35 王の決断
王宮では、神妙な面持ちの男たちが、ある一室にいた。
「できる手立てとしたら、結界を張るしかないのか?」
沈黙を破って、この国の国王である、
アルフレッド・フランツ・ガークレイ王が言った。
「聖獣様のお話によると、自然災害である故、我々に止める手立てはないとのことです。止めることを考えるより、もう時間が無い今は、受ける被害を最小限にすることを優先すべきと申しております」
ギルバードは真っ直ぐに国王陛下の目を見て、シルビーから聞いた話をした。
「なるほどな。して、その聖獣様が申されておる、災害と言うのは空から来るのか?」
「はい。嵐か、竜巻、激しい雷雨、あるいは、その全てが同時にともありえると……」
「確かにそれだけが同時に来れば、我々では止めることは不可能であろうな」
「いかにも……」
「それで、全力で結界か……」
「それしか守る方法はもはや……」
「そして、それが今夜か明日には来ると申されておるのじゃな?」
「左用でございます」
「問題は民への説明と、避難よのぅ……」
全員が沈黙した…………
「儂が悪者になるしかないようじゃのう……」
皆の沈黙を破って再び国王陛下がボソっと言った。
「エドナード、王宮の下水管が破裂じゃ! 大洪水になる危険があるゆえ、王都民全員緊急避難じゃ!」
「陛下……」 この国の宰相、エドナード候爵が小さく呟いた。
「エドナード止むをえん。時間がない! 今すぐに第一騎士団を中心に王国軍全員に告げろ! そして民を南部の丘陵地帯に向け避難させろ!」
「御意!」
急ぎ、エドナードは退出した。
「王立特殊魔道部隊 隊長、クラメンス・リーガルベルグ勅命を申し渡す。至急、有事に備えて特殊魔道部員全員で結界を張る準備をするよう指揮せよ!」
「仰せのままに!」
クラメンスも急ぎ退出した。
「そしてギルバードよ、お主に頼みがある。商業ギルドで現在所持しておる、MPポーションと回復ポーションを国で買い取らせて欲しい」
「わかりました」
「そして、聖獣様に力をお貸し頂けるよう、そなたから頼んではくれまいか?」
「わかりました。お願いしてみましょう。では、わたくしもこれで失礼いたします」
「気をつけて帰れよ」
「勿体ないお言葉」
ギルバードは言葉少なめに急ぎ退室した。
そして、王都では、第一騎士団を中心に、都民への説明と避難が行われていた。
────ギルバードさんが動いてくれたみたいだね。
都民の避難が始まっている……
『我らも移動するぞ』
何処に?
『あっちの家にだ』
え?
『ここに居ては避難させられるだろ』
まぁそうだけど、あっちに居ても同じじゃないの?
『向こうに結界を張る』
へ?
『当たり前だろ! 自分が災害に巻き込まれたらどうやって皆を守るんだ?』
ああ、なるほど……
『ここだと大き過ぎる故あっちに移動する』
わかった。
俺達は隣の小さな元の家に移動した。
そして最低限必要な物だけをアイテムバッグから出し、時を待った。
ねぇシルビー今夜来ると思う?
『匂いがだんだん鮮明になって来ておるからなぁ。近いとは思うぞ。今夜か明日未明には』
そっか……
俺は結界を張るしかないの?
『自然災害ゆえ止めるのは厳しいだろうよ。止めるよりも、結界を幾重にも張り、受ける衝撃を減らすほうが良いとは思うが、その結界がどこまで耐えれるかは相手が自然の理ゆえ我にもわからん』
『国全域に結界を張るとしたら、我の魔力だけでは持続することは難しいかもしれん。我とお前だけを守るなら容易いことじゃが、国全体を守るとなると厳しいかもしれんな』
『とにかくお前はここから絶対外に出るな! 命令じゃ! 何が起ころうとここから出るな!』
わかったよ……
この中で結界を張り続けてみんなを守ればいいんだよねぇ?
『そうだ!』
『アレックス、少し寝とけ! 時が来たら我が起こすゆえ』
わかった。んじゃ、ここにシルビーの食べる物、出しとくね。
俺はシルビーの為に、リンゴや干し肉などの食料を出してやり、シルビーの側で仮眠した
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