしかし……毎度驚かされるが……」
自分に言い聞かせるように陛下がポツポツと呟いた。
「アレックスよ、すまんが、ここでその『複製』とやらを儂に見せてはくれんか?」
「「え?」」
ギルバードさんと俺は同時に驚いた声を出してしまった。
「陛下?」
ギルバードさんが再度陛下に聞く。
「儂がアレックスに頼んだのだ儂の命令でアレックスは『複製』したのだ。何か問題があるか? のう? エドナード? ギルバードよ?」
「ありがとうございます!」
ギルバードさんが立ち上がり陛下に頭を下げた。
「もう、よいよい。そのような他人行儀は、ここには儂らしか今はおらぬ。それよりアレックスよ。儂にその『複製』とやらを見せてくれるか?」
俺はソファに座った、ギルバードさんに視線を移すと、無言で頷かれた為、目の前にあったミスリル鉱石を手に取った瞬間、すかざすエドナードさんが、隣にあった黒い鉱石、オリハルコンを俺の前に出した。
エドナードさん
怖いですから……
圧が……
目が怖いです。
ギルバードさんにもう一度俺は視線を移すと、苦笑いして頷いた。
陛下を再び見ると陛下も頷いた。
それを見て俺は、手にしていたミスリル鉱石をテーブルに置き、黒く輝く伝説の鉱石、オリハルコンを手にした。
その瞬間エドナードさんの目がキラキラ光ったのは、敢えて突っ込まないことにした。
「『水の子』水の力を宿せーーーーオリハルコンを『複製』してーーーー」
「水を纏えーーーー」
ドスンッ!
鈍い音がして、もう一つテーブルの上に漆黒の宝石のような鉱石が鎮座した。
「「「マジか!」」」
「「「これほどの力か」」」
「「「神の力とは!」」」
三人とも驚愕の声を上げた後、固まっている。
エドナードさんは顎が外れるぐらい大きな口をあんぐり開け、陛下とギルバードさんは微動だにしない。
「ハハハハッ、アレックスよ。お前国王にならんか?」
「は?」
「ここまで凄いともう笑うしかないのう。ハハハハハッ。伝説級が一瞬で増える? ハハハハハッ、オリハルコン1本でいくらすると思う? ハハハハハッ」
陛下が壊れた? 笑い続けているんですけど……
それより、エドナードさん? その『複製』したオリハルコン抱き抱えるの止めてもらえませんかね?
目が怖いんですけど……
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