53 シルビーの生みの親
俺達はシルビーの生まれた話を聞いた。
創造神様が俺達の祖を創ったのはなんとなくだが知っていた。
この世界の祖を創造した神様。
その中に聖獣も含まれたそうだ。
聖獣が神の使いと言われているのは、全能の神、全てを創り出したとされる、創造神様が創り出した神聖な動物だからだそうだ。
シルビーすげえぇーー!
その話を聞いてギルバードさんが「では、シルビーくんも俺の息子ですね」と微笑んでいた。
シルビーは「何だと? この聖獣フェンリル様に向かって!」と偉そうに言っていたが、まんざらでもない様子だった。
「ねぇ、なんで俺の前に現れたのがウンディー様じゃなくて、その創造神様だったの?」
『ウンディーを創ったのも、創造神だ。自由に神界と地上界を行き来できる能力を持つ神は神と言えど、そんなには存在しない。そんなことできるのは最高位神ぐらいだ』
『そしてその最高神の中でも無条件にどの世界でも自由に行き来できるヤツが一柱だけいる!』
『それが、あのくそじじぃ創造神だ!』
「くそじじぃって……」
『我を勝手に下界に送りおって! あやつだけは今度あったらぶっ殺す!』
「ちょ、シルビー! ぶっ殺すって……創造神様だよ?」
『あんなくそじじぃに様なんかいらんわい! 我らは皆、あのくそじじぃの暇つぶしに生みだされたようなもんだぞ? あんな暇人の遊びに我らは付き合わされておるのだぞ? そんなヤツを神様だなんて!』
「でも、そのお陰で俺はシルビーと会えたよ? シルビーや、ギルバードさんや、アリサさんに、陛下や、エドナードさん、クラメンスさんや、いろんな人に俺は会えたことを感謝しているよ?」
「この『水の子』の力で、みんなを助けることが出来たことを俺は感謝しているよ? シルビーと一緒にこうやって旅もできているしね」
『お前……でも、そのオマヌケなあやつのせいで、お前は「水の子」の力を知らなかったんだろ? 三年もの間』
「そうだけど……でも、今は教えてくれて良かったと思ってるよ? そのお陰でこの前の洪水だって防げたんだし……」
『相変わらず甘っちょろいやつよのぅお主は』
「そこが、アレックスくんの良いところですよ? その気持ちを歪めないように、私達が見守るんですからね」
そういって優しくギルバードさんが微笑んだ。
『甘ちゃんばかりよのぅ』
「いいのぅ! みんなが幸せなら! それでいいの! そんなこと言ってたらリンゴパイあげないよ?」
『!』
『なんじゃ? そのリンゴパイとは?』
「今日、俺の故郷に行く話をギルバードさんがアリサさんに言ったら、アリサさんが作ってくれたらしいんだ」
「旅のお供にって」
『ならば早くよこせ! さっさとそのリンゴパイとやらを出さぬか!』
誇り高き聖獣様が、必死でリンゴパイを所望する姿を、初めて見たギルバードさんは苦笑いしていた。
「シルビーくんはリンゴが好きなんですね」と言いながら。
俺は仕方なくシルビーにリンゴパイを出してやった。
『なんじゃ! これは! この甘味と酸味、そしてサクサク感! 美味い!』
『アレックスあと10個よこせ! このリンゴパイ! いや、20個でも食える! さっさと出せ!』
「ないよ? 元々貰った物だもん。もうないけど?」
『なんじゃと? そのアリサとやらの所に行くぞ!』
「何言ってるんだよ! アリサさんは仕事中だし、もう王都からかなり離れてるのに行けるわけないじゃん!」
『全速力で行けば大丈夫だ!』
「却下! あっちについたら、近くのお店でリンゴパイ買ってあげるから! それまで我慢しなさい! 文句言うなら、焼きリンゴあげないよ?」
『焼きリンゴあるのか?』
「一応、持ってきたけど……」
『でかした! アレックス!』
俺は仕方なく、焼きリンゴをシルビーに出してやった。
そのやり取りを見ていたギルバードさんは終始笑っていたが……
「今度、俺が特大のリンゴパイをご馳走するよシルビーくんにね」
ギルバードさんがシルビーに言うと
『本当か? 友よ!』
「お前……どんだけ自分勝手なんだよ……」
「いや、むしろアレックスくんが、その歳で聞き分けが良すぎるんだよ? 前も言ったけど、もっと我儘言って良いんだからね? これからは素直に俺に甘えて我儘、沢山言って欲しい」
「我儘ですか……ここに最強我儘俺様がいるんでねぇ……なかなか」
そうして俺とギルバードさんは、モフモフの毛にはちみつをつけながら、ムシャムシャ焼きリンゴを食べるシルビーを見た。
『アレックスおかわり!』
こいつ、こっから突き落としたらどうなるんだろ……
俺は一瞬思ってしまった……
『アレックスあと三つな! 焼きリンゴ!』
落としてみようか…………
シルビーなら、自力で飛んできそうな予感はするが……
『お忙しい中、最後までお読み頂き大変有難うございます』
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