63 大発見!
──翌日。
シルビーこっちに石と木材持ってきてくれる?
『ここでいいか?』
石もお願いー。
『おうよ!』
俺達は朝から、昨日話していた「風呂作り」を行っている。
せっかくだから、風呂場自体を大きく作り直すことにしたのだ。
よし! そろそろ材料は大丈夫そうだ。
俺は頭の中でイメージした。
大きな高い屋根があり、浴槽は三つ。石で出来た大きめな浴槽と、木で出来た浴槽。
前面には大きめの窓ガラスを使用し開放的な空間に。天井の一部もガラスを使用し、夜空が見えるように。そして、露天風呂も作ろう!
岩を積み上げた岩風呂をイメージし、木材と、石、災害時に回収したガラスを庭に出した。
よし!
「『水の子』水の力を宿せーー水を纏えーーーー」
「風呂場を作れーーーー」
ドスンッ!
お? 出来たか?
『出来たか?』
多分?
ちょっと入ってみようっか?
俺達は中を見て、問題ないことを確認し、次は中の内装作りに取り掛かる。
脱衣所を作り、棚や、洗面台、休憩スペースやなどを次々と作り、アイテムバッグに一旦入れ、順番に設置していった。
こんな感じかなあ? まぁ足らないのがあれば、作り足していけばいっか! そして、庭に出来上がった「風呂場」を一旦アイテムバッグにしまい家の中に入った。
本当にこれ、ここに出してドッキング出来るのかなあ?
『出来るだろ?』
そう、この無茶苦茶な案を提案したのはシルビーだった。
家の中に全ての材料を入れて作るのは大変な為、一旦外で「風呂場」を作り、それ全体をアイテムバッグに入れて、現在使ってある風呂場で「新しい風呂場」を出せば良いんじゃないか?
簡単にシルビーは言ったが……
そんなこと出来るのか?
俺はちょっと不安になった……
『アレックスだから出来るんじゃね?』
何だそれ?!
『いいから、さっさとやってみろよ!』
でもさ、これ何て念じたら良いと思う?
『ん? そんなもん簡単だろうが』
『水の子さん、新しい風呂場に変えて!』
『これでオッケーだろ?』
えええええええええ??
『それ以外に何て言うんだよ?』
まぁそう言われてみればそうですけど……
そんな適当で……
『ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさとやれよ!我は腹が減ってきたんだから!』
なんか最近のシルビーくんガラが悪いよ?
『あ?』
……んじゃ行くよ?
『おう! さっさとやれ!』
「『水の子』水の力を使って新しい風呂に変えてーーーー」
「水を纏えーーーー」
俺は頭の中で新しい風呂が設置されているのをイメージしながら、アイテムバッグの中の「新しい風呂」を取り出した。
ボンッ!
へ? 出た?
え? 前の風呂、何処行った???
『な? 出来たろ?』
出来たろ? って……
兄さん……
ねえ? シルビー? ここに元からあったお風呂何処行ったの?
『知らねーよ』
『良いだろ別に、出来たんだし』
ええええええええええ?
そんなんでいいの?
何処行ったの? 前のお風呂?
『良いんだって! アレックスだから!!』
何じゃそりあぁああああ!
『アレックス飯! 腹減った!』
もう! シルビーったら!
野菜採って来てよー。俺、肉焼いてるからー。
『おお! 任せとけ!』
俺達は、いつものように昼食を食べ終え、後片付けを俺がしていると
『アレックスこの薬草、ここで作ったら良いのではないか?』
ん?
新しく出来た露天風呂の岩場をシルビーが鼻先でツンツンしている。
ん? そこで?
『ここで薬草育てたら、そのエキスが風呂の湯に入ってポーションになるんじゃないか?』
へ?
シルビーさんや?
何言ってるの???
『つかさー前から思ってたんだけど、別に薬草すり潰す必要ないだろ?』
へ?
てか聖獣が、つかさーとか言うの止めなさい。
ガラが悪いですよ?
シルビーくん?
『お主の場合イメージするだけで出来るんだろ?』
まあねぇ……
『材料さえあれば出てくるんだよな?』
うん……
『なら、何ですり潰す必要あるんだ?』
は?
『木材だけでイメージしたら家が出来るんだよな?』
『石だけでイメージしたら風呂が出来るんだよな?』
『ならば薬草と水、用意してイメージしたらポーション出来るだろ!』
『そしてここには湯がある。ならばここに薬草植えたら出来るだろ!』
……シルビーさん!
君は天才か?
『普通考えるだろ?』
考えねええええええええよっ!
『そもそも、材料あれば思い通りに作れる、とんでもスキルのお前が何で、わざわざ葉っぱすり潰す必要あるんだ? いらんだろ? その作業?』
もっと早く言って下さい……
そんな大事なこと……
今になって……
『お主の場合、頭がちとな……』
皆まで言うな……
シルビーさんや……
ガックリ肩を落として無言でトボトボと庭の薬草畑に向かって歩く、一人の少年の後ろ姿を見ながら、聖獣様は恐ろしいことをポツリと呟いた。
『あれで、もう少し頭が回ればのぅ……世界征服も夢じゃなかったのになあ?』
『お忙しい中、最後までお読み頂き大変有難うございます』
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