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勇者召喚

 記憶を辿る。確か俺は……学校帰りで……師匠の所へ行こうとして……そうだ。歩いている途中、急に足元に魔法陣が現れて…………其処から今、此処にいる。


 服装は制服のままだ。身体に異常はない。


 魔法陣に勇者と呼ぶ少女。


 夢か? いや違う。さっきの吐き気はかなりリアルだったし、いつもの夢の感覚とは違う。


 …………どうやら俺は、勇者召還されてしまったようだ。


 最近、誰かさんのせいで異世界ファンタジーを読むようになったのでギリ理解できた。


「勇者様が二人っ?」


 金髪の少女が驚いたように言う。


 俺の知識がどこまで正しいか分からないが、確かによくあるテンプレな勇者召還だったら一人か四人が定番だろう。しかし今、魔法陣の上には俺と、金髪の少女をガン見しているコイツがいる。本来一人で召還されるのならば、この状況はさぞかし不思議だろう。


 と言うか、ガン見し過ぎだろ。確かに美人だけどさぁ。よくこの状況でゲスい顔ができるな。流石真正のクズ。


「こっ此方について来て下さい」


 金髪の少女がそう言うので、取り敢えずついて行く事にした。


 道中、幾つかの説明をされたのでざっくりとまとめると、


1.此処は女神サルーラが作った別の世界で、勇者召還されてしまった事。

2.この国の名前はサルディローリア王国といい、金髪の少女はこの国の第一王女で名前はワルイーナ・ベル・サルディローリアだという事。

3.勇者召還されてしまったら帰れないと言う事。

4.勇者が同時に二人召還されるのは初めてなので取り敢えず、ステータスを確認したいという事。

5.今は、鑑定石のある鑑定の間に向かっている事。


 三番は、何となく分かっていたが実際になってみるとなかなか理不尽だ。


 今師匠は俺が来なくてさぞかしイラついているだろう。で、そのイラつきを全て楓にぶつける未来まで見える……ハァ……。


 頑張れ! 楓!


 ………………………………………。


 ……………………。


「此方が鑑定の間になりますわ」


 扉が開かれると、複雑な魔法陣が刻まれ、ルビーのような赤い輝きを放ち、宙に浮かんでいる石があった。


 その石に刻まれた魔法陣によって放ったれた光が、部屋中の壁一面に模様を写し出している。


 その光景は、とても神々しく美しかったが、何処か恐ろしさを孕んでいるように感じさせる物だった。


「うわ、すっげぇ〜…」


 今まで一言も発さず、ニヤニヤしていただけのコイツでさえ驚く物だったらしい。


「それでは、鑑定を始めたいと思いますわ。まず此方の台にお立ち下さい」


 俺は言われた通りに台に立つ。


「それでは鑑定させて頂きます」


 ワルイーナ姫が鑑定石に触れると魔法陣が輝き始めた。空中に文字が浮かび上がる。


 ☆

 (はざま) 星空(せいあ)   職業 巻き込まれた一般人(異世界人)

        魔力 100

        スキル 鑑定 言語翻訳 空間魔法 勇者の証(劣化版)


 ☆

 祐希(ゆうき) 雄也(ゆうや)   職業 召喚勇者(異世界人)

         魔力 1,000

         スキル 鑑定 言語翻訳 炎魔法 水魔法 風魔法 土魔法 神聖魔法 その他全派生魔法 聖剣術 勇者の証


 …………………。


 どう見ても俺がハズレじゃないか。というか何だ、劣化版て。勇者に劣化版なんてあっていいわけ?


 何故コイツがこんなチート能力を…………救えるものも救えなくなるぞ…………。


 ハァ……この国終わったな。


「えーっと、ユウキ様が勇者のようですわね」


「ハヒァイッ」


 祐希が挙動不審な動きをしながら返事をする。


「今から王座の間に向かいこの国の王に会って頂きます。そこでこの国の現状を説明致しますわ。間様も異世界人であり、私達の都合に巻き込んでしまった責任を取るため是非ご同行をお願い致しますわ」


 おっ、意外とまとも。てっきり今から城を出ていけ~とでも言われるのかと思っていたのに。いや、さすがにそれはバカにし過ぎてるか。


「では、此方に」


 ………………………………………。


 ……………………。


 王座の間にはとても肥えた男が王座に腰掛けていた。コイツが国王だろう。正直、どうやったらこの男からこんな美しい王女が産まれるのか謎だ。傲慢な雰囲気がにじみ出ている。着飾ってはいるが、汗と脂で汚らしい。


 王がこの国の現状を説明してくれた。曰わく、


1.この国は今魔族の国に攻められている。

2.平和を守るため勇者に協力してほしい。

3.帰還する方法は研究しているので少し待っていてほしいが、その間衣食住は保証する。


 結論。 ………………早く此処を離れたい。


 ………決して王の気持ち悪さで決めつけた訳ではない。


 理由は幾つかある。


 一つ目は、余り王や王女から緊迫した様子が感じられない事。多分そこまで危機が迫っている訳では無いのだろう。


 二つ目、俺はただの巻き込まれた一般人なので、助ける義理はない事。


 三つ目、これが一番重要。このクソ野郎の側に長く居るのは勘弁してほしいと言う事。感情のコントロールを常にするのは流石に無理がある。


 だから面倒くさい。早く此処を離れようと言う結論に至った。


 その為、俺は王に一つ提案をした。


「すみません。一つだけ提案させて頂いても宜しいでしょうか?」


「よいだろう」


「俺はこの国には詳しく無いため三日ほど、案内人をつけてもらっても宜しいでしょうか? そして職が見つかるまでの間生活できる、そうですねぇ、二カ月分のお金を頂ければ有り難いのですが」


 正直この案が通らないとかなりキツい。


「ふむ、まあ良いだろう。最初の三日間はこの城で過ごすといい。案内は……そうだな。ルチア、お前に任せる」 


「はい、かしこまりました……」


 前に出て来たのは、黒髪の碧眼で、シンプルなオフショルダーの黒のドレスにブランケットを羽織ったとても美しい少女だ。


 先ほどの姫と比べると、落ち着きがあってサラサラな髪に清楚さを感じる。


「私はルチア・ルイーズ・サルディローリアです。どうぞルチアとお呼び下さい」


 ルチアさんは深々と美しい仕草で礼をした。


「それでは、私も執務で忙しいのでな。これで終わりにさせて貰おう」


 そう言って王は去っていった。


 自分が召喚しておいて忙しいはないだろ。


 その後、祐希はワルイーナ姫に案内され何処かへ去っていった。


「それでは、案内させて頂きます。疑問などあればどうぞお気軽にご質問下さい。」


 俺がここで出会った少女ルチアとも旅をする事になるのは、しばらく後の話だ。



 ◇



 その頃、師匠達は……


「遅い! 何してるんだ星空は! これじゃ仕事が溜まる一方じゃないか!」


「楓! お前弟子だろ。何か聞いてないか!?」


 九鬼さんが恐ろしい目で此方を見て来る。


「ヒイィァ。スンマセン、何も聞いてないですぅ~」


「チッこの役立たず。お前が代わりに仕事しな!」


「それだけは勘弁してくだせぇ~」


 九鬼さんが、ガシガシと苛立ちを露わにしながら蹴ってくる。


「あっ兄貴ぃ~早く帰ってきてくだせぇ~」

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