〜第1章〜魔王からの提案
俺は言葉を失った、魔王様は何故俺なんかにこんな提案をしたのか分からない。
「はは、まぁその顔になるな、」
「何故、自分にそんな提案を?」
「貴様は我とこの夢の世界をリンクさせた、この魔王の夢の世界とだぞ?普通はありえない、余程運が良いか、もしくは我との魔力の波長に適性があるかのどちらかだろう、無論我は後者と踏んでいる。」
「私が魔王様と魔力適性がある、ですか?」
「そうだ、だから我は提案しているのだ、もちろんそれ相応の対価を支払ってもらうがな?」
「対価、ですか、一体どんな?」
「簡単なことよ、まず1つ、我の跡を継いで欲しい、時間はいくらかかってもよい、我は貴様が魔王になって欲しいのだ」
....この魔王は何を言っているんだ?
「自分がですか?!無理無理!無理ですよ!」
「話は最後まで聞け」
「2つ目は流石にそのまま異世界に転生となると貴様の今後が危ぶまれるのでな、我のスキルを貴様に託す。」
それって死ぬって事じゃ?!
「!!でもそんなことをすれば!魔王様は!、」
「我の命などもって数ヶ月しか持たない、我の身体のことは1番よく分かっておる、それにな、夢の世界だとこうして若かりし頃に見た目を変えられるのだからこれが便利でな、」
「そう....だったのですね、」
「うむ、だが今の貴様ではスキルは一部しか使えない点には注意しろ、貴様が強くなるにつれて使えるようになるからその点は安心して良い。」
「そして最後に、我ができなかったことを貴様が代わりに果たして欲しい。」
「魔王様ができなかったこと?」
世界征服とか人類撲滅とか....かな、
「我は、夢見ておるのだ、人間と魔族が平和に暮らしておる所を」
「....魔王なのにですか?」
「うむ、昔我は人間を憎むべき対象としてみていた、
だがつい最近になって人間と争っても何も生まれぬ故平和に暮らしたいと思ったのだが、その時には我は歳を取り過ぎた、だから我にはできなかった事....貴様ならできると思った」
「.......どうしてそこまで....」
「決まっておろう、我が魔王だからだ、」
笑みを浮かべていた魔王、その瞳は真っ直ぐと自分を見ていた。
「そんな顔をされたら、断ることが出来ないじゃないですか、」
「最後にもう一度問う、我の跡を継ぐ気はないか?」
私には恋人はいない、親は先に旅立たれてしまい 、
もうこの世界に未練なんてものは無かった、
それに、魔王様の跡を継ぐという言葉が、とても良い響きで、断る理由なんてなかった。
「はい....自分に出来るかは分かりません、ですが!自分なりに努力したいと思います!」
「うむ。感謝する!」
そう言い深々とお辞儀をする
「や、やめてください!魔王様!」
「む、そうか?」
元の姿勢にもどる。
ふぅ、心臓に悪い....
「....そろそろ時間だな、では、我も行くとするか」
「.......」
「手を出せ、貴様に我の力を渡そう、」
言われるがまま私は魔王様の手の上に置いた
赤紫の炎が私の身体の隅から隅へと行き渡る感覚が伝わる
暖かくて冷たい、そんな感じだった。
「魔王様!」
少しずつ消えゆく魔王
「ん?」
「最後に、その、言いにくいのですが、」
「?」
「名前を、聞いても、良いでしょうか?」
「....くくく、ははは!我の名はレイハルド、魔王レイハルドだ! 最後まで我を面白がせるとは、大した奴よ。」
「レイハルド....絶対忘れません!!」
「ああ、忘れるでないぞ!」
静かに消えていく魔王、その顔はとても不気味な笑みを浮かべていたが、私には嬉しそうな悲しそうな笑みを浮かべていた。