20 始動
「あ、アリサくんちょっと話があるんだ、いいかい?」
「何でしょう?」
俺は先程の話を内密に彼の担当のアリサくんに言った。
優秀な彼女のことだ、直ぐに事の重大さと、俺の意図することを察し動いてくれるはずだ。
彼の才能は絶対に守らなければならない。
決して国に潰されるようなことがあってはならないのだ。
彼は私達の宝だ。
────
「シルビーこれから俺は、このポーションを納めにギルドに行くけど、お前も来るかい? 商業ギルドにはお世話になっているから、これからも、よく行くことになるから、お前を紹介しておきたいんだが? あ、でも中には入れないよ? 外でちゃんと待てるか?」
「わふ!」
「よし! なら決定だ!」
シルビーを連れて俺は商業ギルドへ向かった。
「こんにちはーー今日は紹介したい子がいましてー」
俺はいつものように元気よくドアを開け挨拶した。
「あら、アレックスさん。その子は?」
「この前拾ったんだ、素材集めに行った先で」
「そうなんだ。可愛いわね」
「シルビーって名前だ」
「シルビーくんね? ちゃんと従魔登録も済ませてあるのね」
「うん。この子何処で待たせたらいい?」
「ここへどうぞ。小型の従魔はここで、お願いね。一応鎖には繋いでもらうことになっているんだけど大丈夫かしら?」
「シルビーごめんな。これをつけてくれるかい?」
「わふ!」
「あら? 言葉がわかるみたいね。賢そうね」
「そうなんですよ。俺の言葉がわかっているような賢い子でして」
「まぁアレックスさんたら、親バカね」
「ハハハッそれは申し訳ない」
「いえ、では中へどうぞ」
俺はいつものように個室へ案内された。
「実はねぇ……大事な話があるの。2階へ移動してもらってもいいかしら?」
「ん? 急用?」
「ええ。できればお願い」
「わかった」
いつになく真剣な表情のアリサさんに言われ、シルビーのことは気になったが俺は言われた通り2階へと急いだ。
「マスターお話が」
「入れ」
「悪かったねぇアレックスくん、いきなりで。座ってくれ。そして、アリサくんもだ」
「はい」
アリサさんも?
そんなに重要なことなのか?
それから俺はギルマスから話の内容を聞いた。
「……やはり独占と言うのは……あちらの言っていることもわかりますが……」
「いや、いいんだ。俺も君がそう言うのはわかっていたからね」
「え?」
「答えは始めからわかっていたから、気にしないでいいよ。ただ、俺が勝手に返事をするわけにはいかないから、念のため君の意見を聞いただけだから」
「そうなんですか?」
「で? 通常ウチに卸してくれている分を、彼らに売ることは構わないかい?」
「はい。それは他のお客さんと同じなんで構いませんよ」
「ただ、通常時はそれでいいが、緊急時の場合のみ、多少優先するのは厳しいかい?」
「緊急時と言いますと?」
「スタンビートや、戦乱などかな? まあ滅多に起こることではないけどね。その時だけは、出来る範囲で優先すると言うことで。勿論、君を無理に拘束して作業さすようなことは内容契約書にも書くつもりだよ」
「……協力するのは構いませんが。俺ポーションだけを作りたいわけじゃないんです。色んなことに挑戦してみたくて。この前、素材集めで久しぶりに町を出たんですけど、たまには外に出て冒険したりもしたいですし」
「ああ、君は元々冒険者だったよねぇ」
「お恥ずかしい話、弱かったんで……だから剣術もこれから勉強したいとも思ってまして」
「そりゃあいいねえ。誰か教えてくれそうな人の宛はあるのかい?」
「いえ、それはまだ……」
「そうか。それなら私が力になれるかも知れない。必要な時言ってくれ」
「本当ですか? それは助かります!」
「君の安全と自由は、この商業ギルドで絶対守ると約束しよう! そのためにアリサくんにも協力してもらうようお願いしている」
「え? アリサさんにも?」
アリサさんの方を向くと、無言でにっこり微笑まれた。
「大丈夫ですよ。あのポーションの作成者は絶対に秘密にしますからね」
と、ウィンクされた。
「鑑定人にもすでにこの話は通している。あのポーションについて知っているのは、私とアリサくん、鑑定人の三人しかいない。だから安心してくれ」
そこまで根回しを……
「ありがとうございます!」
それから俺達は、特魔へのポーションの納品の際の注意など、具体的に取り決め、契約書が出来次第、俺がそれを見て納得できれば、契約してもらうことになった。
───今後このことが大きな波紋を呼ぶことになるとは、この時の三人には思いもしなかった。
「最後までお読みいただき、ありがとうございます」
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