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19.長足GP。サ終了。その4-2


「嘘にござる! 四周年が……幻にござる! もう一度見ればサ終は消えて……無くならないでござる! シャーシちゃんッ、今眠っては死ぬでござるよ! うわわわーん!」

『あーあ、とうとう泣き出した』

 膝を折ってドンドンと床を叩く。階下からエルミネタ婆様が「うるさいよ!」と叫んでござる。叫びたいのは某にござる!

 嘘と言ってくだされ、運営殿ッ!


『なに口から血を吐いてるんですか!?』

 仕事に行き詰まったときも、人間関係で胃が痛くなったときも、長速GPで遊んで気が紛れて、解決してないのに全部解決した風に思えたのでござるよ!

 長足GPがあればこそ、諸々を先送りにできたのでござるよ!

 これから、某は、何を頼りに生きていけばいいのでござるか!

 もっと遊びたいのでござるよ!

 やめたくないのでござるよ!


『そういえば、このアプリ、ちょっと前から大量に脱退者がでていたって噂がありましたね』

「某も、そーじゃないかなー、って思っておった。みに四駆のシュミレーション『シミュレーションね』遊戯勝負事だったはずなのに、いつの間にか異世界活劇(ファンタジー)路線に分け入りおった。そのあたりで、なんか、こう、おかしーなー、と思っていたのでござるよ!」


『ははー、……運営がコンセプトを決めきらぬうちにサービスを開始したようですね』

「当初から軸足がグラグラしておったのに、何となく気づいておったが気づかぬフリをしておった」

『なんで?』

「忖度にござる! なんで前後のタイヤ系が違うのに速いんだ? そもそも走れるのか? とは思うておったのでござるよ!」


『仮にもシミュレーションを唱うなら、そこは速攻で改良しないと!』

「だって、速かったんだもん!」

 今から思えば、違和感バリバリで走らせておった。


「初の人権ボディ、サイクロン・マグニャムが手に入らなかったとき、どれほど課金しようと思うたか! ネコのミウラには分かるまいッ!」

『旦那もネコでしょうに! あんな電子記号の塊に課金しようという人の気持ちが解りませんねぇ!』

「競争に勝ち抜こうとする志の何所が悪いのでござるか!?」


『どこかの論破王のように論点をずらさないでください。わたしは課金のことを言ってるんです。電子上のアプリはサ終と同時に手元に何も残らないでしょうが! アレですか? 課金すれば物理学上の部品が手に残るんですか? 物が手に残らないと知っての課金でしょう? 影も形もないものに金掛けるくらいなら、おもちゃ屋へ行って現物の車体を購入してくださいよ。課金価格より遙かに安い値段で手に入れられますって!』

 言い返されたでござる! ネコに論破されたでござる!


『問題は、何でみんな辞めちゃったかでしょう? 何か致命的な問題でもあったんですか?』

「うーん……」

 何かあったっけ?


『アプリケーションの、というか、みに四駆のキモ? 特徴があったでしょう? それが生かし切れてないとか?』

「みに四駆の特徴として……改造でござるな。一度でも改造したら、元に戻せなかったのでござる」


『……現実世界ですと、お金を出せばもう一台買えますよね? 再改造できますよね?』

「抽選で出した(レア)車体を複数枚持つことはほぼ不可能にござったから、当時は改造に失敗したらお終いでござった。さらに改造品目(アイテム)入手の困難さ。一月ぶっ続けでブン回さないと遊戯勝負事内貨幣(コイン)が所定数手に入らぬ。遊ぶなと言っておるのか、利用者(ユーザー)が余程暇と思うておるのか?」


『それ、問題ですね。プレイヤーのやる気を削ぐためのシステム作って、運営は何をしようとしていたのでしょう?』

「それも、最近、ようやく再改造制度(システム)が立ち上がったのでござるよ」

『何年かかったんですか?』

 ネコに指摘されたでござる!



 あとは……。

「こっそりと数値修正を行う隠密(ステルス)修正されて、翌日から一騎当千(エース)級の車体がいきなり使えなくなったとか……」

『隠蔽体質ですか?!』


人権部品(パーツ)を抽選で出した後、十月十日も再販せなんだ。課金しても手に入れる手段がなかった」

『人事異動で運営さんが入れ替わったんじゃないですか? 引き継ぎ無しで』

「今から思えば、苦しければ苦しいほど色んな工夫が出来て、結果楽しかったかも……」


『マゾ気質ですかな? このゲームのユーザーは?』

 初めての遊戯勝負事でござるから、他もこんなモンだと思うておった。バンニャムって聞いたことない製造業者(メーカー)だったから、海外製造業者(メーカー)だろうと思うておったこともあった。略語だとは知らずに……。


「うう、乱数にも偏りがあって、出ないときは何回引いても出ないし、何度再改造してもイイネしかでないし。実話でござるが、五十八回まわしてようやく職人技を出したのでござる。出るときは金色背景部品の同じのが四回(実話:何に使うんだよ!)も出たり、しかもそれが再販品だったり、至高の一品が五回連続(実話)で出たりして、何度膝を地に付けたことか!」

『乱数のアルゴリズムに不備があるようですね。運営は確認してないんですか?』


「新たな制度(システム)を導入した際、ほぼ十割の確率で不具合を出す運営にござるから、試験遊戯(テストプレイ)や見直しなどしてはいけない社風かと……」

『ははーん、さてはPDCAサイクルを知らないな、この企業!』

 某は知っておる。某国に検品検査をしない工場があることを。検品は、生産に関与しないから無駄だって言って、社長命令で省いてる会社のことを。それが日本の大手有名製造業者の商品として流通していることも!(参:某国出張報告書)

 だから、バンニャムさんも、同じ考えの持ち主なのかと思うておったのでござる!


「あと、車体特性な。あれ出たとき、進退に悩んだでござる。ようやく手に入れたお気に入りのサイクロン・マグニャムが使えなくなったのでござるよ。泣く泣くソニャック系を使ってのでござる。白に塗りたくって、前翼を取り払って、これはマグニャムだと自分に言い聞かせて!」

『……みに四駆って、そういうオモチャでしたっけ? お気に入りのボディを乗せて走らせられるから人気が集まったのでは?』

 あの当時、悔しくて何度腹を切ろうと思うたことか!


(ウイング)もかっこわるかったでござる。されど、翼を付けないと早く走れないのでござる」

『現実世界でウイングつけて走るレーサー、何人います?』

「某のご近所には1人もおらぬ」


『あの黄色いの、衝立みたいな、派手なサチコさんみたいな? 空気抵抗を増すだけでしょう? 向かい風セクションだと逆に遅くなるでしょう?』

「かっこわるいから、アレは遅くなっても付けなかったでござる」

 黄色いのを付けるくらいなら腹をかっ捌くでござる!


『ウイングに付けたローラーって、何か役に立ってます?』

「現実世界で、あれ付けて損害走路(ダメージコース)に入ったら車体が構造体(シャーシ)から剥がれてしもうたでござる」

『だったら、現実世界で組み上げたように、前後ステーをアルミかカーボン使って高く組んだ方がナンボかマシでしょうに!』

「反論できないでござるッ!」

 悔しいが、ミウラと論戦して勝てる気がせぬ! 

 ネコに勝てぬッ!


『じゃぁ、売り上げに活を入れるためコラボとかあったでしょう? 人気ゲームはマンガとかアイドルとか、他のゲームとか、こう、一生懸命盛り上げてるでしょう? 運営って、天下のバンニャムだったはず。コネは沢山持ってたでしょうに!』

「致命傷な所をこのネコは!」

 ミウラが領域(ゾーン)に入ってしまった。ミウラの領域(ゾーン)を外すには、某も長足GP魂を発動するしかあるまい!

 ふんす!


遊戯(ゲーム)の性格上、世紀末な暗殺拳はそぐわないでござろうに!」

『アイドルは!』

「あいあいマスターなら……一回だけ」

『あいマスですか? 有名どころじゃありませんか! ……目を反らせて、どうしました? お嫌いですか?』

「某限定でござるが……余り好かぬ」

 最近の美少女って、鼻の下が微妙に長くなってないか?


『旦那、アニメだとかマンガだとか、けっこう嵌っておられたのでは?』

「個々の人物を、物語として描ききられた上で……人格は記憶でござる! 厚みがあるというか、人生があるというか、……過去と物語を知り、はじめて登場人物として生が見えるのでござる」

『なるほど。キャラは、可愛いだけじゃだめだと』

「設定だけで愛せぬ。薄っぺらいのは好かぬ」

『*注)イオタの旦那、個人の意見です』

 ネコに遠い目をされたでござる!


「ついでに申せば、車物遊戯(ゲーム)合作(コラボ)もあったが……」

『そのゲーム、知らないんですね』

「申し訳ない!」

『知らないんだったら仕方ないですね』

 真、申し訳ない。全然入りきれなかったし、ボディも大したことゲフンゲフン!


「あ、企画を思いだしたでござる!」

『なんだ、色々企画してたんじゃないですか』

「ヨウツーバーと合作企画もござった!」

『ほほう! 今をときめくヨーツーバーですか?』

 某、初めてヨーツーバーに出会ったのでござる。『実話です』。


「長足GPや、みに四駆を取り上げている有名ヨーツーバーと合作にござる。各ヨーツーバーが遊戯勝負事内で立ちふさがって、それに挑むという企画にござる!」

『現実の人物とゲームできるって、なかなか楽しそうですね。……どうしました?』

「残念ながら、企画が起きるまで、各々の御仁、まったく名を知らなかったのでござる」

 ヨーツーバーの方々、申し訳ござらぬ!


『旦那はヨーツーベをさほど見ないお方ですから、致し方ないことと存じますが……。あ! ならば、再びそのヨーツーバーの方々を使って、宣伝してもらえばワンチャン復活の可能性が!』

「うち、2人は長足GPを取り上げなくなってしもうて……残りは誰だったか某の中で、行方不明……」

『ふうーーーーーーーーーっ』

 ミウラ、そう長ーいため息をつくな。


『ヨーツーバーネタはお終いですか?』

「いや! とっておきがあった! アレはヨーツーバーに詳しくない某も燃えたでござる!」

 ミウラが疑いの目で某を見ておる。


『ほほう、それは?』


「ポロライブとのヨーツーベにおける実況企画にござる!」

『勝利の方程式じゃないですか!』


 ――つづく――


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