第5章~氷の城~#5
・・・顔が冷たい、いや、体中が寒い?
「・・・・つめた・・・ん?」
どうやら気絶していたようだ、イヴァンは体を起こし、立ち上がる。
「・・・・ここが・・・氷の国」
辺り一面雪景色、周りを見渡すと遠くには城らしきものが見える。
「あんたようやく起きたのね、まったく、世話が焼ける弟なこと」
火を起こして寒さをしのいでいる姉がそこにいた。
「姉さん!あれ、他の生徒会員の人たちは?」
周りにいるのは俺と姉の二人だけだった。
「どうやらはぐれたみたいね、こんなこと今までなかったんだけど、今年で仕様が変わったのかしら」
そう言い考え込む姉をイヴァンは見つめる、そういえば久しぶりに姉さんと二人きりだな。
「ここにいても寒さで凍え死ぬし、どこか寒さをしのげる場所へ行くわよ」
そう言って姉は立ち上がる。
「それじゃあ、あそこに見えてる城へ行きませんか?」
イヴァンは城の見える方向を指す。
「え?あんた見えるの?」と姉は間の抜けた声を出す。
「え?姉さん見えないの?あそこにあるじゃん」
「何言ってるの、こんな『吹雪』の中じゃ何も見えないわよ」
「吹雪?」周りをぐるっと一周するが辺りはきれいな銀世界で遠くまではっきり見える。
「もしかして俺だけか?こんなきれいな景色が見えるのは・・・」
「イヴァン?それでどこに城があるの?」
姉さんの周りで吹雪が吹いているのか、目を細くしながらイヴァンに伝える。
「こっちだよ、俺についてきてね姉さん」
姉は頷くことを確認し俺は城の見える方へ向かう──
──「ねえ!一体いつになったら着くの?」大きな声で顔を隠しながら伝える姉さん。
「もうすぐだよ」とそんな姉さんに向かって答える。
城の近くへ着くと、吹雪がやんだのか姉さんは顔を隠すのをやめ、城を見つめる。
「・・・・綺麗・・・」
城は氷で作られており、神秘的なオーラを醸し出していた。
「あんた良く見つけられたわね・・・最初は疑ったわよ」
「いや、見えてたから見つけるとかそいう問題じゃないような・・・」
でもなぜ俺だけこんなにきれいに周りが見えるのか・・・不思議だな・・・
「どうでもいいわよ、寒いし中へ入りましょう」
姉は大きな氷の門を開ける、「ギイィ」という音と共に少しずつ開き、人ひとり入れる隙間を作り中へ入る。
城の中は氷の装飾が施されており、一つ一つが芸術的な美しさを持っていた。
「仮想空間にしてはすごい再現度ね・・・」
「この場所の探索でもしようよ姉さん」
「・・・それもそうね、ここが安全じゃないかもしれないし・・・」
二人は中央にある階段を上って二階へ行き、右の部屋から調べる。
「・・・すごいわね、ここの部屋、たくさん書物が置いてあるわ」
姉はそう言い一冊取り出し、本を開く。
「・・・信じられない・・・禁書本じゃないこれ・・・」
禁書本とは、昔の魔法研究科が作り出した、人間をキメラへと改造する人体実験や禁術となっている魔術の類の読むことを禁じ、厳重に保管され、世に出させなようにしている。
姉はすぐにその本を閉じる。
「こんなの、剣闘祭で見せて良い代物じゃないわ・・・一体主催者は何を考えてるのかしら・・・」
「姉さん!こっちの部屋に来て!」
大声で姉を呼ぶ弟の声を聞き、弟のいる部屋へと向かう。
「これ・・・もしかして・・・」
イヴァンは黒い球を姉に見せる。
「・・・・えぇ、間違いないわ、『厄災の宝玉』ね」
厄災の宝玉、氷の国で奴隷を使って何かの実験をして生まれたアイテム、その力は未知数であり、何が起こるかもわからない。
「ただのレプリカだけどこんな物まで作るなんて、どうかしてるわ」
嫌な顔をしながら姉は答える。
「今年はそんなに変なの?」
「えぇ、前の祭りもその前の祭りもこんな物置かなかった、間違いなく今年の祭り・・・何かがおかしい、他の部屋も見てみましょう」
姉の指示に従い、城の隅々まで調べる、やはり、どの部屋に行っても禁止された本や気味の悪いレプリカなどたくさん見つかった。
「やっぱりおかしいわね、この城に関係の持たないアイテムのレプリカや別の遺跡で見つかった本がある、どうしてこんなものが・・・」
姉は手を顎に添えて考える、イヴァンは姉の邪魔をしないように怪しいものがないか探る。
何かを見つけたイヴァンはそれを手に取ろうとする、すると下から『ギイィ』という音が聞こえた、イヴァンは見つけたものをポケットに入れ、二人は戦闘態勢に入り、ゆっくりと・・・そして気付かれないように、2階から見下ろす。
「こんな猛吹雪の中、よくこの城を見つけたな」
「奇跡としか思えない」
城の門を開けたのは前回の剣闘祭優勝者のチームが入室した。
「まずいわ・・・あのチーム全員揃ってるのに対して、こっちは2人・・・多勢に無勢ね」
姉は苦笑する。
「・・・・どうやら先客がいるな」
そう言うと1番先頭にいた男の周りから魔力が溢れる、男の魔力は城の全体を覆うように膨れ上がる。
「・・・2階でこちらを見ている奴がいる・・・人数は2人だ!」
先頭の男がそう言うとほかのメンバーは一斉に構えを取る、1人が足を曲げ魔力を込め、高く飛ぶ。
「見つけた!」
「っ!!随分とパワフルな見つけ方ね!」
シスリーは剣を構え刺突する、が難なく躱され、男は下へ落下し、そのまま何事もなかったかのように着地する。
「降りてきな!そんな所にいてもお前たちが不利になるだけだぞ」
先頭の男はそう言うと姉とイヴァンは階段から降り、姿を見せる。
「へぇ、コイツはいい、イーリス学園の生徒会長、『狂乱のメリアド・シスリー』さんじゃないか」
他の奴らよりも大きく、深い傷が所々あり、ライオンのように髪をなびかせている。
「あら、覚えていてくれてたのね、『激進のバイス』さん」
姉さんは剣を構えて戦闘体勢を維持しながら話す。
「その二つ名は好まん・・・バイスで良い」
「あら奇遇ね、私もシスリーで構わないわ」
2人の魔力が徐々に高まっていく、辺りは2人の魔力で圧迫され、汗が出るほど息苦しい。
「お前らは手を出すな、これは俺と奴の戦いだ」
「貴方、見かけによらず紳士なのね」
拳を合わせるバイス、「ガキンッ!」という金属音が辺りに響く、シスリーも本気を出した時にしか見せない構えをとる、剣先は相手に向けず下ろした状態のまま脱力した構えを取る。
両者共に接近する。
「コツ、コツ、」と階段から1歩ずつ降りるブーツの音が辺りに響く、両者ともその場で静止し、音のする方へ目をやる。
「私は繰り返す♪この城で過ちを♪貴方はそんな私を♪許しはしないでしょう♪」
鼻歌交じりに薄気味の悪い男は降りてくる
「今日は・・・良い日だ・・・こんなにも質の良い材料が舞い込んでくるとは・・・・」
見た目は40代と見える顔をしている、だがその顔は死ぬ程実戦経験をこなさない限り達することの出来ない強者の貌をしている。血に染まったコートを着て長いブーツを履き、右手にはイヴァンが現実世界で見た『日本刀』と同じ形状をしたものを握っていた。
「お前らの仲間・・・て感じじゃなさそうだな」
バイスは真顔でシスリーに聞く。
「えぇ、でも城をくまなく調べたのに・・・あんな奴いなかったわ」
「ということは二択・・・見つからないように隠れていたか・・・もう一つは考えたくねえが、何者かによって今ここで召喚されたかだな」
2人の話し声が聞こえる、しかし、イヴァンはそれよりも驚いたことがある。
「なんだコイツ?」
イヴァンは瞬時に翡翠眼を使う。
名称・呪われし実験者 Lv5×€¥6<%
すて×〆=・すi・→」%°
翡翠眼が機能を果たさなくなっていた。
不思議に思ったイヴァンはバイスにも翡翠眼を使う
名称・バイス・メイギス Lv68
ステータス 攻1850 防1950 魔攻21 魔防1250 速680
普通に見れるってことは、アイツだけバグってるって事か・・・
その時・・・イヴァンの目の前にウィンドウが現れる、こういう時は必ず・・・
・大昔、魔王に殺害された男が何者かにより呼び起こされました、緊急クエスト発令・
緊急クエストが始まる時だ。