66 親父を招待する(2)
ワインの用意が出来て、今度はウッドデッキにライトを設置していた。
『アレックス狩って来たぞ!』
お! シルビー早かったねぇ!
って、おい!
この量!
『何を言う! 初めて親父殿を家に招くのだぞ? ケチケチ出来るわけがなかろう! 今日は特別の日じゃぞ! 腹いっぱい食ってもらって、精一杯持て成さなくてどうするんだ!』
う、うん。そうだね。
でも、この量は……流石に多くないかなぁ?
『特別な日だからな!』
そっか、そうだね! うん!
特別な日だもんね!
ありがとうシルビー助かったよ!
俺は黒山になった獣を見て、シルビーに感謝した。
でも、これこんなに……食べれるかなぁ?
俺達は手分けしてシルビーが狩ってきた獣を捌いて肉にしていった。
最近ではシルビーも上手に前足を使って捌けるようになっていた為、助かっている。
俺一人でこれだけの量を捌くとなると気が遠くなりそうだ……
ああ見えて、シルビーは凄く綺麗に捌くのだ。
意外と几帳面なのかも?
肉のことはシルビーに任せて俺は食器や家の中の準備に取り掛かった。
────「やぁ、アレックスくん! シルビー様も! 今日はお招き頂きありがとうございます」
クラメンスさんの顔が見えた。
「いやぁ、話しには聞いてたけど凄いねぇこれ……お邪魔するよ? アレックスくん、シルビーくん?」
続いて、エドナードさんも来てくれた。
「素晴らしい家だね。アレックスくん。シルビーくん」
そして、俺の親父であるギルバードさんだ。
「皆さん来てくれてありがとうございます。夕食はまだですよねぇ? シルビーが張り切って狩りをしてくれたんで、良かったらみんなで食べませんか?」
「おや? バーベキューかい? このバーベキューコンロも、アレックスくんが作ったのかい?」
ギルバードさんが俺の顔を見ながら驚いた様子で言う。
「ここにある物は全部俺が作った物です。とは言え『水の子』のお陰ですけどね……」
俺がちょっと恥ずかしそうに言うと、クラメンスさんと、エドナードさんが
「何言ってるんだい!『水の子』も含めてアレックスくんだろ?」
と言われ俺はちょっと嬉しくなった。
……そうか『水の子』も含めてこれが俺なんだな。
『ほら、飯にするぞ! 飯だ!』
「さぁ皆さん食べましょう!」
俺はコンロに肉や、野菜をのせた。
そして、俺は立ち上がりグラスを手にして、作ったばかりのワイン樽バーへ向かう。
シルビーこれ冷やせる? 冷たくしてくれる?
『造作もない』
一瞬で樽の表面が冷たくなった。
これ、ずっと冷たくなるようにしとくほうがいいのかなあ?
ちょっと考えようあとで。
グラスにワインを注ぎ、差し出す。
「どうぞ~俺が育てたブドウから作ったワインです!」
「「え?」」 クラメンスさんとエドナードさんが驚いた表情で俺を見た。
「アレックスくんはワインも作ってるんだよ?」
ちょっと二人に自慢そうに言った、ギルバードさんの顔が俺はなんとなく嬉しかった。
俺のことを二人に自慢してくれているみたいで。
「それはそれは、神の力でできたワインなら是非とも!」
そう言ってクラメンスさんがグラスを手にした。
「美味い! これはいけるねえ。酸味がちょうど良く、香りも良い」
「どれどれ? では私も!」
そう言い、今度はエドナードさんがグラスを手にしてワインを飲んだ。
「おお! これは素晴らしい。芳醇な香りと滑らかな味わい!」
なかなか好評のようで安心した。
「いくらでも樽から出るんで、遠慮せずに飲んで下さいね!」
「「「ん? いくらでも?」」」
「ええ、そこに植えてある、ブドウから自動で樽の中にワインが出来るようにしたんで、いくらでも出てきますよ? あ! でもちゃんと溢れたら困るから、飲んだ分だけ補充されるようにはしましたけどね」
『お! 学習したではないか! アレックスにしては上出来だ!』
でしょーー? 俺偉いでしょ?
「「「偉いでしょじゃねええええわ!」」」
え?
「「「何作ってんだぁーー!」」」
あれ? 怒られた?
ダメ? これ?
「「「ダメ? これ? じゃねええ!」」」
ちょ、エドナードさん顔が……
能面……
怖いですから……
「アレックスくん? ちょっと確認だが、このワイン樽だが、もしかして自動で勝手にワインが入り続けるってことかい?」
ギルバードさんが、他の二人とは違い優しい表情で俺に聞いてきた。
「そうです。ダメでしたかねぇ?」
ギルバードさんは頭を抱えながら
「いや……ちょっと心の準備が出来てなくて……ごめんね。うん! 大丈夫。いや、ダメじゃないよ? まぁダメと言えばダメだけど、まぁアレックスくんだし……ダメだけど、うん……」
ギルバードさんがまた頭を抱えながらブツブツ言い出した。
これ、やばかった? もしかして?
「「まぁ、アレックスくんだからね」」
「「ギルバード、お前も苦労するなぁ」」
「「優秀すぎる息子持って!」」
相変わらず、仲良しだなぁ息ピッタリだし!
おまけにギルバードさんは二人に肩まで抱かれて本当に仲が良いんだなぁ。
その後、クラメンスさんが樽に興味を持ち、何度も見に行っていた。
「しかしまぁ……またとんでもない物作ったなぁ……」
「アレックスくんだしね……」
「無自覚なのが余計に恐ろしい」
「俺達、親に立候補しなくて良かったかもなぁ」
「かもな……」
ボソボソと呟いている国の最高機関責任者二人だった。
そんな中シルビーが庭の野菜を採ってきた。
『アレックス、トウモロコシもう一個食いたい!』
了解! 俺はトウモロコシをコンロにのせてやった。
「あ! みなさんも好きな野菜を、そこの畑から採って来てくださいね。ある程度は用意したんですけど、好みがわからなかったんで……その野菜も、いくらでも食べた分だけ補充されるから大丈夫ですよ!」
「「「はああああああああ?」」」
え?
あれ? 言ってませんでした?
俺?
あれ??
「「「聞いてねえーーーーよ!」」」
あれ?
だから、顔怖いって……
エドナードさん……
「『水の子』で、水を遣って育てていることは以前聞きましたよ? シルビーくんが土を耕して、アレックス君の『水の子』で育てた野菜だってことは。苗だった物が三日すれば実がなるって話しはね。で? 食べた分だけ補充されるっていうのは??」
「言ってなかったんですねぇ俺! てっきり話してたかと……すいません……」
「いや? 良いんだよ? で、どういうことか教えてくれるかい?」
優しく、ギルバードさんが俺に言う。
「実は、俺が育てている作物、野菜や薬草全てなんですけど、収穫したらその分だけ補充されるんです。そこの畑の野菜とか果物って実が成ってるでしょ? あれって採ると、採った数だけ三日経てば補充されます。逆に、採らなければずっとあのままで新鮮なままです」
「「「えええええええ!!」」」
あれ? これヤバイやつ? もしかして?
また、やらかした? 俺?
「永久的に作物が自動で出来て、採れるってことか?」
ポツリとクラメンスさんが呟いた。
「まぁそんな感じですねぇ」
「「「そんな感じじゃねええええわ!」」」
あれ?
『まぁアレックスだからのぅ』
「「「そうですねぇ……」」」
え? そこ納得するとこ?
ねえ? みんな??
「あ、ちなみにですけど、野菜や果物の苗や、木の枝を株分けして土に埋めておけば、苗木になるんで、1本苗買えば、いくらでも増えます」
「ちょ、俺、疲れたわ、めっちゃ……」
クラメンスさんが、よろけながら呟いた。
「俺もだわ……もう驚く元気すら残ってないかも……」
エドナードさんが魂の抜けた抜け殻のようになってしまった……
やばかった? この話?
まぁ、隠し事はないほうがいいしね!
「あ! 忘れてた! 今日の大事な用事! この為にみんなに来てもらったのに!」
「まだあるんですか…………」
ん? エドナードさん?
なんか老けた?
「ああ、そう言えばそうでしたね。お風呂のことでしたね……ごめんごめん、あまりにもの衝撃の連続で忘れるところでした。はぁぁ……」
ん? ギルバードさんが深く溜息をついた。
疲れが溜まってるのかなぁ?
あんなことがあって帰って来たばかりだしなぁ……
無理して今日も来てくれたのかも。
「あ、ちょうど良かった。皆さん疲れも出たところで? 実は今日は、このことで皆さんを呼んだんです! 俺が作った風呂に案内しますから是非入ってみて下さい! 口で説明するより見てもらったほうが、わかると思うんで」
「「アレックスくんが作った風呂……」」
「俺、今日生きて帰れるかなぁ……」小声で呟くエドナードに「大丈夫、俺ポーション持ってるから……」友を気遣うクラメンスだった。
『お忙しい中、最後までお読み頂き大変有難うございます』
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