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43 不思議な野菜?

 シルビー戻って来てー

 焼きリンゴ出来たよーー


 俺が声をかけたと思ったら



『焼きリンゴ!』


 来るの早っ!

 どんだけリンゴ好きだよ……


 ちょっと引くぐらいの早さで戻って来たシルビーと俺は、いつものように、穏やかな時間を過ごしていた。


 先日の大災害の後、町もかなり復旧して来て、()()()への褒美も決まり、最近は、こうしてダラダラと過ごす日々が続いていた。


 シルビーは、今回の褒美の件で


『何でもっと大金とか望まなかったんだ! 馬鹿もん! リンゴがもっと植えれただろ!』


 と、訳のわからないことを言っていたが、今はこの、まったりした穏やかな生活が送れているだけで俺は満足していた。



 来週は、エドナードさんの紹介で、第一騎士団の練習を見学させて貰うことになっている。


 シルビーと()()で、これからもやって行くなら、多少は剣術も覚えたほうがいいしね。


 俺がそう言うと


『水の子』があるのに、剣術なんか必要ないだろ? とシルビーに言われたけど、それだと俺自身が強いわけじゃなく『水の子』の力だしね。やっぱり俺自身も強くならないと!

 決意を固めるとシルビーは


「それ以上、力必要か?」と少し呆れられていた。



 まぁそうとも言えるが……







 ────その頃、町の住人達の間で、最近話題になり始めていたことがあった。


「なぁ? この野菜ってさぁ食ったら、お腹いっぱいになるだけじゃなく、なんか凄い力が出ないか?」


「だよなあ? 俺も、勘違いかと思ってたんだけど、やっぱりお前もか?」


「なんか力が出ると言うか……」


「俺なんか、こんな重い物でも楽々と持ち上げれるんだぞ?」

 そう言った小柄な男は大きなテーブルを肩の上まで持ち上げて見せた。


「え? お、おい! 何だお前? その馬鹿力は!」



 そんな会話が、町の至るところで行われていたのだ。




 この時、呑気に相棒と焼きリンゴを食べていたアレックスは、まさか自分が植えた野菜にそんな効果があるなんて考えもしていなかった。


 このことが、またもや、王都を揺るがすほどの激震が走る原因になるとは……








 ────その頃王宮の一室でも、頭を抱える国の中枢を担う男達の姿があった。


「陛下、こちらでございます。こちらが、今、市井で話題になっている野菜でございます。今日も王宮の門前に、この野菜を求める者たちが列を連ねておりまして、第一騎士団が対応にあたっておりますが……」

「最近、連日のように、この野菜を求めて皆が押し寄せて来ております次第で……このままでは、暴動が起きるやもしれません……早急に何か策を打ちたてませんと」


 困り果てた顔をして言うのは、国王の右腕と言われている宰相のエドナードだった。



 あの災害の日以来、復旧作業が進む中、新たな問題がここ、王都では起きはじめていた。




「これは、もしかして?」


「……ご察しの通り」


「アレックスか……」



「「「なんと言う……」」」


 国王陛下は天を仰ぎ、宰相のエドナード、特殊魔法部隊隊長のクラメンスは頭を抱えていた。


 暫くの沈黙のあと


「取り敢えずギルバードに伝え、アレックスに事情を聞いてみるしかなかろうなぁ……」

 頭を抱えながら、国王陛下が言った。



「至急ギルバードに伝えて参ります!」

 急いで、エドナードは部屋を出た。


 残されたクラメンスは、興味深そうに()()野菜を手にとり、おもむろにトマトを口にした。


「クラメンス!」


 驚いた国王陛下が思わず声を荒げる。


「食べてみないと、噂の正体がわからないでしょう? 実際にただの噂だけの勘違いなのか? 本当に普通の野菜と違って何か違う効果があるのか?」


「そうだな。では儂も」

 陛下がトマトに手を伸ばそうとした瞬間に


「陛下はいけませんよ? もし御身に何か変化があったらどうするんですか?」

 急いでクラメンスが止めた。


「が、しかし……儂も……」


「ダメです!」

 強く言い、テーブルの上にあった目の前の野菜を、袋に入れ隠すクラメンスを、恨めしそうに見つめる国の最高権力者であった……








 ────シルビー、昼から庭にバーベキューできるようにコンロとか設置しない?

 そしたら、直ぐに食べれるよ? お肉や野菜も?



『お! それは良いな! 行くぞ! アレックス!』


 いや、昼ご飯食べてからでいいだろ?



『馬鹿もん! 昼飯に間に合うように作るのじゃ! 早くしろ! 時間が勿体ない! 行くぞ!』



 お前……食べ物のこととなると、やる気半端ないな……相変わらず

 相棒が猛スピードで走って庭に出ていく姿を見て、俺は苦笑いした。


『遅いぞ! アレックス! で、我は何をすればいい?』


 そのやる気、他のことに向けたらどうでしょうか?

 シルビーさんや?


『さっさと、やること言え!』


 石集めて来てくれる? これくらいの。

 俺はレンガぐらいのサイズを手で示し、シルビーに言った。


 あ、アイテムバッグ渡すからそれに入れてきてよ。


 あ! アイテムバッグ、シルビー用にも作ろっか?


 そうすれば便利だよね?


『必要ないぞ? 我はアイテムボックスがあるぞ』


 え?


『今まで、あの量の獣を我が何往復もかけて持ち帰っていたとでも?』


 え?


『そんな面倒なことするわけなかろ?』


 マジで? 

 シルビーってアイテムボックス持ってるの?


『空間魔法は我の得意とする分野だ』


 マジか! すげーーーーな聖獣!


『だから言うておるだろ? 普段から聖獣なめんな! と』


 ちょっと今、マジで尊敬したわお前……



『では、行って来る!』



 そう言って走り去ったシルビーは一瞬で姿が見えなくなった。


 聖獣すげぇーーーーーー




 アレックスの中で、護衛犬から聖獣へと評価が上がった瞬間だった? ような気がした。








「お忙しい中、最後までお読み頂き、大変感謝しております。」

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また、次回が気になると少しでも思われたらブックマークもして頂けると大変嬉しいです。

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