31 お引越し
俺は今図書館にいる。
そう、ワインを作る為に、作り方を調べに来ている。
「ワインってブドウを熟成させるだけでできるのか? それなら直ぐに出来そうだ!」
俺は図書館を出て、ワインを詰める為の瓶とコルクだけを買った。
これ、買い物用に一台ダミーの台車作ってバッグにいれとくといいんじゃね?
そうしたら、台車に載せて、人が居ないところで台車ごとバッグに入れたらいいんじゃん!
俺って天才かも!
俺は急いで家に帰り、台車を作ることにした。
シルビーただいまー
いい子にしてたかい? って
おまえーーーーー!
シルビーさん?
シルビーさんや?
寝たふりするコはご飯抜きですよ!
『……』
『なんだよ。せっかく昼寝してたのに』
これは何ですか?
『みりゃわかるだろ? ブラックベアと、バッファローだ』
見ればわかるだろ! じゃない!
言ったろ! 食べられない分まで狩りしちゃいけない! って!
『ちげーよ! そいつらは凶暴で人間を襲うぞ! だから、我が先に始末してやっただけだ! ふん! 人間に危害を与えるヤツらは狩ってもいいっていったろ?』
言ったけど……
この量は……
『肉にして置いとけばいいだろ。あー、バッファローの骨とか牙は素材として売れるらしいぞ。まぁ我には興味ないけどな』
これ何体あるんだよ…………
シルバーフォックスまでいるし………
ここにあっても困るしなぁ……
仕方ないなぁ……
今日の分だけ置いといてあとで、ギルドに持って行くか……
取り敢えず、ご飯食べるか。
俺は昼ご飯を作り、いつものように二人で食べた。
シルビー昼からちょっと手伝ってよ?
ワイン作るから。
それが終わったら、アレまたギルドに持っていくよ。
『何するんだ?』
ブドウを俺が採るから樽の中にどんどん入れて行って!
先ずは樽を作成したいから、木材持ってこれる? この近くまで?
こっちの家を倉庫にしようと思ってるからねぇ。リビングに樽出すから。
そこにブドウどんどん入れてくれる?
『木材持ってくりゃいいのか?』
うん、お願い。その間に俺がブドウ採っとくよ。
俺は籠にブドウを採り、ついでに樽と、荷台を作成した。
『これでいいか?』
うん。ありがとう〜
「『水の子』水を纏えーーーー」
「樽になれーーーー」
うん。成功だね。
その後は、荷台をイメージしてまた同じように『水の子』を使用して作成した。
よし! 完璧だ!
シルビーがブドウを樽に入れてくれて、ブドウが入った樽をリビングに運んでくれた。
シルビー今日から、あっちのログハウスで生活するからさぁ、あっちに食材とか移動させれる?
台所はもう作ってあるから。細かい物は後で俺が運ぶよ。
『何でそんな面倒なことするんだ?』
え?
『お前アイテムバッグあるだろ? それにまとめて収納して、あっちの家で出せばいいだろ?』
!
シルビー天才!
『普通、誰でも思いつくだろ? 何の為のアイテムバッグだよ?』
思いつかないだろ……
そんなこと……
まぁいいや。
やってみる!
俺はテーブルや、椅子、ソファなどの家具全てを収納バッグに入れた。
凄いなこれ……
見事に何もなくなった。
そして、新しく作ったログハウスに行き。
順番にアイテムバッグからそれを取り出し設置する。
設置場所が、イマイチな時は再びバッグに入れて、また出すだけで何度でも好きな場所に出すことが出来た。
シルビー天才だなぁ
『お主の頭が、ちと残念なのではないか?』
ひどいなぁ……
細かい物はまた帰って作ることにして、俺は再びギルドに向かった。
台車をアイテムバッグに入れて。
「こんにちはー」
俺は専用の部屋の前で挨拶し、ギルドカードをかざし、ドアの鍵を開けた。
誰もいなかったので、言われた通り、ボタンを押すと、直ぐにアリサさんが来てくれた。
このシステム便利だなぁ……
「あら? アレックスさん? 次は何でしょう?」
「実はまた、うちの子が……」
「ああ……鑑定部屋に行きましょう」
いつものようにギルマスもやって来て、俺の出す物を興味深そうに待っていた。
「じゃぁ出しますね」
ドン
ドサッ
ドサッ ドンッ
「…………」
「えっと……」
二人とも絶句していた。
ですよね……
俺でもそう思いますコレ。
「ちょ、ちょっと時間を頂いてもいいかな?」
「明日には、いや、頑張って今日の夕方には、なんとか鑑定を……」
「あ、急ぎませんから、ゆっくりでいいですよ? 今度来る時までで、まぁ、どうせまた直ぐに来ないといけない気もするし……」
「例のお連れの方ですね……」
「そうです……」
「なかなかの仕事ぶりのようですね、お連れの方は……」
「えぇ、まぁ……」
三人とも、苦笑いしていた。
「まぁウチも助かってますけどね」
「そうなんですか?」
「素材の納品数としたら、どうしても冒険者ギルドに比べたら少ないですからねぇ。普通は狩りをした帰りにそのまま冒険者ギルドに売却して行く人がほとんどですからねぇ。それから言うと、アレックスくんはウチにとっては上得意様ですね」
アリサさんと、ギルバードさんが微笑んだ。
「あ、大事なことを伝えるのを忘れるところだったよ!」
「ん?」
「君のランクだがAランクに昇格だ。カードを貸してくれるかい?」
「え? Aに?」
「これだけの納品量だ。当然の措置だよ。本来は冒険者ランクだって上がるのにね……それだけは申し訳ない気がして……」
「まぁこれは俺が狩った物じゃないですからねぇ……」
「従魔が狩った物でも、主人のポイントになるんだよ。その辺も考えないとだねぇ今後の為に……」
「いや、ここまで色々お世話になっているのに。大丈夫ですよ。冒険者ギルドの方のランクは地道に上げて行きますよ」
「少しずつ、あっちにも狩った物を出して行けばいいかもね。少しだよ! それだけは守るようにね」
そう言ってギルバードさんに苦笑いされた。
本当に良い人だなぁ。ギルドの儲けよりも、俺のランクのことを優先してくれるなんて……