妄想タイムスリップ
会いたいって思うこともいつの間にか当たり前になっていて、それでも行動に移せない私は、何もできないまま大人になって、気づいたら30歳も目の前に近づいていた。
自分でも、なんてしつこくて情けないと悲しくもあり、そのしつこさを自分でも気持ち悪く思う。
なんといっても十年だ。
十年なんて、小学校一年生の子が軽く卒業して、思春期なんて当の昔に入って、進んだ子ならキスだってしちゃったりしたりしちゃう、そんな年月。
しかもその間、夜寝る前になれば、
「あの時彼にこう言ってたらああなって、そうなったらこうなって、さらにああなって―。」
なんてありもしない、しかも過去のことを妄想するという、後ろ向きどころか後ろ向きのままバックで現在を歩いている状態だ。
せめて誰かと付き合ってみればと考えて、何人かとお付き合いもしたが、面倒くさがりな性格が災いして結局長くは続かなかった。
友人からは「本当に好きなら面倒くさいなんてこと思いもしない」なんて自分自身が一番分かっていることを、もっともらしく言われる始末。
分かっている。
電話も面倒くさい、連絡も頻回にいらない。
あれもいや、これもいや、ここがいや。
もっともらしい理由の裏には、結局誰かの影があるのだ。
そう、彼に会いたいのだ。
彼に会って、あれもしたいし、これもしたい。
結局は、私の後ろ向き思考が全てを邪魔をしているのだ。
別にその当時彼と私は付き合っていたわけではなくて、さらに言うと、彼を好きだったかどうかも定かではない。
ただ、彼が私に興味があるそぶりを見せたのだ。
いや、正確に言うと、そぶりをされたように思った、だけ。
あくまでも「そぶり」であって、さらに純粋だったあの頃の私がそう「思った」もしくは「思いこんだ」、だけ。
全て、想像の上に想像が成り立っている私の思いなのだ。
けれど、それが忘れられない思いとして、私から離れていかないのだ。
本当に健全じゃない。
なのになぜこんなに逃れられないでいるのか、私にも分からない。
それでもまた夜が来て、眠りの前には、あの頃を思い出して
「あの時、こう言われたからこう言って、こう言ったら、こういう風になって、そうしたら―。」
と想像するのだろう。
ああ、情けない。
本当に、健全じゃない。
なのに、会いたい。
彼に、会いたい。