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成長の兆し

「グヒヒ……JKダ、リアルJKガ眼前ニオワスゾ、オ前等……!!」


「今ココニ、飛ビッキリノ獣性ヲ滴リ落トセ……!!」


「豚とJKガ身体的ニ交ワル時、俺達専属ノ主従契約ガ、今ココカラ始マルッ――!!」


 そう口々に何やら言いながら、棍棒を手にしたオーク達がこちらに突進しかねない勢いで迫ってくる。


 どうやらコイツ等は、オボロからそこはかとなくJKっぽさを感じて、ここに引き寄せられたようだ。


 見る限り、奴等のレベルは23〜24。


 単調な物理攻撃で攻めてくると思うが初めて遭遇する敵だけに、あまり油断し過ぎない方が良いだろう。


 ゆえに俺は、オーク達を食い止めるために、ヒサヒデとともにいっせいに駆け出す――!!


「奴等が何かするよりも先に、ここで仕留めるぞ!ヒサヒデッ!!」


「ピ、ピ、ピ〜〜〜ッス!!」


 互いに呼応しながら、オーク達に挑もうとした――その瞬間だった。


 ボコボコッ……と、地面が盛り上がり始めたかと思うと、地中から突如ウネウネとした物体が飛び出してきたのだ。


 その正体は当然、俺達が仲間にしたばかりの"線引きミミズ"だった。


 自分達の前に現れた"線引きミミズ"の登場を前に、驚愕の表情とともに叫び声を上げるオーク達。


「クソッ!ナンデ、イキナリ"線引きミミズ"ガ、コノタイミングデ出テキヤガルッ!?」


「分カラネェ、分カラネェガ……コノママダト、俺達ハ……ッ!?」


 突進してきたオーク達は、突然現れて地面に寝そべる形となった線引きミミズを前に勢いを落とす事が出来ずに、線引きミミズの身体に躓き盛大に転倒する事になった。


 かくいう俺達も、全く予想していなかった事態だけに、思考が空白状態でどうしたら良いのか一瞬迷う。


 それと同時に、


『線引きミミズが不快と感じて分裂し過ぎた結果、収拾がつかなくなるかもしれない』


 という懸念が浮かんだりしたが、線引きミミズはウネウネと嬉しそうに身体を揺らしている辺り、このオーク達の足止めで活躍出来た事が嬉しいようだ。


 ひとまず安心した俺は、慌ながらも瞬時に次の行動を起こす事にする。


「今の残りの"BE-POP"だとキツいかもしれないが……ここで一気にキメるッ!!」


 そう口にしながら、俺はこれまでの旅路に想いを馳せる――!!



 ――仲間になった当初から、オールラウンダーな活躍を発揮するヒサヒデ。


 ――現在このパーティー内で、間違いなく最強であるオボロ。


 ――この中でレベルは一番低いが、素の能力が強すぎる線引きミミズ。



 これらの事からもたらされる結論は、ただ一つ。



 ……このままだと、最弱職である山賊()が皆から舐められるようになるかもしれない――!!



 そうなる前に、実力は変えられずとも華々しい印象を皆に植えつける事によって、皆の俺への認識を『いざとなったら、頼れる裏方』くらいには変化させる事が出来るかもしれない。


 そのためにも、俺は圧倒的な戦果を上げようとアイテムボックスから『マイク』を取り出し、一人で10体近くのオークを倒す事を決意する――!!


「聴き惚れろ!――スキル:【魂ごと焼き討ちする略奪劇】ッ!!」





♪必殺パンチが 目に染みる


 行け!ダイナソー


 ヤッター、ダイナソー!!(ヤッター!)





 おっきな恐竜とエッチなお姉さん


 ちびっこならもちろん 恐竜の方が大好きさ!


 魂のおっきな恐竜を呼び起こしながら


 エッチなお姉さんに立ち向かえ


 大人は色々うるさいけれど


 ときには子供が立ち向かっても良いんだ気にしない


 でも、友達をぞろぞろ引き連れるような真似はするなよ約束だ





 そんな事を考えながら 今日も一日が終わっていく


 俺の人生はなんだったんだろう


 今なら間違いなくお姉さんの方を選ぶに決まってる


 必殺パンチが目に染みる


 行け、ダイナソー


 ヤッター、ダイナソー……!!♪





 熱血感溢れる序盤と怒涛の展開からの、哀愁漂う衝撃のラスト。


 これが、現在俺が歌える持ち曲の中でも最上位に属するに違いない名曲『ダイナソー!ヤッター、ダイナソー!!』だった。


 俺から放たれる圧倒的な熱唱を前に、オーク達の魂が瞬時に丸焼き状態になっていく――!!


「……何カ知ランケド、トニカクシケタワ……」


「イクラ見栄エガ良イJKダッタトシテモ、コンナイモッポイ奴トツルンデルトカ、チョットナイヨナ……!!」


 ……事もなく、そんな冷静ともいえる感情が全くうかがえない口調と声音でオーク達が呟く。


 奴等はそのままノソリ、と立ち上がりながらこちらに向かってくるでもなく、それどころか無防備ともいえる背中をこちらに見せながら、そのまま立ち去っていく……。


「ハァ~、本当ニ時間ヲ無駄ニシタゼ……!!」


「本当、本当。『ナンダッタンダロウ……』トカ言イタイノハ、コッチダッテーノ!」


 そんな事を言いながら、こちらを振り返りもしないオーク達。


 ……何故だ、何の犠牲も出さずに奴等を追い払ったはずなのに、全然勝った気がしない……!!


 そんな事を考えていた矢先だった。


「何よ、アイツ等!!リューキだけならいざ知れず、アタシに勝手にJKとか属性を押し付けておきながら、勝手に査定して絶望するとか人の事馬鹿にし過ぎでしょ!!今からでも野衾使ってアイツ等を……って、リューキ、なんかアッチにいるよ?」


 声をかけてきたオボロの言う方へ視線を向けると、そこには、さっきの奴等の仲間である一匹のオークがこちらを見ながら佇んでいた。


 奴は笑顔を浮かべながら、こちらに向かって拍手をしながら近づいてくる。


 そうして、こちらの前に来ながら警戒する俺達に向かって、オークが話を切り出してきた。



「仲間達カラハ不評ダッタヨウダガ、俺、オ前ノ歌凄ク響イタ。俺、一段階上ノグレードノ存在ニ為ルタメニ、オ前ノ仲間ニ加エサセテ欲シイ……!!」



「マ、マジか……!!俺の歌を分かってくれる奴がいるなんて……!!」


 今まで不発、不発ばかりで自身をなくしかけていた俺の前に現れた、初めてのファン一号。


 俺は歓喜しながらも、今度はオボロに意見を聞いて、苦笑する彼女からこのオークを仲間にする許可をもらった。



『オークが、貴方の山賊団に入りたがっています。受け入れますか?


→はい

 いいえ 』



 出てきたウィンドウに、当然の如く「はい」を選ぶ俺。


『オークが、貴方の山賊団に加入しました!』


 これまでとは違う形での新たな仲間の獲得に、思わず笑みがこぼれる俺。


 そんな俺に、これまで事態を静観していたラプラプ王が、話しかけてくる。


「見事なものだな、リューキよ!お前から話に聞いていてもにわかには信じがたい気持ちもあったのだが、実際にお前と魔物達の巧みな連携、そして、魔物達を殺さずして旗下に加える姿を見せられると、実感せざるを得ないな……!!これが、“山賊”という存在の力の一端だというのだから、まさに我は心強いぞ、リューキよ!!」


 ……そっか、俺って、結構特別な存在だったのか……!!


 ラプラプ王からの言葉を聞いて、先程までの卑屈ともいえる心境から一転、単純なまでに舞い上がる俺。


 気を良くした俺は、ラプラプ王に対して、思わず軽口を叩いてしまっていた。


「良かったら、ラプラプ王も護衛対象なんて形じゃなくて、俺の山賊団に加入してみますか?……な~んて」


 言ってから、流石に不敬過ぎたか?と後悔する俺。


 これはラプラプ王も憤慨するかと思ったが……彼は、それとは全く異なる驚いた表情を浮かべていた。


 見れば、ラプラプ王の眼前にメッセージウィンドウが出現している。


 “プレイヤー”じゃない“転倒者”でも、こういうシステムを使えるんだ……アレ?でも、今何の為に出てきたんだ?


 そんな事を考えているうちに、ラプラプ王が戸惑ったような表情でこちらに訊ねてくる。


「リューキよ、我はこの世界に来て初めてこのような板を見るのだが……これも、お前の“山賊”としての能力なのか?」


 そう口にするラプラプ王のメッセージウィンドウを覗き込んだ俺達は、彼と同様に驚愕もとい困惑の表情を浮かべることとなる。


 そこには、こう記されていた……。





「リューキが、貴方を自身の山賊団に入らないかと勧誘しています。これを受け入れますか?


→はい

 いいえ 」

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおお、リューキの山賊としての成長がああ! これは一気に山賊「団」へと近付いていく感じがしてテンションが上がりますなウヒョー! ……そしてこのオークどもは、タピオカを襲撃したのがインテリ…
[良い点] ををををっ!? リューキ、実は、そんなスキルが……! これはすごい! 次第に隠れた実力が明らかになってきてますね!
[良い点] 前話の八刀皿さんの感想の印象の影響もあってか、 「オボロはJKじゃないし、パンゲア読んでるつもりが、間違ってタピオカ学園にアクセスしてしまった」 と、一瞬混乱してしまいました! そういう意…
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