68 1億?
──翌日。
俺は今、王宮に来ている。
昨日のアレのせいである。
そう、24時間無限ポーション風呂だ。
「陛下、もう諦めませんか?」
へ?
今なんつった? 宰相殿?
「そうですよ、陛下。こんな才能隠しておくの勿体ないですよ」
ちょ? クラメンスくん?
君ら何言ってるの?
ギルバードさんは何も言わず、陛下の返事を待っている様子だ。
「──仕方あるまいな。もはやここまでとなると……」
え?
「アレックスよ。そのポーション風呂だが、国で使用する許可を頂きたい。値段はMP、回復、毒消しポーションの3セットで年間1億でどうじゃ?」
はあ?
い、いち、いちおく??
「エドナードよ? 1億でどうかの?」
「そうですねぇ、軍で毎年購入している資金を考えたら、安いと思いますよ? 1億払っても、じゅうぶんやっていけると思います。特に、特魔のMPポーションの使用量は半端ないですからねぇ……倹約するように、クラメンスにも釘をさしてはいるんですが……」
「お前、俺達は常に死を覚悟しての日々の訓練だぞ? 命をかけての訓練だ! それに日々、魔道具の開発にもMPポーションは必須だ! MPポーション如きケチるな!」
クラメンスさんが、エドナードさんを睨みながら怒鳴る。
「わかってますって……ただ、かなりの財政の負担にはなっているのは事実ですし……回復ポーション風呂を王国軍にもまわせば、そっちの予算も削れますからねぇ。私としたら1億でも有難い買い物ですけどね? まぁあとはアレックスくん次第ですが……」
「アレックスよ。本当はもう少し払ってやりたいのだが……そこはもう少し待ってはくれんかの? 今、我が国にはそこまで財政の余裕が……少しづつ回復はしておるから、近いうちには必ず倍、いや、それ以上払えるようにはするから。なんとかそれで……我慢してはもらえんじゃろうか? いや、厚かましいお願いなのは承知の上じゃ。だが、そこをなんとか。儂を助けると思って。頼む! アレックスよ!」
そう言って陛下が俺に頭を下げる。
えええええええ?
ちょ、待って、1億?
嘘でしょ?
材料費タダですけど?
「陛下、やめてください!」
「やはり、1億じゃ足りんか……では1億2千では? どうじゃ? MPポーションと、回復ポーションのみで構わん! 頼む! アレックスよ!」
「え、違いますって! 取り敢えず頭を上げてくださいって! 命の危険を顧みず有事の時の為に訓練されている軍の皆さんに、俺の作るポーションが役に立つなら俺は使って欲しいと思ってますけど」
「ほう。ではやはり1億では安いか……1億2千が今、我らが出せる精一杯じゃ……」
「ちがーーう! 違いますって。元々材料費ってタダなんですよ? あれ。それなのに1億って。そんなに貰えませんよ」
「「「「え?」」」」
「だから1億は高すぎですって!」
「それに、俺そんなにお金あっても使い道ないですし、野菜や肉、ほとんどの食材はタダですし、水もタダ、それに家や家具他、欲しい物あれば自分で作れるし……本当、お金使うこと、ほとんどないんですって……」
本当に俺は今、金を使うことが滅多になかった。あったとしても、たまに調味料を買うぐらいだ。
あとは、パンや菓子など、パンも小麦があれば『水の子』で作れるはずだが、たまには町で買い物もしたいので、買っているようなものだ。
だから1億なんて大金貰っても、使い道がないのだ。
「アレックスよ。お前のその謙虚な気持ちは良いことだが、でもそれは違うぞ」
「え?」
「神の力であろうが、自分の力であろうが『行ったこと』に対して、対価を受け取るのは当然の権利じゃ。決して遠慮する必要もなければ、恥じることもない。現に治癒魔法を使う治癒師に金を払って治癒魔法を受けるであろう? あれはそれが『仕事』だからだ」
「アレックスよ。いつまでもお前も子供ではない。いずれ『仕事』をすることになるであろう。その時に対価を受けるのは当然のことだ。対価を受けるからその『仕事』に対し責任が生まれるのだ。その対価が意識改革、つまり責任感に変わるのじゃ」
「アレックスくん。陛下のおっしゃる通りだよ。適正な対価を受け取ることは決して間違いではなく大事なことなんだよ」
ギルバードさんが俺に優しく微笑みながら言った。
エドナードさんもクラメンスさんも頷いている。
俺は、それでも1億はあまりにも高額すぎると思い、みんなで話し合ってなんとか年間8千万、MP、回復、毒消し、解毒剤など必要なポーションの全てを提供する契約を行った。
俺の家にない薬草に関しては、必要時は軍で採取してくれることになった。
しかし、8千万か……
パーティーを追い出され、あの時は、明日からどうやって生活すればいいんだろうと、途方に暮れていた俺が……
これも全て『水の子』のお陰だな。
この力をみんなの為に俺はもっと使わないといけないな……
──この生真面目な少年の決意によって、今後どんどんチートな物が開発されていき、また頭を抱えることになるとは、この時の大人達は考えていなかった……
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