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新たなる宇宙シリーズ

宇宙の崩壊

作者: 尚文産商堂

ファイガン暦43452年。高性能のコンピューターウイルスが、全宇宙中にまかれた。

それは、全てのワクチンソフトを破壊し、インターネット網を通り、全てのコンピューターを機能不全にさせた。

全ての人類は、神を恨んだ。しかし、神は、新たなる高速通信網の発達を促したと言った。

そして、それは現実のものとなった。


コンピューターウイルスが生れてから10年後の、ファイガン暦43462年。

連邦政府のてこ入れによって発足した、「超高速通信網再構築推進会議」によって、新しい通信体形が発表された。

個々の惑星同士の通信は、インターネットを通じての通信が切断されただけだったので、いわゆる亜空間通信と言う特別な通信によってどうにかつながっていた。


そして、その年の10月1日。ようやく、通信機能は復活した。

しかし、人々は、このコンピューターウイルスによる被害を忘れはしなかった。

そして、官民合同の新会社が組織され、とある都市を実験台として、新しい通信設備を作り上げていた。


ファイガン暦43472年、とうとうその設備が作り上げられていたが、一つ、問題が発生した。それが、通信媒体の事だった。


「とにかく、どうやってその通信をするかが問題になるんだ。直接体に付けるか、それとも、装飾品のようにして身に付けるか」

「さてと、どうしたものかねぇ」

新会社の部長級会議。その通信媒体について討論が行われていた。そして、一人の男が、ポロリと言った。

「つけ外しが楽で、簡単に身に付けれるものと言えば、めがねではないでしょうか」

「眼鏡?」

「そうか、めがねか。確かにそれなら簡単に作れるし、取り外しも簡単だ。よし。それでいこう」

通信媒体は、こうして解決した。


ファイガン暦43473年4月1日。とうとう、その実験が始まった。その実験の内容とは、こう言うものだった。


「ここで、ニュースです。超高速通信網再構築推進会議の下部組織である、新通信網作成公社が発表したところによりますと、本日より、鋳躍市全域を、実験台とし、眼鏡をかけるだけでインターネット通信が出来るとする実験を開始したと発表しました。遠くない将来。人々はパソコンを持ち運ぶのでなく、眼鏡をかけながら行動するようになるかもしれません」

その時、玄関から声が聞こえた。

「すいませーん。白鳥通運です。市の代理として配送しています。朝山宮古さんのお宅ですよね」

宮古は立ち上がり、はんこを持って、それを受け取りに行った。


それから、数十年後、通信技術は未だに発展途上ながらも、複数の町で同様の実験を開始していた。


世界で最初に眼鏡の配給を行った鋳躍市では、朝山宮古が会社を起こして、眼鏡の製造をしていた。

しかし、彼女は、突然どこかへ消えた。

その消える際、何らかの情報汚染が発生し、町のあちこちで、情報の穴が発生していた。

それは、眼鏡をかけると、黒色や白色など、通常の空間とは明らかに変わっていた空間だった。

子供達は、眼鏡をかけながら、その空間を見ていた。

何か引きつけられるものでもあるのだろうか。

しかし、大人達は、それに気がつかなかった。


そのうちに、その空間に名前が自然についていた。

それが「バグ」。

元々の意味も、似たような意味があったので、そのまま通用出来たのだろう。

そして、通常の空間と違って、その朝山宮古の人格データが、そのバグの中に入っていた。

彼女は、この通信網の中に溶け込んでいたのだ。

さらに、驚いたことに、そのバグは、塊にし、ちょっと手を加えれば、自らを守る武器にも、防具にもなる事が分かった。

人々はこぞって、そのバグの回収に乗り出した。

しかし、その一方にも、ある都市伝説が付きまとっていた。

それは、子供達の中からうまれたものらしいが、バグを全て集めると、宮古さんが現れ、何でも叶えてくれる。

だが、そのためには、バグを全て集め、なおかつ、自らの命を賭す必要があると言う。

大人達はそれを冷笑したが、子供達は、本気だった。

しかし、そのうちに、その事が不可能だと気づいたらしい。

その都市伝説は失われて行った。


ファイガン暦44000年1月1日。

連邦政府は、全ての宇宙でこの技術を提供開始。

そして、元々使われていた空間と新しい空間を結びつける際、数ミリ秒のタイムロスが観測されていた。

しかし、それほどの事だから、人々は無視をしていた。


そして、この話は、とある鋳躍市の家の中の少年の部屋から始まる。

「おかーさん?何かが部屋の中にいる」

「え?眼鏡かけてしか見えない?」

「うん」

こうして、バグが再発見された。

ただ、今回のバグは、黒のみで、さらに、元々のインターネット上の空間とつながっており、その内のいくつかは、また、別の空間をつながっていた。


少年は母親を呼び、母親は連邦政府の役人を呼んだ。

連邦政府の役人は、その話を聞いて、すぐさま飛んできた。

さらに、この専門家の人も連れてきていた。

「おはようございます。連邦政府の者です」

「お待ちしていました。どうぞ中に入ってください」

母親は彼らを中に入れた。


「これですね」

「はい…なんですか?これは」

「昔の人は、バグと呼んでいました。これは、データの書き損じや、手を付けられなかったデータです。今までその存在は理論化されていましたが、実際に発見されるのは初めてです。これは、連邦政府の研究所に保管されます」

「分かりました。でも…」

「でも、なんですか?」

「じつは、子供が既にこれに触れていて、まあ、無論眼鏡を通してですが…何らかのデータが入っているようなんです。それも、これだけでなく、複数に分かれて」

その言葉を聞いて、専門家の人が少し興味を逸らした。役人の人は、回収を終えてから話を聞きだした。

「どんなデータですか?」

「子供が隠して見せたがらないんです。もう、12歳だし、個人用データファイルを渡したんですが…」

この世界では、法律によって、データの授受が厳しく制限されている。

但し、授受をする代わりに、自分のデータファイルを有して、その中にいれ、共有するのは問題ない。

しかし、そのデータを移動やコピーしてはいけないと言う制限がかけられていた。

12歳以上になると、そのための個人用のデータファイルが制限付で渡される。

その制限は、親の許諾や役所への申し出など、多岐に渡るものだった。

その制限は20歳になると外され、自由に使えるようになる。

但し、容量の制限は、一人当たり3.5PB[3.5*10^15=3584TB]だった。

他に、家族用として、一家族当たり500PBを連邦政府から借りる事が出来た。

「なるほど。では、その個人用データファイルへの進入を許可してください」

「……いいですよ」

散々考えたあげくに、ようやく結論を出した。そして、彼に、管理用パスワードを教えた。

「……つながりました。しかし、何かいろいろ入って、雑然としていますね…」

いいながらも専門家の人は、指を激しく動かしていた。

「ああ、あった…え?…これは…」

「なんでしょう。私は、親として、それを知る権利があると思いますが?」

「…分かりました。教えましょう。これは、ファイガン暦43452年に発生した、ネット網寸断時に送られたウイルスの原本です。しかし、高度な暗号化と、さらに、誰かの人格データも入っています」

「誰かのって、誰のですか?」

「おそらく、遥か昔、我々が眼鏡を使いだす前後、ここ、鋳躍市で使われ始めた頃の話になるんですが、その時に、朝山宮古と言う女性がいたんです。彼女は、我々が今使っているのとはまったく別の眼鏡を作っていました。ただ、構造自体は、あまり変化しておらず、それどころか、当時のどの試作品よりも素晴らしい出来だったそうなので、そのまま採用され、そのための会社を作ったそうです。しかし、数十年後、彼女は突然失踪し、未だに、見つかっていないそうです。その人の人格データかもしれません。さらに言うと、その会社は、現在倒産しており、その会社の情報もありません」

「しかし、そんな事ぐらいだったら、私に、母親に教えても問題ないと思いますが…」

「これも推測に過ぎませんが、彼は、昔の都市伝説、つまり、迷信を聞いたのでしょう」

「どんな迷信なんでしょう」

「この宮古さんの人格データを全て集めると、彼女本人が現れ、なんでも願いを叶えてくれるそうです。しかし、その事は、命を賭ける必要がある。そう言われています」

「命を…それほど重要な事が、私の子供にあるのでしょうか」

「さて、それは本人に聞いてください。それと、この事は他言無用でお願いします」

「なぜですか?」

「このバグという物は、昔に、今から大体500年ほど前に発見され、先ほど話した理由で大量に集められたようなのです。しかし、既にそれらの情報もなくなり、全て失われたと思われています。当時は、今ほど強固な情報管理なんか出来ませんでしたからね」

「なるほど…」

「では、我々は、おいとまさせていただきます。奥さん、くれぐれも、この事は誰にも言わないで下さいね」

「分かっています」

そして、彼らは帰っていった。


そのバグの本物は、すぐさま最高レベルの情報汚染物質扱いとなり、精査された。

その結果、この物質は、完全に誰かの人格データの一部であり、なおかつ、そのデータの中には、ファイガン暦43452年にばら撒かれたウイルスも入っていた。

彼らは、それをつなぎ併せる事にした。しかし、作業は思ったより難航した。なぜなら、既に失われたデータもあり、それがどこに存在するのかが分からなかったからだ。


しかし、そのデータは、この空間ではなく、昔使われていた通信空間にある事を知っている人がいた。

彼らは、今の子供達であり、その宮古さん都市伝説を知っている人であり、なおかつ、今は閉鎖されている昔の通信空間にアクセス出来る人だった。

そんな子のうちの一人、鋳躍市に住んでいる、坂山泰蔵が、今日もネットの中に入っていた。


「さて、今日も探してみるか」

彼は、眼鏡をかけず、パソコンを開いた。現在、眼鏡しか使われていないので、通常ならばそれでも支障はないのだが、閉鎖されている通信空間には、パソコンでネットにつなぎ、特殊なコードを打ち込む必要があった。

「えっと、パスワードは…、「君が笑むから僕は生きれる」だったな」

カタカタとパスワードを打ち込んで行き、エンターキーを押した。

その時、不思議な感覚が体の中を駆け巡った。

パソコンの中をのぞきこんだ時、その感覚は最高潮に達した。


(ここは、どこだ?)

泰蔵は、今まで見た事がない空間にいた。

比較的黒めの霧が周りを覆い、さらに、時々光る玉が飛んで行っていた。

偶然手を伸ばした先には、ブロック上の物体があり、その中に手が沈んで行った。

(わわっ!)

びっくりして手を引き出すと、粘液上の何かが手についていた。その中に、数字がびっしりと書かれていた。

(これは…?)

「それは、データを視覚化した物だ」

「誰だ!」

声が聞こえ、そちらの方向を向くと、誰かが立っていた。

その人は、こちらに近づいていた。泰蔵は身構えた。

しかし、身構える直前、衝撃波が泰蔵を襲い、動けないようにした。

「安心しろ。俺はお前に害を加えるつもりはない」

「お前は、何者だ…?」

息も絶え絶えに聞き返した。

「俺は、メフィストフェレス神、聞いた事あるか?あるわけないよな…昔、俺はお前が今住んでいる空間から追放された神だ。いま、別の空間で宇宙を構成していたが、崩壊の危機に瀕している。そこで、偶然この空間にもぐりこむ事が出来た俺は、誰かがこの空間に接続するのを待っていたと言うわけさ」

「…自分をどうしようとするつもりだ?」

「単純さ、お前、宮古さんの伝説を信じているだろ?」

「ああ、そのために、この空間と、接続している」

「なら、取引をしないか?」

「どんな…」

その時、体を抑えていた力が急激に弱くなった。泰蔵はよろけた。しかし、こける事はなかった。

「俺は、そっちの空間に行きたい。そのためには媒質が必要だ。お前の体を借りたい」

「自分側のメリットは?」

「宮古さんと引き合わせる。無論、体を借りるほうが優先だがな」

「…いいだろう。その代わり、ちゃんと宮古さんと会わしてくれよ」

メフィストフェレス神は薄笑いを浮かべながらも、「ああ、もちろんさ」と言った。


そして、泰蔵の腕に、特殊な文様を付けた。それは、メフィストフェレス神の模様だった。

「これは、選ばれた者にしか見る事が出来ない模様だ。これを付けている限り、お前は、俺といつでもつながる事が出来る」

「いつでも?じゃあ、ここから出てもそれは出来るの?」

「ああ、もちろんだとも。それでだ、お前は、これを見える人をこの空間に連れてきて欲しい。いつでもいい。俺はここでずっと待っている」

「わかった。じゃあ、元の空間に戻してくれ」

「ああ、そうしよう…」

そして、泰蔵は意識が遠のくのを感じた。


気がつくと、泰蔵は、ソファーで寝かされていた。

「大丈夫?突然倒れたから、心配だったのよ」

「う…うん。大丈夫。心配しないで」

泰蔵は、起き上がった。すぐ横に心配そうな母親の顔があった。

「明日、学校休みましょう」

「ううん、大丈夫。じゃあ、部屋に戻ってるね」

少しだけ足元がふらついたが、それでも、母親に気づかれる事なく部屋に戻れた。


翌日、学校に行くと、腕についている文様など誰一人として気に止める者などいなかった。

だが、その中でも、同じクラスにいる、世界で最初にバグを再発見した少年、山口秀一がいた。

山口は、泰蔵の横の机に座っており、たった一人の親友であり、宮古さんの都市伝説を泰蔵に教えた人であった。


「なあ、坂山、お前の腕についている、その印は何だ?」

終礼が終わり、これから帰ろうとした時、山口が泰蔵の腕を指差して言った。

周りの人達は、何を言っているのかが分からなかったが、泰蔵の顔色が代わっていった。

「お前、これが、見えるのか?」

「見えるも何も、それ、俺の気のせいなのか?」

「…いや」

その時、泰蔵の頭の中に、メフィストフェレス神の約束がよぎった。

「なあ、今日、暇か?」

「遊びたいのか?」

「ああ、家に戻ってから、自分家来てくれ」

「分かった。じゃあ、また後で」

「ああ」

泰蔵は、走って帰る山口の背中をぼんやりと眺めていた。


家に荷物を置き、そのままの格好で山口は、泰蔵の家にやってきた。

「おじゃましまーす」

軽い口調で中に入る。

「どうぞ」

泰蔵のお母さんが出てきた。横には、泰蔵本人もいる。そして泰蔵は、彼の部屋に山口を案内した。


「お前、この印が見えるんだったな」

「ああ、それがどうしたんだ?」

「ちょっと来てもらいたいところがある」

「いいけど、どこなんだ?」

「いけば分かるさ」

泰蔵は、前と同じ方法をして、山口と共にメフィストフェレス神の元へと行った。


「やってきたか」

「約束どおり、彼が、この印が見える人だ」

「そうか、同級生を持ってきたか…」

メフィストフェレス神は、山口に近づいた。

「何を…」

山口は気を失った。メフィストフェレス神は、彼の体に入ろうとした。しかし、何者かによって阻まれた。

「だれだ!」

「メフィストフェレスよ。そなた、よもや我が約束を忘れたわけではあるまい…」

「マギウス神か!なぜ我が邪魔をする!」

「そなたを創った時、我は、心踊ったもの。しかし、今では後悔のみが渦巻いている」

「なぜだ!神であるこの俺は、絶対的真理であるべき存在。そして、人を直し、正しき道へ連れて行く存在。それを実行するためには、人のそばにいる事が必要となる。そのために、彼の体を借りようとしているのだ」

「あなたは、それが、彼のためになると考えているのですか?」

「ああ、そうだ。だからこそ、俺はここにやってきた。すでに、我が計画も実行されている。こちらでいつか分からぬが、とてつもないコンピューターウイルスをばら撒いた事もあった。だが、既にその効果も失われているだろう。そこで、俺は考えた。何も出来ぬよりかは、何かをしようとな。そして、俺は一つの答えを出した」

メフィストフェレス神はゆっくりと右腕を山口の体の上に置いた。

「その答えが、これだ!」

一気に体の中に腕をめり込ました。そして、次の瞬間には、メフィストフェレス神の姿はなかった。そして、山口の右腕には泰蔵と同じ印が刻まれていた。

「これが、おぬしが下した答えと言うならば、我が答えは、これだ!」

マギウス神は他の神々を召喚した。そして、山口の体に入ったメフィストフェレス神は、形勢不利と悟るや否や、ニュー・スペースの空間に入っていった。

「危険だ!」

マギウス神は、すぐに彼の後を追いかけた。他の神は別の空間から見ていた。


この空間に入ったメフィストフェレス神は、今までの復讐に、さまざまなことを行っていった。

まず、一つの銀河系に目をつけ、そこに安置されていた神の神殿を木っ端微塵に粉砕し、その破片を一つにまとめ、振り回し、近くの空間をかき乱した。

その影響で、周辺の数光年以内の全ての惑星系は粉砕された。

さらに、それで出来た破片をいくつかの球状にまとめ、さらに、繰り返した。

そこにいた人々は、何が起こったか理解できぬままに消滅した。


マギウス神はそのような行為を察知するとすぐに駆けつけたが、メフィストフェレス神は姿がなかった。

そして、絶望が世界を回り始めた。


その発端となった一人の男性は、前日まで通常通りの生活を送っていた。しかし、突然、血を吐き倒れたのだった。

そして、彼からは未発見のウイルスが発見された。それは、瞬く間に一つの銀河系を滅ぼした。

さらに、苦難は続くのだった。


メフィストフェレス神が撒いたウイルスの種は、驚異的な進化をとげ、さまざまな抗体を破壊していった。

マギウス神達はそれを食い止めようとしたが、止められなかった。


そして、始まってから数年後、宇宙連邦は崩壊し、戦乱がこの地を襲った。


さらに、新暦44025年、全ての生命体は滅亡した。

残ったのは、別の空間にいた坂山泰蔵、メフィストフェレス神に体を乗っ取られている山口秀一、それと、他の神々であった。彼らは、最後の決戦に臨んでいた。


「ここに、メフィストフェレス神がいるのか?」

そこには、全ての生きている人が集まっていた。いや、生きていた人達であった。

彼らは、さまざまな原因で、この世界から去った人達であった。

それの中心に、小さな黄色っぽい箱が置かれていた。その周りに、神々と泰蔵がいた。

「この中に、メフィストフェレスが…」

スタディン神は、その箱を開けようとした。しかし、横から、待ったをかけられた。オールド・ゴットだった。

「待つが良い、スタディンよ」

「どうしてですか?ここに、彼がいるとするならば、早く倒すべきでしょう」

「この中には、99.99%の絶望と、0.01%の希望が入っている。しかし、その残っている希望と言うのは、昔の都市伝説に残っている…」

その時、泰蔵が気づいた。

「…その都市伝説って、宮古さんの…?」

マギウス・レメゲトンがうなずいた。

「その通りだ、泰蔵。そもそも、宮古さんがこちらに来たのも偶然でしかなかった。この空間は、最終的に消滅する手はずになっていた。しかし、当時の宇宙連邦首脳部は、この空間の存続を決めた。それにより、こちらと元の空間、二つが同時に存在する異質な部分が生まれてしまった。そこに目を付けたのが、メフィストフェレス神だ。彼は、こちら側の生命エネルギー、いわゆる魔力を吸収する手段を開発していた。それを使いすぎ、彼に与えた罰である宇宙開発を破壊へと導いてしまったのだ。彼は、神となるべき存在ではなかった。また、世界が滅亡へと導かれてしまった。いつになったら、負の連鎖を断ち切れるのだろうか…」

その時、箱のふたがひとりでに開かれた。そして、なにか、黒いものが現れた。それは、白いものも入っていた。

「伝説曰く、光の者、闇の者合わさりし時、この世界秩序、崩壊される。メフィストフェレスは闇の者とするならば、光の者とは、山口の事か…」

勝手にレメゲトンは納得していた。そうしているうちにも、その混合体は、こちらにはってきていた。

「ちょっと、危ないな…」

その矢先、泰蔵の体に、黒いものが引っ付き、そのまま吸収し始めた。

「泰蔵!」

レメゲトンは、近寄ろうとした。しかし、黒いものがこちらに矢のような物を放ってくるので、近づく事が出来なかった。

「ぎゃー!」

泰蔵の体は、瞬く間に吸収された。そして、黒いものは、元の形を取り始めた。

しかし、腕の一部が白いままだった。

「終わりだ」

メフィストフェレス神となったそれは、そのまま、神々に襲いかかった。


まず、スタディン神達、最も新しい神々に襲いかかった。

瞬く間に、魔力を吸い取られ、一瞬で空気と同化していった。

「やめろー!」

ミヒャエル神とレメゲトン神は、最大の力を振り絞り、メフィストフェレス神に攻撃を仕掛けた。

メフィストフェレス神は、ミヒャエル神とレメゲトン神の攻撃に対し、先ほどと同じ力で向かった。

すると、激しい光がそれぞれの真ん中で起き、全てを巻き込んでいった。

彼らは、その中に、一人の女性の姿を見た。彼女は、笑いながら泣いていた。

そして、彼女の影が消えると同時に、全ての空間が消滅した。

神は、ただ、呆然と立つ事しかできなかった。


全ての空間が崩壊した場所で、マギウス両神とメフィストフェレス神だけがいた。

「世界は、崩壊した。すでに、何者も生きてはおらぬ。どうする、メフィストフェレス」

「どうしようもしないさ。俺自身の目的は達した。元々、俺の性分でね、創られている物を壊すものを、生きがいの一つと考えているんでね」

「だったら、もう壊す物はない。我が力に戻れ」

レメゲトンが言うと、メフィストフェレスの姿は消えた。

そして、その場には、レメゲトン神とミヒャエル神の姿しか残らなかった。二人は、顔を見合し、言った。

「さて、これからどうしたものか」

これをもって、本シリーズは終了です。これまで、非常に読みにくい場面も、ほとんど戦闘シーンがないので、面白くなかったと思いますが、そんな中、読んで下さった皆さん、本当に、ありがとうございました。

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