49 告白(3)
……かなりの長い沈黙のあと
「ア、アレックスよ。み、水を一杯貰ってもよいか?」
苦しそうな表情で陛下が俺に言った。
「すいません、大丈夫ですか? 今すぐ水を出しますね!」
俺は空になっていたコップに、普段のように水がコップに注がれるイメージをして、水を出した。
そして、何故か小刻みに震えている陛下に手渡した。
「大丈夫ですか? 陛下……」
「も、問題ない……」
「ただの布が……アイテムバッグに……布切れが……瞬時にアイテムバッグに……」
ブツブツと独り言を呟いているエドナードさんに俺は言った。
「これからエドナードさんの分も作りますね。すぐできるんで!」
俺は同じように『水の子』を使ってアイテムバッグを作り、念の為、先程と同じように、机を出し入れしてみた。
「うん。問題ない。大成功!」
「「大問題じゃあああああああ!」」
「「何やっとんじゃぁあああああ」」
え?
大声で二人いっぺんに揃って言われた。
「アレックス! 大成功じゃないわい! 大問題じゃ!」
陛下の大きな声が部屋中に響き渡った。
「え?」
「ただの布切れからこのようなこと……瞬時にバッグが出来上がるだけでも大問題なのに、おまけに国宝級、いや、それ以上だなこれは……こんなアイテムバッグを瞬時にポンポンと作ってみろ! 大混乱するわい!」
だから隠してたんだって……
でも隠しごとしたほうが野菜の件もあって迷惑かけると思ったから……
「まぁ、儂らが全て話すように申したゆえ仕方ないが……これはマズイな……」
「ダメでしたかねぇ?」
「いや、すまん。そういう意味ではない」
頭を抱え込む陛下と、真っ青な能面になったエドナードさんを見て、俺はちょっとやり過ぎたかな? と反省した。
「エドナード、今すぐギルバードとクラメンスを呼べ!」
「イタッ!」
あのいつも冷静なエドナードさんが、よろけてドアにぶつかりながら急ぎ退出して行った。
やり過ぎた?
「まぁこれだけのことが出来る者に、我らが褒美などと……確かに、烏滸がましいにも程があったな……聖獣様の言う通りじゃわ」
「え?」
「いや、気にするな、何でもない」
小さな声で陛下が言った。
エドナードさんが退出したあと、陛下が俺の顔を見ながら、何やら考えごとをしている様子でゆっくり言った。
「……先程の話じゃが、家ができると言うのは、もしかして今みたいに、木材を用意したら家が出てくるのか?」
「そうです。実際、俺が今住んでいる家はそうやって建てました」
「念の為というか……家はここでは無理じゃが、あの机を今すぐに作ることは可能か?」
「大丈夫だと思いますよ? まだ確か木材が残っていたはず? なんで」
俺はアイテムバッグから、この前の災害の時にギルドの瓦礫を一旦回収した時の木材を出した。
俺は目の前の机をしっかり見つめ、同じ物をイメージした。
よし!
「『水の子』この木材に水の力を宿せぇーーーー!」
「水を纏えーーーー机を作れーーーー!」
ドスンッ!
机の横にもう一つ並んだ。
うん、こんなもんかな? 成功!
「なるほどなぁ……」
「…………しかし、とんでもない力よのぅ神に選ばれし者……もう、何が出て来ても儂は驚かんぞ。これは神がなせる技。神のみが知る力。我々には理解できぬ理」
ブツブツと呪文のように繰り返し、自分に納得させる国のトップの姿があった。
陛下が天を仰ぎ呪文? を一生懸命唱えていた時、エドナードさんと特魔のクラメンスさんが入ってきた。
「ん? 机が増えている?」
エドナードさんが言った。
「あぁ先程な、また瞬時に……」
陛下の答えにエドナードさんは絶句した。
それから暫くの沈黙が続き、お茶を啜る音だけが、静かな部屋に聞こえていた。
暫くするとギルバードさんがやって来た。
「では、始めるかな。ではアレックスよ、すまぬがあの机と同じ物をもう一つここに出してもらえるかな?」
「わかりました」
俺はバッグから木材を出し、先程と同じイメージをした。
そして念じる。
「『水の子』この木材に水の力を宿せぇーーーー!」
「水を纏えーーーー机を作れーーーー!」
ドスンッ!
先程作った机の横に、もう一つ並んだ。
「「えええええええええええええええ」」
今度はギルバードさんとクラメンスさんが綺麗にハモった。
やっぱり仲良しだなぁ……
「何ですか? これは?」
驚いた顔でギルバードさんが言う。
「え? アレックスくんって空間魔法も使えるの?」
クラメンスさんはビックリしているが、目がキラキラしていた。
「いや、そうではない。これが『水の子』の力だ」
低く、鋭い声で陛下が言った。
「「へ?」」
またも、綺麗にハモっていた。 凄いな……
「物体に水の力を宿すことが出来るそうだ。そして、それはイメージすれば何でも思い通りに形として作ることが出来るらしい」
「「「はああ? 何ですかぁあああ? それ??」」」
今度はアンサンブルだ。エドナードさんも加わり息ピッタリだ……
「まぁ何だ? と言われても、これが『水の子』の力と言わざるを得ないがな。その力で、アレックスは家も建てておるらしい……」
三人は無言で天を仰いだ。
「そこでだ、問題はこの力ではない! まぁこの力も相当問題はあるが……、重要なのはソコではない!」
「この力を、アレックスくんをどう保護するか? ですね」
ギルバードさんが言った。
「そう言うことだ」
陛下が答えたあと、全員が静まり返ったような沈黙が続いた。
それから、あれこれと、みんなが俺のことと、この『水の子』について色々話し合ってくれた。
とりあえず、人前でこの力は使わないように何度も念を押されたのは言うまでもないが……
「お忙しい中、最後までお読み頂き、大変感謝しております。」
下にある✩✩✩✩✩から作品への応援を頂けると、執筆へのモチベーション維持に繋がる為、是非とも宜しくお願いします。
また、次回が気になると少しでも思われたらブックマークもして頂けると大変嬉しいです。
よろしくお願いします。