表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/53

1-37 出直し

 解体の合間に、美美はイーグルにフレンドコールを送ったが返事がない。


 とりあえず、ここまでの進捗をメールして、一旦C地区で合流する旨を伝えておいた。


「ミミさん、今日はどうするっすか」


「うーんと、ちょっと待って。

 まだ少し時間あるから、BCウォークを進んでおきたいな。


 えーと、ここのシェルターはどこにあるのかなっと」


「そこっすね」


 美美が広げたマップを共有コマンドで覗いたチワワが肉球で押したのは、連絡通路の真ん中あたりにあるスペースであった。


「こっちは端にあるんじゃないのね」


「ABウォークは、居住区から狩場へ行く道だからB地区寄りの端にあるんすよ。


 ここは宿泊所も兼ねた施設もある農場へ向かう通路っすからね」


「そっか、狩場には宿泊所がないもんね」


「B地区は基本、狩猟ギルドの施設しかないっすから。


 そもそも、ゲーム内時間はゆったりしてるから、みんなそうシェルターなんて使わないで隣の地区まで行くし、A地区からC地区へ行くにはダイレクトな連絡通路もありますからね」


 そして肉の解体が終わった報せが来たので受取りに行った。


 IDによる承認にてアイテムボックス間送信で解体した肉を受取った。


 内臓肉まで上手に処理してくれてあるので肉の量は多い。


「助かったわ。

 そうだ、狩猟場の中で何か変わったところなんかないのかな。


 あちこち歩き回ったんだけど、自然物ばかりで手掛かりが何もないのよ。


 何でもいいんだけれど。

 犬の鼻でも探せなくって」


「はて、変わったところねえ」


 だが、別の一人が教えてくれた。


「そうだな、あちこちにある水生成プラントなんかは?


 あれは普段は地表には出ていないけど、調整できるようになっているから。


 後はそうだな、監視塔とか」


「あ、そうそう。

 レンジャーの詰所なんかも、あちこちにあるよね」


「う、そういう物があったんだ……えーと、もし地図があったらください」


 自分達のマップコマンドには載っていない、狩猟ギルドだけが使う地図にそれらが載っているのを見て、美美はがっくりきた。


 最初に、この人達に手掛かりを訊いていけばよかったのだ。


 まあ狩りは成功したわけだが。


「あと、これを貸してあげよう。

 水生成プラントを地上に出すためのキーだ」


「ああ、ありがとうございます。

 つまり、あたしにもう一回行って来いというわけですね」


 リーダーらしき彼は、眼鏡をちょいと摘まみながら、にっこりと微笑んだ。


「はあ、じゃあまた。

 そこのシェルターに戻って明日の朝に出直します」


「ああ、よろしくね~」


 仕方がなく、肉を土産に出来てホクホクな彼らと別れて、しょぼしょぼとシェルターへ戻っていく美美達。


 それからまたイーグルにメールを送っておくと、気を取り直して食事の支度をする事にした。


 メニューは当然のバッファロー料理だ。


「どうするー。

 定番はステーキやハンバーガーだけど」


「どっちみち、俺って人間様風の料理はヤバイっすから、薄味な焼き肉でお願いします」


「そっかあ。あたしはせっかくだからハンバーガーにしようかな。


 それなりに作り置きしておこうっと。

 合流したら、みんなにも食べさせたいし」


 玉ねぎや塩胡椒が入っているので、これはさすがに犬には上げられない。


「卵も農場が何とかならないと、直に品切れだな~」


 料理人の圧倒的なクッキングパワーには及ぶべくもないが、ガンスリンガーのパワーは、ハンバーグの材料を捏ねるのにも便利だった。


 特に数を作ろうと思うと大変だ。


 戯れにミートミキサーを使わずに包丁でミンチにする美美なのであった。


「ふっふっふ。

 たかが二キロしかないチワワ一匹で、何個分のハンバーグが出来るのかしら」


「ひえっ、ミミさーん。

 それ、今の食料事情だと洒落にならないっすよ」


「あっはっは、言えてるー。

 あたしって、当分クエストしながら狩猟当番かしらね」


 そして、ふざけながらもバンズを携帯していたベーグル焼き器を用いて焼きながら、シェルターのコンロにてスキレットでハンバーグを焼きつつ、チワワ用の薄切り肉と自分用の小ステーキを焼く美美だった。


 軽くふうふうしてやりながら皿に出してやり、自分もステーキを齧った。


「美味そうっすね、ステーキ」


「まあまあ、そのうちジョブチェンジが出来るようになったら、そのうち食べられるよ」


「だといいんっすけどねー。

 でもそれってログアウト出来るっていう事だから、ここから出られるのでは」


「どうかなあ。

 そう簡単にここから戻れるものなのかしら。


 とりあえず、戻れなくてもいいからジョブチェンジが出来るようになったら最高なんだけどね」


「ミミさんの料理人ジョブに期待してまっす。


 いやもう、ミミさんに飯を作ってもらっていると、今更ドッグフードに戻りたくないっすわ。


 まだいっぱい残ってるっすけど」


「それは言えるよねー」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ