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59 見えない敵

 俺はギルバードさんとシルビーと一緒に王宮の陛下の私室に来ている。

 昨日の話しを報告する為だ。




「──邪悪な心を持つ者か」

 陛下も、あまりにもの話に言葉少なめだ。



 こちらも、真っ青になり強ばった表情のエドナードさんが、まるで自分自身に言い聞かせるかのように聞く。

「シルビーくんと、クラメンスの推測が正しいなら、この後も、この現象は続くと?」


『おそらくな』


 シルビーは低く、一切感情のないような冷たい声で言い放った。

 その表情は普段の堂々としたシルビーではなく、何か迷っている様子だった。



 二人は天を仰ぎ、深く長い溜息をしたあと俯いてしまった。



 …………長い長い沈黙が続く。




「何か、策を、講じねばな……」

 長い沈黙を破り、やっと口を開いた陛下が一言一言を重く、絞り出すように紡ぐ。


「敵の姿が見えないことには……」

 エドナードさんも視線を机の上に落とし、暗く精彩を失った表情だ。



 二人のその姿が、より一層部屋の空気を重くした。



『気配がないのじゃ……」



「「「え?」」」



 全員が驚いた声を上げ、シルビーを見た。



『魔族にしても、獣にしても、魔獣にしても、何らかの気配、匂い、感覚のような物がある。魔力を持つ者ならなおさらじゃ。魔力を感じ取れる』


『じゃが、空も、大地も、海も何処にも気配を感じない。ただ、あるのは邪気だけ』


『これだけの大きな邪気が、続けて存在したにもかかわらず一切、源の気配がない。そして、アレックスの村を出た時も、クラメンスの領を出た時も、源が存在した形跡すら残ってない。一度でもその地に降り立てば、我には気配が感じとれる。川に異変を起こし、村中を邪気で覆うほどの強い力を放つ者の気配が一切残っておらぬのは……』



 シルビーのこの発言を聞いて、俺達は絶句した。


 一切の気配がない者をどうやって追うと言うのだ? どうやって捕まえると言うのだ?


 神の使いである聖獣が気配を追えない相手を……

 俺達がどうすると言うのだ?



 俺達は完全に壁にぶち当たっていた。

 その邪気を放ったヤツが敷いた迷路の壁に。




「陛下! 火急のご要件が!」


 その時、部屋のドア前で大きな声が聞こえた。


「ダニエルか?」

 その声を聞き、エドナードさんが言った。

 そのままエドナードさんがドアの外へ出て行った。


 ──「何ぃ!? またかぁーー!」



 ドアの外から、エドナードさんが大声で怒鳴る声が聞こえた。

 あの冷静沈着なエドナードさんとは思えないぐらいの声だった。


 何があった?

 俺達、部屋で待っていたみんなは一気に緊張感が増した。



 部屋に戻って来たエドナードさんの表情は固く強ばっていて、直ぐに悪い知らせだと言うことが感じとれた。


「陛下、西のバーディル領にて、異変発生の知らせがありました!」




「「「またか!」」」


 陛下と、クラメンスさんと、ギルバードさんが同時に言い、クラメンスさんが立ち上がった。


「陛下、至急現地に向かいます!」

 クラメンスさんが陛下に言う。


「あぁ、たの……」

 陛下が返事を言い終わる前にシルビーが言った。


『待て!』


「え?」


 シルビーの声に、クラメンスさんは驚いた様子で俺の方を見た。


『邪気の浄化は他の魔道士の者でもできる。今、我らがなさねばならないのは、浄化ではない。影に潜んでいる者の正体を見つけることが最大の仕事だ! 多分、今までのやり方で来るなら、そやつはまだそこにおるはず。クラメンス今直ぐそこに結界を張らせろ!』


『王よ! 直ぐに、その領周辺全てを封鎖しろ! 即刻、そやつの出口を塞ぐのじゃ! クラメンス、ドレイクを使い、急ぎ結界を張らせろ!』

 クラメンスさんが一瞬、陛下の顔を見て、陛下が頷いたのを確認し、走って部屋を出た。


『我らも急ぐぞ! アレックス! 結界を周辺へ張り巡らすぞ!』


「わかったシルビー! ねぇシルビー移動なんだけど、急ぎならドラゴンさんに頼もうか?」


『は?』


「説明は後で! 急ぐんでしょ?」


『ああ、一刻も早く現地へ行かねば』


「なら、俺に任せて! ドラゴンさんに頼むから!」



 俺は心の中で念じた。


「ドラゴンさん! お願い! 助けてーーーー」

 そう叫んだ。




『ドラゴンと知り合いか? アレックス?』


「シルビーを拾ったあの森でね。シルビーに会う前にドラゴンさんと会って、そこで友達に──」




 ────暫くすると、部屋の窓がガタガタと小刻みに揺れる音がした。

 地震? 

 小刻みにドアや柱が揺れている……

 天井のシャンデリアが揺れ出し、ガラガラと音を立て始めた。


 え? 地震??




『来たな……』


「え?」


『行くぞ! アレックス! 我の背に乗れ! ギルバードもだ! 乗れ! 急げ!』


「え?」


 ギルバードさんが無言で俺を抱え、シルビーに即座に跨った。そのままシルビーは前足で窓を蹴り開け、俺とギルバードさんを背中に乗せたまま、王宮の庭園を駆け出した。


「え? どこいくの?」


 その瞬間、空に大きな黒い雲の塊が見えたと思ったら、その黒い雲が猛スピードでこちらへ突撃してきた!!



「ええええええええええ?」

「何ぃーーーー???」

「助けてぇえーー潰されるぅーーーー」



『アレックス! ギルバード! しっかり我の背につかまっておれよ!』

『行くぞ!』


 えええええええええ???





 飛んだ?  

 

 え?


 ええ?

 

 えええええ?

 

 

 うそーーーーん!


 うぎゃああああああああああああ!




『お忙しい中、最後までお読み頂き大変有難うございます』


【作者からの切実なお願い】

★皆様のお力をどうかお貸し下さい★

このジャンル初挑戦です!

『皆様のお力で表紙入りを達成させて下さい』

広告下にある✩✩✩✩✩から作品への評価と、ブックマークを是非とも宜しくお願いします。 

皆様の応援により筆が進みます。

拙い作品ですがこれからも応援お願いします。



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