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1-12 イベント告知

 再び、ギルドの宿舎にて目覚めた二人組。


「また夜が明けたねー。

 身体センサーは本日も特に異常なしっと」


 今日も体調管理に余念がない美紅。


「そうだね。

 ああそうそう、イベの開始告知って何時からだっけ」


「いつも朝の九時くらいじゃなかったかなあ。


 今は七時かあ。

 もうそのうちに招集がかかるんじゃないかな。


 そっちは討伐組で、こっちはシェルター組か」


「そだね。

 ああ、今日はいよいよ魔王の脳天をぶち抜きに行くわけかー」


 だが、それを聞いてくすくすと笑う美紅。


「あによー」


「いや、だってさ。


 美美ったら、まるで豆鉄砲みたいな単発式の空気銃でヒヨドリでも撃ちに行くように気軽な感じなんだもん」


「あはは、そうかあ。

 それくらい、あたしの認識って軽いのかもね。


 うん、ジビエもいいよねー。

 ゲームが正常化したら、他のゾーンへジビエ狩りにでも行くかな」


「あんたの大砲で撃ったら、でかい熊だって粉々になるんじゃない?」


「小さい狙撃銃や狩猟用ライフルなんかもあるよ。


 ガンは長物からハンドガンに至るまで、もう五百種類は揃えたから」


「マジで⁉」


「うん、これでもまだ半分くらいなのよ。


 ほら、あたしって本職は料理人で、イベなんかの時や特別なアイテム配布期間みたいな時にしか戦闘アバターは持ち出さないし」


「そっか、そりゃあ専門の本職みたいにはいかないよね」


「もうとっくに全種類コンプリートしている強者もいるしねー。


 まだ新銃は出てくると思うよ。

 そういう物は単に性能の違いだけじゃないし。


 高級食器のお皿みたいなイヤーモデルなんかもあって、銃把の彫刻の図柄や、銃身の刻印が違うだけのものもあれば、拠点に飾っておくのに相応しいようなゴールド鍍金仕様やダイヤを埋め込んだものまでいろいろあるわよ」


「へえ、ガンスリンガーって案外とアイテム・コレクターなのねえ」


「だって、イベとかでガンスリンガーだけが貰える参加記念的な銃の賞品とかもあるし、よく銃器店の品揃えも変わるから、マメにログインしている奴が強みあるわ。


 このゲームって余計な課金システムは一切ないから、そういう物はリアルのお金じゃ買えないからね」


「そうか、じゃあ狩りは頑張ってねー。

 御土産のジビエ料理を待っているから」


「その前に魔王の首を狩ってこないとな~。

 あれは食えないだろうけど。


 また何か素敵なアイテムとか貰えないかな。

 ボス戦は止めを刺すと、凄くいい物を貰えるみたいだしさ」


「ああ、ラスト討伐報酬の序列第一位権限って奴ね。

 確か倒した武器と同じ種類の奴が貰えるんだと思った」


「そっかー、じゃあまた高性能なライフルか何かかな」


「今度は五十ミリ砲くらい?」



「さすがに、そこまで行くと大きすぎて持てないんじゃないかな。


 どうせなら四十ミリ口径くらいで、ロング銃身の超距離までパンチ力を届けられる奴とか欲しいな。


 ついでに放熱フィンが強力で冷却性能が高く、銃身が焼けた時のクールタイムの短い奴なんかがいい」


「そこまでやると、あんた毎回魔王討伐に呼ばれちゃうんじゃないの?

 盾役の魔物とかでもあんた一人で全滅させられそう」


「そいつはどうかな。

 武器には相性ってもんがあるからね。


 そんな万能武器なんて、このオーディナリー・エブリデイのゲーム世界にはないよ。


 魔王軍の盾系魔物ってロック系が多いみたいだから、相手がでかいといくら強力なライフルでも打ち砕くのは厳しいんじゃないかな。


 あれは爆裂系の魔法とかの方がいいんじゃない」


 だが、そこでイーグルがドアをガツガツと拳で叩く音が聞こえてきた。


「ミックン、そろそろシェルターへ退避する時間だぜ。

 ミミは俺達と一緒に出立の準備ね」


「はーい。

 じゃ美美、あたしもう行くわ。


 武運を祈るぜ、我らが最強ドンパチヒロイン様!」


「はいはい、まあ相手が魔王でも当たれば一発で死ぬような武器を振り回している訳だから、対魔王戦限定なら最強扱いでもいいかな。


 こう見えてガンスリンガーとしてはコツコツと頑張ってきたから、こそこそと狙撃するには都合がいいようなスキルは結構持っているし」


「じゃあ、頑張ってね。

 女ゴ〇ゴさん」


 ウインク一発残して退避していった相棒を見送り、美美は軽く装備を整えた。


 いつ何があってもいいように、ガンスリンガーのスタイルのままで寝ていたのだ。


 そして虎の子の三十ミリライフルを引っ張り出す。


 弾倉は五発満タンで薬室にも一発送ってある。


 本日、弾丸は劣化ウラン弾という触れ込みの特殊な徹甲弾を指定した。


 大口径狙撃砲ならではの醍醐味だった。


 元々付属していた複数のマガジンに各種の弾薬が込められている。


 このゲームは日常系を押し出している緩いゲームなので、元々戦闘系のルールも緩いため、弾丸の補充は昔ながらのリロードによって行われ、なんと弾数にも制限がない。


 余分な弾を抜いて、一発だけ弾倉に入れて撃ってリロードしておけば、追加で薬室に一発送った後で弾倉に追加で詰める分の弾薬はバラで手に入る。


 あるいは撃たずに弾薬そのままを排莢して持っておくのもいい。


 どの道リロードすれば薬室以外のマガジンは満タンになる。


 普段は薬室の弾薬は抜いてあるので。


 リロードは、一旦ターゲットから照準を外して空撃ちするという昔ながらのやり方だ。


 更にそういったリアル要素を排するイージー連射モードに設定しておけば、リロードした時に薬室まで常時満タンになる。


 こういうところが結構ゲームっぽい感じなので、今も余計に現実感がないのだ。


 まさに、これこそ美美がガンスリンガーをサブジョブに選んだ理由なのだった。


 イベントにおいて、まるでエアガンのように爽快に、無制限に楽しく撃ちまくれる。


 男性だと近接戦闘にロマンを求める向きも多いのだが、美美の場合はゲーセンのシューティングゲーム感覚でリアルな戦闘に望みたいという願望なのだ。


 美美にとって元はといえばこのゲームは料理がメインの遊びなので、戦闘系の遊びにはさほど拘っていないのだった。


 それでも、うっかりと分不相応で御大層な大砲を手に入れてしまったので、必然的に戦闘イベも皆勤賞という訳なのだった。


 美美は、さほど神経質ではなく性格もカラっとしているため、戦闘にもさばさばと望むので一緒に組んだ人からも人気はある。


 そして、本日はイーグルや龍五郎と共に出動の時を待っていた。


 そして、運営のいつものAIの電子音声による告知が始まり、視界の隅にもイベント開始を報せる、LEDミニ球を思わせるような赤い点滅が見られた。


「いつものようにイベントが始まった……これは、やっぱりただのゲームなの?」


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