19 動き出す
商業ギルドでは、重々しい雰囲気が漂っていた。
王立特殊魔法部隊の制服を身に纏った、国のエリート達が三人も、朝早くからカウンターに並んでいたのだ。
「何事?」周りはざわついている。
「私は、王立特殊魔法部隊 部隊長 クラメンス・リーガルベルクだ。急な申し入れで申し訳ないが、ギルドマスターに会わせて欲しい。緊急な用件だ」
職員の案内により、ギルド長の部屋に入る。
「これはこれは、部隊長殿、お久しぶりですね」
「突然の訪問ですまない。ギルバード」
「特魔の隊長殿が、俺に緊急の話とは?」
「単刀直入に言う。このポーションの作成者に会わせて欲しい」
「ほう? で、その用件は?」
「会ってから話す!」
「それでは紹介できないよ」
「なんだと!」
クラメンスは、ギルバードを睨みつけ、声を荒げる。
「隊長!」
後ろに控えていた、クラメンスの部下が諌めた。
「商業ギルドには守秘義務があるのは、隊長殿もご存知とは思いますが?」
「それでもだ!」
「お教えするわけにはいきません! 私はここの長です! その長が法を犯すわけにはいきません!」
強く低い声で、ギルド長であるギルバードは、王立特殊魔法部隊 隊長クラメンスを真っ直ぐ見て言った。
暫くの沈黙が続いた。
「ギルバード、頼む! 教えてくれ!」
「いくら、あなたの頼みでも法を犯すことはできませんよ。それにあなただって、国に仕える身のはず。その者が法を犯すことを自ら行うとは、いただけませんな」
「理由を聞かせてもらえないか? クラメンス」
「このポーションをお前は飲んだことがあるか?」
「MPポーションはないですけど、回復ポーションならありますよ」
「ならわかるだろ!」
「味のことですか?」
「味? そんなことだけじゃない! 勿論、味も大革命だが……これはこの国の将来を変えるポーションだ!」
「え?」
「やはり知らなかったのか……」
「何を言っているんだ? クラメンス」
「ここにいる、うちの部下がこれを飲んで試したんだ。そしたら通常の上級MPポーションの効果の約2倍の効果が現れたそうだ」
「え?」
「持続時間が通常のポーションの約2倍だこれが何を意味するかわかるな? 我々特魔の任務は特別だ。そして、その威力は王国一と自負している。ただし、それには決定的な欠点がある」
「時間か……」
「そうだ。魔法はMPが切れたら使えない。強力な魔法を使えば使うほどMPの減りは激しくなる。俺達は常にMPポーションを持っている。だから当然、持続時間は自分で把握している。それがわからないと致命的だからな俺達は。直接死につながるほど大事なことだ。特魔で自分のMP持続時間を計れないような者はいない!」
「だろうな……」
「それでだ。このポーションは革命的だ! 味は勿論だが、持続時間が長いってのは我々にとって神とも言える存在だ。どんなことをしても欲しい!」
「話はわかったが……それで、名前を聞いてお前はどうしようと思ってるんだ?」
「特魔に、このポーションを独占的に納品して欲しい」
「それは無理だろうな」
「なぜだ!」
「製作者の希望だよ。実はなぁ俺も、その味を知ってウチで優先販売出来ないか? 頼んだんだよ」
「で?」
「あっさり断られたよ。ハッハッハッ。ウチに卸すことは構わないが、独占することは出来ないって言われた。多くの人に自分の作ったポーションを使って欲しいからだってな」
「なんだと? こんなに優秀なポーションをか?」
「優秀だからこそだ! だから俺もその話に納得したのさ。だから、名前を教えることは出来ない! 欲しいなら、ウチに買いに来ればいい。まあ、そのかわり一度に買えるのは3本までだけどな」
「お前! それは国家の為にも! マイナスになることだぞ!」
「お前達が優秀であることは認めるよ。でも優秀だから優遇されて良いってのは違うんじゃないか? それに、それを作った製作者はそんな権力や、特別意識の為に作っているわけではないよ。そんな者が無理やり手に入れようとしたら、作ることさえ止めてしまうかも知れない。そのほうが、よっぽど国にとっては損失だろ?」
「わかったらお帰り願えるかな? 特別魔法部隊長殿?」
「ギルバード頼む! 話だけでもしてくれ! その製作者に! これがあれば…… これさえあれば……今まで命を落とした者も……落とさなくてすんだかもなんだ……俺達は常に死と隣り合わせの所で戦っている少しでも彼らの危険度を下げてやりたいんだ! 頼む! 話だけでも! お願いだ! 頼むから彼らの為にも命を救ってやってくれ!」
「……わかったよ。話はしてはみるが、期待はするなよ。とにかく製作者は権力や、そういった物を望んでいない。そして、それを振りかざして奪おうとする者を嫌う」
「わかった。もしその製作者が協力してくれるなら、責任持って俺が、管理するのを約束する! 無理やり奪うようなことや、無理強いしたり、独占を命令するような行為は絶対にさせない!って約束する!」
「わかったよ。その約束守れよ!」
「ああ……では、邪魔したな。朝からすまなかった」
そう言って王立特殊魔法部隊の三人は商業ギルドを後にした。
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