第3章〜エルフの街~#1
「やっぱり馬車ってお尻が痛くなりますね」
「そうかしら?イヴァンちゃんって馬車とか乗ったことないの?」
「初めて乗りました・・」
「それはたいへん!早くあたしの膝の上に」
「結構です!!」
今、俺と師匠は聖院国ロキシマの中心街へ向かうため馬車に乗っている
「イヴァンちゃん!外みてみなさい!外!」
イヴァンは呆れた顔で師匠がみている方向を見る
「師匠・・・子供じゃないんですからそんなにはしゃがないでおおおおおおおおおおおお!」
そこには大きな大きな大木!まるでゲームやおとぎ話に出てくる木じゃないか!!
「ついたわよぉ!ここが聖院国ロキシマの中心街!エルフの都”フル―エの街よ!」
ここまで4日かけてきた甲斐があった!すんげええええ!
ーーーーーー「そういえば泊まるところって決めてるんですか?」
馬車から降りた俺と師匠は繁華街の方まで歩いてきた
見たこともないお店がたくさんあり、どれもこれも俺の心をくすぶられるものばかりある!
武器屋に防具屋、アクセサリー屋に八百屋、中でも気になるのは食べ物屋!
見たことない食べ物ばかり!
「もちろんよ、きっとイヴァンちゃんが気に入ること間違いなしだから!まずは荷物を置くために
宿へ行きましょう」
「確かにそうですね、ところで師匠質問なんですが」
「何かしら?」
師匠をまじまじと眺める
「そのたくさんの荷物、何が入ってるんですか?」
両手には大きな風呂敷に包まれた荷物、そしてそれは背中にもある
「これの事?化粧道具でしょ?美肌に効く薬瓶でしょ?泥パックに除毛薬それから・・・」
「いやそんなにいらないですって」
「いいじゃない!これが女のたしなみってやつよ」
「…まあそうゆうことにしときますよ」
「ありがと♡それじゃあ宿まで案内するわね」
ーーーー「師匠、あれって」
宿に向かう中俺はある光景を見た
「奴隷ね」
師匠は何の迷いもなくはっきりと言った
奴隷・・・この世界にも漫画やアニメで言う奴隷が実在するとは思わなかった
「ほかの国では奴隷制度は撤廃されてて、重い罪になるように改定したのだけれど、なぜかこの国では改定されていないのよねぇ」
目を凝らして見ると足には逃げられないように拘束具がつけられており、中には俺と同じ歳の女の子も見える
「本当にくそですね・・・」
「そう?あたしはそうは思わないわ、」
「どうしてですか?」
「確かに奴隷になったらどんな目に遭うのかなんて想像つくわ、でもね、周りを見てみなさい」
俺は師匠が言うように周りを見渡した
「・・・・みんな笑顔です」
「そう、みんな眼中にないのよ、自分が不幸になってるわけでも不利益になってるわけでもないの
イヴァンちゃんは優しい心の持ち主だからあの子たちを助けたいっていう気持ちでいっぱいだと思うわ
でもね、助けて、その後どうするつもり?」
「・・・・・」
何も思い浮かばなかった、確かに仮に助けたとして、その後どうする、飢え死にするのがおちだとしか考えられない、
俺と師匠の目の前で奴隷の少女が倒れた、”ぐううう”という音が少女のおなかから聞こえた
「あ・・・」
助けようと思っているのに体が動かない、なんで動かないのか考えている間に師匠が動いた
「お嬢ちゃん、大丈夫かしら」
手を差し伸べた師匠だが少女は自分で起き上がり小さな声で「大丈夫です」と答えた
そしてまた「ぐううう」とおなかを鳴らした少女
「このパンあげるからあのおじちゃんに見つからないように食べなさい」
おじちゃんというのはさっき少女の前にいた人の事だろう
「ありがとうございます、ですが気持ちだけで十分です」
少女は師匠のパンを貰わずに走り去っていった
この時師匠の顔はとても悲しい顔をしていた
「師匠・・」
「なんであの子はパンを貰わなかったかわかる?」
「え?」
わからない、お腹が空いているのに・・・
「あの子はね、あたしのためを思ってなのよ」
「この国はね、奴隷に食物を与えると罰則を与えられるの、あの子はそれをわかってあたしのパンを受け取らなかったのよ」
「・・・・」
「さっ!しんみりしてるのもこれくらいにしましょう!もう少しで宿につくから!楽しみにしてなさぁい」
「はい・・・」
師匠は強いな・・・
俺が魔王になったら真っ先にこの国を変えよう、そう決断した