33 異変
俺はウチの食いしん坊くんの土産を探していた。
今日は何にしようかなあ。
なんとなく、ふら~と通った店から甘い匂いがしてきた。
それに釣られ店の前に立ち止まると美味しそうな、どら焼きを売っていた。
「どら焼きかぁ、美味しそうだけど、うちの食いしん坊くんはいっぱい食べるしなぁ。甘い物をいっぱい食べるのは良くないよなぁ。でも俺も食べたい!」
俺は誘惑に負けて買ってしまった……
そしてまだ、ほんのり温かい、どら焼きを持って急いで家に帰った。
シルビーただいまーー
あれ? いないのかなぁ?
いつもなら直ぐ返事するのに?
シルビー?
おーーーい!
おかしいなぁ……
俺は庭に出て見たが、シルビーの姿が見当たらない。
あいつ狩りに行ったんじゃないだろうなぁ……
林の中にでも散歩に行ったのかなあ?
せっかくどら焼き買って帰ってやったのになぁ……
俺は喜ぶシルビーの顔を思い浮かべちょっと、寂しい気持ちになった。
「これどうしよう……」
一人で食べるのも寂しいので、シルビーの帰りを待つことにした。
そうして、部屋の片付けをしていると、庭に物音がした。
シルビー?
『ああ、すまないアレックス』
どこ行ってたんだよ!
心配したじゃんか!
『アレックス誰か信頼できる者を今すぐ呼べ!』
え? どういうこと?
『時間がない!』
え? 理由を言ってくれないと……
『空がおかしい』
へ?
『はっきりはまだ何とも言えんが、何かが来る予感がする!』
え?
『そんなに時間がない! 我の結界だけで持ちこたえれるかわからん』
ちょ?
どういうこと?
『とにかく急げ! 嫌な予感がする!』
信頼できる人と言えば、ギルマスのギルバードさんと、アリサさんぐらいだけど……
でも、何て説明すれば……
『我が話す! アレックス時間がない!』
でも、ここに呼ぶわけには行かないし、
ギルドに行く? 一緒に?
『行くぞ! 乗れ!』
え?
『早くしろ!』
そんなことしたら目立つよ?
『我は消せれる!』
は?
『いいからさっさと乗れ!』
う、うん……
言われるままに俺はシルビーに跨った。
!
一瞬でシルビーが見えなくなった。
え? 何これ?
『短時間なら姿を消せる! 行くぞ! つかまっとけよ!』
え? 俺も消えてるの?
『時間がない! 黙っておれ!』
いつになく真剣なシルビーの姿に俺は黙ってシルビーの背につかまっていた。
はやーーーーーーーい!
目の前の景色が、どんどん消え去って行くぐらい、もの凄いスピードでシルビーが駆けて行く。
俺は目を開けるものやっとな感じで、必死でシルビーにつかまっていた。
商業ギルドの直ぐ近くで一旦俺はシルビーから降り、シルビーに最古小型化してもらい、上着の中に入れ、ギルドの専用部屋に俺は駆け込んだ。
急いで、ギルマスの部屋に繋がっているボタンを押し、アリサさんへのボタンも押した。
そして、シルビーを上着から出し、二人を待った。
「やぁ、アレックスくん。あれ? それは例の?」
『時間がない我がこっからは話す!』
ちょ、シルビー!
「いらっしゃい。 アレックスさん」
アリサさんも入ってきた。
「あら? 君はシルビーくん?」
『挨拶は後だ! 時間がない! 本題にうつるぞ!』
「え? 聖獣様の声?」
『そうだ! 我が直接お主らに話しかけておる。そんなことはどうでもよい! 緊急事態じゃ!』
「何でしょうか? 聖獣様?」
ギルバードさんが聞く。
『空の様子がおかしい。近になにかが起こる!』
「え?」
『嵐か? 竜巻か? 何か大きなことだ! 空が荒れておる!』
「え?」
アリサさんも言葉が出ない様子だ。
『匂いがするのだ! 間違いない。もう時間があまりない!』
「聖獣様、それは、およそどのくらい先かわかりますか?」
『今日の夜か、明日だろうな』
「「「え?」」」
俺達全員が驚いた。
「それは間違いありませんか?」
『信じないならそれでよい。我は感じたことを、お主らに教えてやったまでだ』
「いえ、そういうわけでは……ただ、あまりにも突然のことで……」
ギルバードさんも動揺している様子だ。
「で、我々はどう対処すればよろしいのでしょうか?」
『来ることを避けることは難しいだろうな。被害を抑えるために結界を張るぐらいしか対応としてはなかろう』
そんなこと言われても、どうすれば……
こんな話しを誰が信じてくれると言うのだ。
同じように、ギルバードさんも、アリサさんも思っているに違いない……
俺達三人は、あまりにも唐突な話しに絶句した。
『我は伝えたぞ。あとは、お主ら人間が考えることだ!』
シルビーの言っていることはもっともだ。
シルビーは俺達に危険を教えてくれた。
それをどうするか考えるのは、俺達の仕事だ。
でも、どうすればいい?
こんなことを誰が信じてくれる?
「わかりました。聖獣様。教えてくださりありがとうございます。アリサくん、君はここで待機していてくれるかい? 私は今すぐ王宮に言ってくる」
「え?」
「お偉方の知り合いに進言してみるよ。アレックスくんと聖獣様はどうされますか?」
「俺は一旦家に帰ります。ここにずっとシルビーを置いておくわけにもいかないし。何かあれば連絡ください」
「そうさせてもらうよ。君と聖獣様についてだが……」
「できれば、明かして欲しくはないですけど……仕方ないですよね……」
「できるだけ考えてみるよ。じゃあ、今直ぐ行ってくるから」
そうして、一旦俺達の話し合いは解散となった。
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