『戦争』のはじまり
作者はタイマン系の漫画が大好きだよ!!!!!
釈迦かっこいいよね!!!
ー遥か昔、とある王国は異世界より英雄を呼び出し、その英雄が放った雷光は恐ろしき邪神を薙ぎ払ったという。
ーかつてより、この国には異世界の記憶を持った守護者が誕生し、そのものが纏う炎は祖国を襲う脅威をことごとく焼き払ったという
人々は魔物に対して、戦争を起こし、なぎ倒し、領土を手に入れた。
逆に戦争を仕掛けられ、祖国を防衛し、逆転の一手を放つこともあった。
異世界の民が英雄視されるそんな世界では人類がついに魔物の王を倒され、平和がもたらされた。
ーなんてことはない。
魔王が倒されても人類の欲は決してなくならなかった。
むしろ欲深さが増したと言ってもいい。
人が人を妬み、忌み嫌う。
階級を定め、差別を行う。
人間が以前から行っていたー皮肉にも敵であったはずの魔物たちも行っていたー生活は何一つ変わらなかった。
むしろどの国が一番成果を上げたか、誰に恩賞を与え勢力を伸ばすべきか、など要らぬ諍いが増え、人間同士の争いはさらに悪化したのだ。
人々は『人』に対して、戦争を起こし、なぎ倒し、領土を手に入れた。
逆に戦争を仕掛けられ、祖国を防衛し、逆転の一手を放つこともあった。
結局、憎む対象が人か魔物か、変わったのはそれだけだ。
「これではすべて同じではないか!」
この世界ースフィアにて神に最も近いとされる人族、『天使』の長メデシエルはある時、円卓にて憤怒の声を上げた。
それは12の大国同士による会合の場、『スフィア・ガーディアンズ・ミシエンテ』においての発言だった。
「しかし、メデシエル殿。このような争いは魔物との戦いの間も絶えずあったではありませんか。」
知性ある翼竜の王、テペスタは静かに意義を唱えた。
「我ら12か国同士の争いは抑えられるにしても、その他小国同士の争いには、さすがに口出しできません。」
「そんなもの、儂らの力で押さえつけてしまえばよかろうて!」
メデシエルは会合にて最年長を誇る。
立派に蓄えた白髭と対照的に禿げ上がった頭、鍛え抜かれた肉体を見ても彼の威厳がわかる。
その彼が最年少であるテペスタに異議を唱えられ、頭に血が上るのも不思議ではなかった。
しかし、テペスタは眉一つ動かさず。ただ、足と手を組んだだけだった。
翼竜の成長は早い。わずか3年で成人と変わらぬ体躯を得、王はその中で際立った知性を持つものが戴かれる。
そんな彼が耄碌したジジイの言葉に耳を傾けるわけがなかった。
「それでは魔族と同じではなくて?」
妖精族の女王ー木の妖精 トライアドが再び異議を唱えた。
トライアドはそのたおやかな身体と穏やかな風貌、声音に似つかぬ鋭い言葉を放った。
メデシエルはトライアドをジロリとに睨みつけたが、決して手は下さなかった。
人によってはその場で戦争が起きてもおかしくはない発言だったが、そうはならない。
それは単にメデシエルが理性で怒りを抑えたからとも言える。
しかし、実態は誰一人として妖精族と真っ向から戦争をしたくないのである。
彼女の後には火の、水の、風の妖精たちとの闘いが待っているのだから。
「だがよお、爺さんのいうことも一理あるぜ。」
ドワーフの王ーガゼルは円卓にどかりと肘を乗せ乱雑に言い放った。
「ほお、ガゼル!お主もやはり鎮圧すべきと....」
「そこじゃねえよ!爺さん!!」
メデシエルの嬉しそうな声に反発してがんと机をたたく。
ガチャリとした鎧と脇に置いた鉄塊とも呼べる大剣が彼の豪快さと『彼ら』の技術力を示す。
「ただ、人同士が争うのは見たくねえってだけだ。」
そして、繊細さも。
「同感ダ!我が同士ヨ!」
マキナ族の長ーロランは無機物で華奢な身体を乗り出した。
マキナ族は他の人族と異なり岩石や鉱物から身体をなしている。
また、魔物のゴーレムとも異なり人と近いに姿をしている。
その中でも彼女は華奢な方らしく、人間でいうと15歳くらいの少し浅黒い少女のような見た目だ。
しかし、その体躯には似合わない黒光りした鎧を身にまとっている。
その喜びのまま、ロランは立ち上がりその銀髪を揺らしながらガゼルのもとへ近寄り手を取った。
「我々には意思があるのダ!仲良くせねバ!」
ぶんぶんと握った手を振るガゼルに対し、ガゼルは少し気恥ずかしそうだ。
それはそうだ、はたから見れば程の差がある父と娘である。容姿は全く似ていないが。
「俺も同感だな。こんな無邪気にはなれんが。」
西国の人の王ールロイは目をつむり、両足を円卓に乗せ、椅子に踏ん反りながら言った。
金髪、赤目の釣り目、尊大にして不遜ーしかし民の争いは嫌う。態度の大きい政治王。
そんなやつで要素もりもりでなければ円卓に足を乗せて許されるはずがない。
そして許す円卓の神はきっと女だ。
一方、東国の人の王 アスマは正座し、刀を脇に据えたまま一言も発さない。
則天去私というものだろうか、それともただ眠っているのか。
こちらは、白髪交じりの長髪を後ろに束ねており、左目の切り傷が歴戦の証を示している。
「しかし、西国の王 ルロイさん。そしてドワーフの王 ガゼルさん。あなた方の領民が我々エルフを虐げているのは存じております。」
エルフの女王 ローゼタリアはそう発言した。
凛とした佇まいに声。美しい水色の髪。切れ長の眉に少し吊り上がった目。すらっとしたフォルム。
髪ととがった耳を除けばルロイと兄妹と言われても信じてしまいそうだ。
やわらかそうなシルクのヴェールを着ているがトライアドもびっくりの剛速球ストレートである。
「「「それは....。」」」
ルロイ、ガゼル、そしてなぜかロランまでもがたじろいだ。
エルフ族は魔力や視力に優れたものが多い。
しかし、こと肉弾戦となると人間とドワーフに軍配が上がる。
また、エルフは小規模の村を形成するものも多く、それをいいことに略奪や強奪、果ては人身売買まで行っているという。
むろん、ルロイとガゼルが放置しているというわけではない。
しかし、人間の悪意というものは絶えない。
「それではこのままにしていうというのか!!」
ルロイは円卓から立ち上がり、エルフの女王に問うた。
「いいえ。そうは思っておりません。」
「ほう!なら儂の言うように力で押さえつけるのじゃな!」
「ーいいえ。どちらも人々は納得しません。」
女王の先見は正しい。誰もがわかっていた。
だから、グレーにしようと、各々が灰色になろうという部分に彼女は白黒つけようとしたのだ。
結果
ー沈黙
ー黙殺
「エルフがされた仕打ちを考えれば、人とドワーフに同様の『奉仕』をエルフにしていただく必要があります。」
ー沈黙。
「しかし、それを人とドワーフが受け入れれば、その仕打ちは再び我々エルフに降りかかります。」
ー沈黙。
「これではいつぞやのマキナの英雄が倒した『尾を飲む蛇』のようではありませんか。」
地を割らんほどの威力で円卓を走る。
この発言に対し、動いたのはロランだった。
「我らが英雄を愚弄するカ?」
先の衝撃は彼女が円卓を叩いた為らしい。
ロランはマキナ族の誇りをローゼタリアにつかつかと近づく。
その激情を抑えんがため、アスマが素早く刀を抜こうとするが、ローゼタリアが目でそれを制する。
ローゼタリアはたじろぐことなく、一点の迷いなく
「いいえ」と答えた。
「ーならばどうすル!我が民も!天使族も!それぞれが汚辱を背負っていル!」
ーそれをどう解決する気ダ!
一時の沈黙が場を再び支配する。
そして、ローゼタリアはゆっくりと口を開いた。
ー各々が納得すればいいのです、と。
「ー各々方!各種族、各国の英雄が!!納得するまで闘い!!すべての汚辱を晴らすのです!!!」
とんだ脳筋女王だ。
かくして英雄 vs 英雄ー転生者代理戦争は決定されたのだ。
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セーブファイル
森目 玖沖
3年 11か月 5日時間 プレイ
死亡回数:11回
目標:
転生者戦争の優勝
および
転生者不殺生
脳筋エルフ女王とムリゲー主人公