44 大きな手の温もり
俺たちが庭でバーベキューコンロを作っていると、郵便屋さんが手紙を配達してくれた。
「ん? 速達?」
宛名を見ると、ギルバードさんからだった。
俺は中を開けて見ると「たずねたいことがあるから、ギルドに顔を出して欲しい」と書かれてあった。
俺は「なんだろう?」とちょっと不思議に思ったが、うちの食いしん坊くんがバーベキューを急かすので、昼ご飯を食べた後でギルドに向かった。
「こんにちはー」
久しぶりに訪ねたギルドは、すっかり復旧していて、商人の人や、素材を売りにくる人達で賑わっていた。
俺は、新しく作り直ししてくれた、俺専用の部屋へと向かった。
「アレックスさん。ギルド長がお待ちですよ」
にっこり微笑むアリサさんに、ちょっと、嬉しい気持ちになった。
あの災害以来、お互い復旧作業などに追われていたため、久しぶりにこうしてちゃんと顔が見れて俺は安心した。
アリサさんに案内されて、ギルマスの部屋に入る。
「やあ、すまないねぇ。今日はちょっと、アレックスくんに尋ねたいことがあるんだよ」
ギルバードさんが少し真剣な顔をした。
その雰囲気を察してアリサさんが退出した。
「実はねぇ、君が提供してくれた野菜のことなんだけど……」
「え? 野菜ですか?」
「あれを食べた人たちの間で最近噂になっていてねぇ」
「え? あれに何か問題でもあったんですか?」
「いや、悪い方じゃないから、それは安心してくれて大丈夫だよ」
直ぐにギルバードさんが言った。
「実はねぇ、あの野菜を食べたら、今まで以上に力が漲り、体力が一気に回復する」
「食べただけで、お腹が満腹になり、なかなかお腹が減らない」
「なんて、ちょっと信じられないような……噂が今、町で口々に言われているんだ。君はこの噂のことを知っていたかい?」
「え? 俺は何も?」
俺は驚いて、言葉少なく答えた。
「あの野菜は君が育てている野菜だよね?」
「はい。そうです」
「実は、前に君から野菜を貰った時も、俺も同じような感覚を覚えたんだが、あの時は、一緒に頂いた肉も沢山食べたんで、まぁそれで精力がついただけだと思っていたんだ。恥ずかしいながら、あまり食に明るくなくてねぇ俺は……新鮮な物ばかりだからかな? なんて深く考えなかったんだよ」
「あの野菜は何か特別な手法で育てているのかい?」
「…………」
俺には、心当たりがあった。
寧ろ、ありすぎなぐらいだ。
あの、異常なまでも成長速度……
普通はありえない。
これが『水の子』の力であることは、流石の俺でも感じていた。
でも、このことを話しても大丈夫なんだろうか?
『水の子』を操り、一瞬で馬鹿デカイ家まで建てれたり、苗を植えたら一瞬で実になるこの異質な能力を話してしまって良いのだろうか?
俺は悩んだ。
折角、親切にしてくれている、この人達が俺を、化けもん扱いしないだろうか?
もはや、人間離れしている自分の持つこの力を、話して良いものかと……
「アレックスくん、無理に話せとは言わないよ。ただ俺は君の親代わりだと、思っている。そして、もし君が一人で悩んでいるなら、相談して欲しい。俺は君にどんなことが起ころうが君の味方だ。君を私は本当の息子だと思っている」
そう言って、真剣な眼差しで俺を見るギルバードさんを見て、
俺は決心した。
この人なら大丈夫。
この人なら俺を化けもんのような目で見たりしない!
そして、俺はギルバードさんに『水の子』の力を全て話したのだ。
「まさか……そこまでとは……神から選ばれし者……」
ギルバードさんは絶句した。
…………長い長い沈黙の後
「話してくれてありがとうアレックスくん。一人で悩んで今まで辛かったね。もう大丈夫だ。これからは何も心配しなくていい。それも含めて俺は、君を守りたいと思っている・それに、先日も言ったが、君のその力は誇るべきことであり、隠さなければいけないようなことではないんだからね」
ギルバードさんはそう言いながら、俺の頭を優しく撫でた。
俺には父親の記憶がない。
物心ついた時にはすでに両親は居なく、ばあちゃんに育てられた俺は、父親と言うものを知らずに育った。
俺の頭を撫でる大きなその手は、温かく、安心感があり心地良くもあった。
俺はそんなギルバードさんを信じて話したことに後悔はなかった。
俺は一人じゃない……
自然と流れる涙を拭き俺は前を見た。
「ただ、このまま放置ってわけにはいかないねぇ。一応、陛下にも相談したほうが良さそうだねぇ……」
ギルバードさんが呟いた。
その後、この件に関しては一旦ギルバードさんに任せることにして、俺はギルドを後にした。
何か大きなことにならなければいいけどなぁ……
ギルバードさんを巻き込むようなことに、なれなければいいけど……
俺は少し心配しながら家路を急いだ。
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