70 おねだり
特殊魔法部隊の風呂の設置が完了し、俺達は脱衣場横に用意した休憩スペースで一旦休憩に入ることにした。そして俺は、あることを提案した。
「ここに、ブドウの苗木の鉢植えを置いてもいいですかねぇ?」
「まさか? ここでアレを?」
クラメンスさんが興味津々な顔で俺を見た。
俺は頷き、続きを陛下に話した。
「このブドウに俺が作った樽を設置すると、ワインが自動で飲めるようになるんです。飲んだ分だけ自動で補充されるんで、隊員の方々が沢山飲んでも大丈夫だと思いますよ?」
「は?」
陛下が驚いた顔で俺を見た。
それを感じとったクラメンスさんとエドナードさんが、陛下に説明してくれた。
話合った結果、風呂場の脱衣所のみ、ワインにして、それ以外の休憩スペースのホールは、オレンジ、桃、リンゴの果実水の樽を設置することになった。
そして、今日の褒美にと、陛下が、メロンやマンゴーなどの高級果実の苗をプレゼントしてくれることになった。
「陛下? メロンや、マンゴーはご自分が食べたいだけではありませんか?」
と、エドナードさんに言われ、陛下は、違うと誤魔化してはいたが……
明日は、第一騎士団に風呂場を設置に行く予定だ。
「アレックスよ、今回の風呂の設置についてじゃが、その働きの対価を考えておるんじゃが、何か欲しい物はあるか?」
「欲しい物ですか……」
俺は前からちょっと思っていたことがあった。石や木材は簡単に手にはいるが、鉱石類などの素材はなかなか手に入らないので、そういう物を使って、武具などを作れたら? と思っていたのだ。
この際だからお願いしてみようか?
「何でも良いぞ? 何かあるか?」
何だか楽しそうに陛下が言った。
「では、お言葉に甘えて、鉱石類の素材が欲しいです」
「ほう? 鉱石類とは? それをどうするつもりじゃ?」
「木材や、石は簡単に俺でも手に入るので、珍しい鉱石などがあれば、欲しいです」
「何かそれで作るのか? 『水の子』で?」
興味津々で椅子に座ったまま、前に乗り出して言う。
「まだ、決めてはないんですが、武具? などを作ってみたいなと思ってるんです」
「ほう? 剣とかか?」
「……剣、いいでですねぇ」
「それは儂も楽しみじゃの。神の子が作る剣か。是非見てみたいものじゃな。エドナードよ! 直ぐに鉱石を手配しろ!」
「はっ! 承知しました。ではアレックスくん、今日はありがとうございました。また明日」
そう言ってエドナードさんが退席した。
「アレックスよ。今日は世話になったな。鉱石の件しかと承った。楽しみにしておれ」
「ありがとうございます。では。これで今日は失礼しますね」
「アレックスくん今日は、ありがとうね。こんな素晴らしい風呂を作ってくれて。隊員達の驚く姿を想像すると、今から楽しみだよ」
「クラメンスさんってばぁ。またウチにも遊びに来て下さいね」
「おう! サンキューな!」
そう言って俺に拳を突き出すクラメンスさんに俺も拳を前に出し軽く合わせた。
なんか大人の男同士の挨拶みたいで俺はちょっと嬉しかった。
陛下と、クラメンスさんに別れの挨拶をした後、すっかり昼寝をしてしまっていたシルビーを俺は、叩き起こし家に向かった。
「剣かぁ……どんなのがいいのかなあ? よく斬れる剣? 硬い剣? 折れない剣?」
俺は色々な夢を抱きながら、家路を急いでいた。
剣と言えばやはり、男にとっては一番、夢がある武器だ。
槍や弓なども、格好良いとは思うが、やはり剣だろう。短剣ではなく、ロングソード。
よく、本とかに出てくる勇者のロングソード。どんな敵でも簡単に斬り刻む、まさに夢の剣。
「俺もあれ作ろう!」
色々と頭の中でイメージを膨らませながら歩いていると、もう家まで着いてしまっていた。
シルビー、俺今度さぁロングソードを作ろうと思ってるんだよ。
『お! ついに世界征服への旅に出るのか?』
しませんし。行きませんから!
そうじゃなくて、夢の剣。勇者の剣だって!
『勇者の剣? そんなもんどうすんだ? 既に人外なお主に必要なかろぅ?』
いや、そう言うんじゃなくて、勇者物語とかに出てくる格好良い勇者の剣とかあるじゃん?
ああいうのを俺も作ってみたいんだよ!
『あんなのが欲しいのか? あんなもんなくてもお主なら何でも斬れるだろうに』
そう言うんじゃないんだよなあ~~ ロマンだよ! ロマン!
ってシルビーには、わかんないだろうね~〜
ロマンだよ。君!
『ロマンだか、マロンだか知らんが、腹減った! 飯の時間だ! 飯作れ!』
んもう! シルビーったら! せっかく俺がいい気分になってたのに。
ムードぶち壊し!
『はいはい。ロマンね、ロマン、飯食ってからな。マロンだっけ?』
もう! シルビーの馬鹿!
『馬鹿とは何だ、馬鹿とは! 聖獣様に向かって!』
馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿チン! シルビーの大馬鹿野郎!
『何ぃいいーーーーおのれーー成敗してくれるわ!』
「『水の子』水を纏えーーーーーこの剣に水の力を宿せーーーーーーー」
『ちょ、おい! 止め! ストップーーーー! 我を殺す気か! わかったって。飯食ったら相談にのってやるから、取り敢えず飯だ、飯が先じゃ! 腹が減っては良い案も出ないだろ?」
フフフッわかればいいのだ。シルビーくんよ?
『お前マジで、それだけはやめろよ? 「水の子」使って我に斬りかかるのだけはナシな!』
(あんなもんで斬り掛かられたら一溜まりもないわ。あんなの反則だろ、勇者の剣? そんな程度じゃおさまらんだろアレは。まさに世界最強の剣だろ。全ての敵を紙切れか豆腐とイメージすれば良いんだしな。まぁアレックスには教えてないけどな。あやつにはまだ早い……)
『お忙しい中、最後までお読み頂き大変有難うございます。今話で5章完結です』
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