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1-42 儀式の時間

 ジンギスカン鍋とビールですっかりとご満悦な美美。


 羊肉をたらふく食ったチワワ大橋も、心なしか元気を取り戻したようだった。


 もう狩猟場復活は赤沢に連絡してあり、明日一番で応援を寄越すとの事だった。


 イーグル倉田や美紅にも連絡しておいたが、相変わらずイーグルからの連絡はない。


 美紅からフレンドコールがあったので、缶ビール片手に陽気に電話に出た。


「ヤッホー、今夜はジンギスカンで乾杯よー」


「いいなー、ズルーイ。

 あたしもそっちに残るべきだったかー。


 こっちなんか夕食はカップ麺一つよ。

 あ、クエスト達成おめでとう~」



「羊肉、まだまだいっぱいあるわよ。

 それよりさー、野菜が欲しいわ。


 そのうちに肉だけジンギスカンになるわよ。


 あ、牛肉も歓迎だけど。

 やっぱ野牛よりも和牛よねー」



「く、美味い物を食っている奴は言う事が違うな。

 このブルジョワめー」


「ところで、そっちどうなってんの?」


「あー、口で言うよりも、こっち来て見てくれた方が早いかな。

 明日には来るんでしょ」


「うん。残り九個のゲートを開放したらね。

 お昼にはそっちに着くと思うよ。


 当座のお肉はジビエでいけると思う。


 あ、いけね。

 森で鳥を狩るのを忘れた」



「あはは。

 農場で鶏肉を手に入れられるかどうかは、多分あんた次第ねー」


「またそれなのかい」


 昨日今日の狩場行軍で、もういい加減うんざりしている美美。


 しかも仲間が先行している農場じゃ、何かクエスト関連で? 揉めているらしいと来たもんだ。


「もうずっとそうなんじゃないの。

 あんたしか開錠出来ない場所が山ほどあると思う。


 特にこの農場地区はクラン単位で閉鎖になっているみたいだし」


「もう、うんざりするわね。

 あたしの体は一個なのよ。


 このカードキー、他の人には譲渡出来ない、あたし専用のパスだしね」


 他人が欲しいと言うのであれば、いくらでもくれてやるのだが、認証の関係でそうもいかない。


 あの、いかにもオタクさんっぽい感じの生産系の人も弄れないような事を言っていた。


「ご苦労さん。

 あたしは、次々と食い物関連が開放されるのを待ってるわ。

 ついでに、それらを使って料理してくれるのも」


「ジョブ開放のクエストが早く欲しい!」


「それがあるとは限らないけどね」

「だーっ、それを言わないの」


「あたしは本望だから、このままでいいけどね。

 他のジョブだって、そうたいした事ないし」


「この器用貧乏人めー」

「あんたは二足の草鞋でとことんだもんね」


「そこまでやってないって。まだガンスリンガーはカンストしていないよ。


 その代わりに、魔王討伐の恩賞としてステータス上昇が倍化及び数値も天元突破しているけど」


「マジで⁉

 あんた、もしかしてこのゲームで最強プレイヤーになっちゃったんじゃないの」


「どうせなら、料理人最強の能力にしてほしかったわ。


 じゃあ、もう寝るわ。

 明日は朝早く起きてゲートの開放に行かなくちゃ。


 ここの人達も張り切っているし、明日はA地区から応援も来るでしょうし」


「さよけー。

 じゃあ、グッナーイ」


「おやすみー」


 それから油断しきって蹲っている大橋をひっ捕まえた。


「あれ? 何するっすか。

 もう寝るんじゃ?


 今日は疲れたから、俺も早く寝るっす」



「黙れ、この小便小僧。

 あんたと、あんたが汚したリュックのお洗濯の時間よー」


 自分はすでに帰ってからシャワーを浴びていたので、お部屋着ズボンの裾をまくって、取り出したタライにお湯を張った。


「キャンキャンキャンキャン」


「ええい、この小便ワンコめ、往生際よくしな。

 今日は、あんたをずっと背負ってきたんだからね。


 向こうじゃ軽く洗っただけだから、とりあえず明日の行軍のために身綺麗にしてもらうわよ。


 うりゃあ!」


「ブギャアアアア」


 何か物凄い悲鳴を上げているワンコ。


 何故か犬用シャンプーを持っている美美なのであった。


 何かの折に景品で貰っていたのだった。


 明日もこれを担いで歩く予定なので、容赦なくシャンプー攻めにしてやった。


「うん、やっぱり犬って濡れると面白い形になるなあ」


「しどいっ。

 ミミさんったら、しどいわ!」


「ブリちゃん、なんか喋り方が変わってるわよ」


「くそう、恨んでやるー。

 えいっ」


「あ、痛っ。

 ええい、噛むな、この」


「ガルルルル」


「うっさい、こっちはまだリュックのお洗濯が残ってるのよ。

 もう往生際良くしな!」


「キャンキャンキャンキャン!」


 それからもうしばらくの間、ワンコの悲鳴と美美の怒号がシェルター内に渦巻くのであった。


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