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1-36 狩りの時間

「どお?」

「さあー、なんとなくあっち?」


 美美に抱っこされながら、チワワは右前足で可愛く森の方角に向かって右を差した。


「じゃ、ボチボチ行ってみますかー。

 もう二時間くらいで日が暮れそうだから、本日はワントライで終了くらいかなあ」


「当てにならないですけどね。

 付近には物音一つしないし、匂いも各方向から微かに香るくらいっす。


 まあ、そっちがマシかなあっていう程度で」


「それでも、あたしの当てずっぽうの勘よりはマシじゃない?」


 そして、美美はガンスリンガーの体力任せに歩き続けた。


 魔王戦を終えて、更に体力が半端なく上がった美美。


 そこから十分くらい行軍した頃合に、チワワから声がかかる。


「お、あそこになんかいそうな感じ」


「へえ、どこどこ?」


「あの、ブッシュのあたり、わかりますかね。

 なんというか気配というか」


「えーと」


 視覚スキルだけで判別出来なかったので、ハリウッド映画のスナイパーがよくやるように、単体でスコープを取り出して覗いてみたら見つけた。


 だが、そいつは。


「う、可愛い赤ちゃん鹿とお母さん鹿じゃないのさ。

 さすがに、あれはあたしには無理」


「そんな事を言っていたら狩りなんか出来ないっすよ」


「ハ、ハンターの心得として、確かああいうものは獲っちゃ駄目だったんじゃ」


「あれもNPCアニマルなんですけどねえ……あんた、別にハンターじゃなくってガンスリンガーっすよね?」


「めっちゃリアルだから、さすがに絵面的になあ。


 どこかに後ろ足で土を蹴って威嚇してくるような、憎たらしそうなおっさん風の野牛とかいないかしら。


 そういうのなら遠慮なく仕留められるんだけどな」


「もう我儘っすねえ。

 じゃあ、次行きますよ。

 じゃあ、今度はあっち」


 そして、チワワに指示された通りにまた歩き回る美美。


 そして、今度は美美にも容易に見つけられた。


 そいつらは別に隠れてはおらず、また数十頭の群れをなしていたのだ。


「おおっ、バッファローの群れかあ。

 よし、いただき、バッファローバーガー!」


 そして、彼女はガンスリンガーの特技である『二挺ライフル』のスキルを発動した。


 普通ならば有り得ない特技なのだが、ゲーム内の御遊びだから設定されている。


 これは両手に一挺ずつのライフルを持ち、それぞれを照準して撃てるスキルだ。


 さすがに遠距離精密狙撃は無理だが、草を食んでいて特に隠れてもいない、ほぼ止まった的である動物相手の狩りならば十分だ。


 撃ちまくる美美。


 各五発プラス薬室に装填された大口径の弾丸は、次々とバッファローを打倒していった。


 普通の動物とは違い、正確に急所を撃ち抜かなくても、十分クリーンヒットならば倒せる。


 その代わり、リアルな死体が残るのだ。


 更にリロードして撃ちまくる美美。


 半分近くは逃げられてしまったが、インベントリに収容してカウントしたら三十頭仕留められていた。


「ふう、とりあえず、こんなところじゃないかな」


「まあ、いいとこっすかね」


「早めに行って解体してもらおう。

 今度は森で鳥でも撃ちますか」


 それから一人と一匹は元来たゲートを目指した。


 ここからはゲートまでそう遠くはなく、二十分もかからずに外に出られた。


「ただいまー」


 待ってくれていた狩猟ギルドの人達は殺到してきて一斉に訪ねてきた。


「おお、お嬢さん。

 クエストはどうだったかな」


「獲物はどうだい」

「中の様子は」


 それを軽く手で制して、かるく汗を拭いながらミミも答える。


「いやあ、ここへ入ったのって初めてだけど、正常なんじゃないかな。


 広いし、クエスト対象はなかなか見つからないですね。


 中であたし用にクエストを貰ったんです。


 ゲート解除用のボックスがあるらしいんだけど、そう簡単に見つからないわあ」


 彼らは顔や姿勢に露骨に落胆を表したが、気を取り直して訊き返す。


「して、狩りの方の首尾は?」


「ああ、バッファローが三十頭と野草が少々かな。


 今回バッファローは十頭分上げるから、全部解体してくれない?


 食用以外の素材は全部上げるわ。

 後のお肉は農場のC地区とA地区への御土産ね」


 皆、食糧の提供に小躍りして喜んでいた。


 何しろ、これがもっか最大の懸案であったのだ。


「お安い御用で。

 いやあ、例の災害食以外で食い物が手に入るとは」


「肉以外の調味料類が欲しいとこねー。

 ハーブくらいなら探せばあるかもだけど。


 とりあえず、一回農場へ見に行くわ。


 あっちでも、なんかクエストが出ているかもしれないし。

 きっと、あたし以外は入れない奴が」


 それを聞いて、皆複雑そうな顔をする。運営の意図がつかめないので。


「まあ、当座の食い物があるだけマシでさあ」


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