32 ワインをプレセントする
『おい! ワインとやらが出来てるぞ』
え?
何でわかるの?
次の日の朝、突然のシルビーの声で俺は跳び起きた。
おはよーシルビー
『ああ。おはよーそれより、もう出来てるぞコレ』
何でわかるの?
『鑑定したからな』
え?
シルビー鑑定もできるの?
『鑑定というか、探索だな。敵を調べたりできる、それの応用だ。気配とか、中の物なぞがわかる』
お前凄いなぁ……
『我は聖獣であるからな』
気配かぁ……
なるほどなぁ
俺にも出来るかなぁ……
『おい! スルーか!』
ん? 何か言った?
『我は聖獣だったはず? だよな?』
ん?
何言ってんの?
シルビーはシルビーだよ?
おかしなこと言ってないで、ほら。
こっち来て!
早速開けるよ?
ほら! 早くー
『我がおかしいのか? 我は聖獣フェンリルでシルビー』
もう! いつまで言ってるの!
ほら! さっさと来なよ!
『開けて、飲んでみろ!』
開けても俺飲めないよ?
『は?』
だって俺まだ未成年だもん。
『へ? お主自分が飲めないのに作ったのか?』
そうだよ? いつもお世話になってるギルバードさんとか鑑定人さんにあげようと思って作ったんだもん。
『我は、その、何処のどいつかもわからんヤツの為の手伝いをさされたのか?』
何言ってるんだよ!
ギルバードさんや、鑑定人さんや、アリサさんがいなければ俺達ここで暮らせてなかったかもなんだよ!
俺がお金稼げてるのも、その人達のお陰だし。
それに、このリンゴや果物の木だって、アリサさんのアドバイスで買ってこれたんだよ?
ギルバードさんが、色々教えてくれたから、買えたんだから!
『何? リンゴの木を教えてくれた御方か?』
おい! いきなり態度ちがうし!
『それは、大事にしろ! アレックス!』
お前どんだけリンゴ好きなんだよ……
このあと、ワイン持って行ってくるから、お留守番しててね。
『わかった!リンゴ採っておいてくれ!』
本当にリンゴ好きだねぇ。
リンゴジュース作ってやろうか?
『おお! 今すぐ作れ!』
待ってな!
俺はリンゴをアイテムバッグから取り出し、ワインのボトルを数本用意し
イメージした。リンゴジュースが出来るようにと!
「『水の子』美味しいジュースをお願い!」
瓶の中いっぱいにジュースが出来た。
それを入れ物に入れてやり、シルビーに出してやる。
ペロペロ、ピチャピチャ飲む姿は、昔の小さかったシルビーとは全く違うが、器用に皿のジュースを飲む姿を見て俺はちょっと懐かしく思った。
じゃぁ行って来るからね。留守番お願いね!
『おう』
今日は狩りはもうダメだからね!
絶対ダメだからね!
狩りしたてたら晩ご飯抜きだからね!
『わかったって……さっさと行けって』
ちゃんといい子にしといてよ?
『…………』
『仕方ない昼寝でもするか……』
晩ご飯には勝てない聖獣様だった。
「こんにちはー」
いつものように挨拶をし、商業ギルドにある専用の受付の部屋に入った。
「いらっしゃい。アレックスさん。お預かりしていた物の鑑定が終わってますよ」
笑顔でアリサさんが俺に言った。
「早かったですねぇ。別にゆっくりでも良かったのに。すいません。気を使わせて」
「いえいえ。ところで?」
「あ、ギルバードさんに用事が!」
「ここでいいですか? それとも2階に?」
「いえ、ここでいいです」
「では、お待ちください」
アリサさんが呼び出しボタンを押した。
すると、直ぐにギルバードさんが来てくれた。
「あ、鑑定の結果かい?」
「いえ、それは先程聞きました。今日は、ギルバードさんにプレゼントがありまして」
「ほう?」
ギルバードさんは少し驚いた顔をした。
俺はバッグからワインを数本取り出し、テーブルの上に置いた。
「これなんですけど、実は俺が作ったワインなんです」
「え?」
この前の苗木から採れたブドウで作ったことはナイショにしておいた。
「いつもお世話になっているんで、ギルバードさんにお礼を思って」
「そりゃぁ嬉しいねえ」
ギルバードさんは目を細めながら喜んでくれた。
「こっちは、ギルバードさんの分で、アリサさんの分と、鑑定人さんのも持ってきてるんで。処に置いたらいいですか?」
「え? 私にも?」
「アリサさんにも、いつもお世話になってますし!」
「いえ。私は何も……でもありがとうございます。アレックスさんが作ったワインならきっと美味しいでしょうしね」
にっこり微笑まれた。
「おや? これはお邪魔のようだね」
と、ギルバードさんが言う。
「ん? 何でですか?」
俺がギルバードさんに聞いたら
「まぁアリサくん頑張って」と言い残し俺があげたワインを持ち部屋を出て行ってしまった。
「ギルバードさん忙しかったんですねぇ? なんか悪いことしちゃったなぁ……」
俺が言うと
「いえ。そういうことではないと思いますよ……」
少し小さめの声でアリサさんが俺に言った。
ほんの少し顔が赤くなって? いたようだったので、体調でも悪いのかな? と思い
俺はバッグの中にあった、リンゴとポーションをアリサさんに差し出し渡そうとしたら
「こんな高価なポーション受け取れませんよ。それに何処も悪くないですから心配ないですから。大丈夫です、本当に……」
何度も言われ、俺はちょっと?? と思ったが、買い物もあった為、ギルドを後にした。
アリサさん、ああ言ってたけど、大丈夫かなぁ……
最近、俺のことで色々仕事増やしたから疲れてるのかもなぁ……
俺はちょっと申し訳ない気持ちだった。
今度うちのフルーツを沢山持っていってあげよう!
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