46 矜持とは
ギルバードさんから連絡を受けた俺は今、ギルバードさんに付き添われ、またまた王宮に来ている。
例の如く、上着の胸の中にはちびっこシルビーが入っているが……
王宮に行くことを伝えると即答で、俺の護衛を買ってでたシルビーだが、王宮で出されるご飯を期待しているんじゃないかと? ちょっと俺は疑っていた。
お前絶対、ご飯が食べたいからだろ! と、問い詰めたが、目を背けそそくさと、向こうに行ってしまったのだ。
そして、前回と同じ部屋に通された俺はソファに座り、ギルバードさんが陛下や、宰相のエドナードさんが話すのを黙って聞いていた。
シルビーはと言うと、そんな俺たちに構うことも全くなくシルビー用に出されたご飯をムシャムシャと食べている。
やっぱりコイツ王宮で出されるご飯が目的か!
帰ったら説教だな!
シルビーの耳が一瞬ピンッと立った。
間違いないな……この食いしん坊め!
「なるほどな。『水の子』を使って出した水を遣って育てた野菜か……そして聖獣様が耕した畑で、神の子であるアレックス君が神の力の水を遣る……」
「まぁ、こうなるわな……」
何故か? みんな納得している様子だ。
「で、問題はコレをどう国民に説明するかだな……」
…………暫くの沈黙が続いた。
「何かすいません。俺が安易に考えて行動したせいで……そもそも野菜作りに『水の子』なんて力を使用したから、こんなことに……」
「いや、それは違う! そのお陰で民も喜び、体力の回復が早く、力も出たことで今回の復旧作業が早くなったと儂は考えておる」
国王陛下が言った。
「そうですね。これだけの大幅工事をこんな短期間で怪我人を出すこともなく、無事行えていることは奇跡に等しい。まさに、神の力によるものだと私も思います」
陛下の言葉を受けて、エドナードさんも言う。
「だから、アレックス、君は国の為に良いことをしたんだよ!」
力強い声で陛下が俺に言った。
「野菜にポーションを遣ったことにしてはどうでしょう?」
「「「「え?」」」」
特魔の隊長クラメンスさんの言葉に俺たち全員が驚く。
「いえね、今回アレックスくんが大量にポーションを提供してくれたじゃないですか? あれって表向きは、国が緊急時の為に保管していた物を放出したことになってるじゃないですか?」
「そうだな。ギルバードからの提案で、アレックスのことを隠すための苦肉の策じゃったがのう」
陛下が苦笑いした。
「その時に、同時に野菜も提供したじゃないですか? それって今回みたいな大災害の為の食料不足を心配し、以前から王宮で「秘密裏に実験していたポーションを混ぜた水を遣って育てた野菜」を提供してみたことにしません?」
「実験段階だった為、限られた量しかなく、量産できるように今後研究を重ねていく」
「ってことにすれば、今後は提供しなくてもバレなくないですかねえ?」
俺たちはみんな口をポカーンと開けてあんぐりしている。
「「クラメンス……」」
ギルバードさんとエドナードさんが呆れた表情で呟いた。
「流石は言い逃れが得意なクラメンスよのぅ。ハッハッハッ」と豪快に陛下が笑った。
「よし! その案で今回はいく! 至急各所に伝達じゃ! エドナード!」
「御意!」
エドナードさんが急ぎ退出した。
え? いいのか? そんなので?
俺はちょっとこの国の将来が心配になった……
「まぁ、出来てしまった物は仕方ないしのう。それに、それで皆が助かっておるなら、問題なかろぅ。ハッハッハッ」
またも豪快に陛下が笑った。
そんなんでいいの?
「しかし、流石神の子、神の力よのぅ」苗を植えた次の日に、もう収穫できるとはなぁ……そのようなことを民に言っても、信じれんじゃろうし、混乱を招くだけじゃ。凄く高価だけれど、良いものを開発している。今回は特別に民に無償で放出した。と言えば民も喜び、復興への士気も高まるじゃろうて」
「ただ、これでは国が称えられ、アレックスが賞賛されることはなくなる……それが儂は……」
「いえ、俺は賞賛されたい為に、野菜やポーションを提供したわけではありません。俺に与えられたこの力をみんなの為に使おうと思ったからなんで。だから大丈夫です」
「アレックスくん、賞賛ではなくても、君のしたことに対して、正当な報酬を受けることは大事なことなんだよ」
ギルバードさんが言った。
「でも、この力は俺が努力して出来た物じゃなく、貰った物なんで、報酬なんて……」
『何をゴチャゴチャと言うとる』
シルビー!
『そんな賞賛や、報酬なんかより、アレックスは自由に思うままに生きれば良いだけじゃ。そもそも、人間如きが、我ら神より選ばれし者に褒美を与えるじゃと? 片腹可笑しいわい! お主らが計る絵図と我らが見る絵図が同じなわけなかろうて』
『我らは何人たりともおかすことのできぬ聖域である!王よ、心しておくがよい!』
「はっ! この、アルフレッド・フランツ・ガークレイ、天地神明に誓って聖獣様の、御言葉しかと胸に刻みました故、私の出過ぎた言葉をお詫びさせて頂きたい」
国王陛下がシルビーに頭を下げた。
この時、俺はシルビーの尊き矜持を目の当たりにして、自分に与えられた力『水の子』の大きさと、重さを改めて実感した。
そこにいたのは絶対王者たる威風堂々とした姿だった。
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