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護衛商人

 こうして、『ブライラ』側の“転倒者”であるラプラプ王とともに、ヘンゼルさん達のもとに帰還する事になった俺達一行。


 若干、外に出る前から様子が少しおかしかったキキーモラさんの事が心配ではあるが、実際にあそこに留まったままで事態が好転するはずなどないので、俺達は自分達に出来る事をやるしかないのだと結論づけた。


 そういう訳で行動をともにすることになった俺達は、無言のままというのも気まずいため、歴史的有名人であるラプラプ王と自然雑談をする事になった。


「ラプラプ王は、俺達と会うまでに結構力を使い果たしていたみたいですけど……ヘンゼルさん達の話だと確か異種族達の大規模侵攻を食い止めに行っていたんですよね?」


 『ブライラ』に奇襲しに来たライカ率いる少数精鋭部隊とは別に展開されていた、異種族達による大規模な侵攻作戦。


 それをたった一人で迎撃しに行ったのが、ラプラプ王なのだという。


 いくら“転倒者”とはいえ、普通ならばにわかには信じがたい話だが、ラプラプ王のゲリラ戦術と巧みな戦略、何より疑似的とはいえ数多の部下達を作り出す“固有転技ユニークスキル”があれば、ラプラプ王ならばそれが可能かもしれない……と、俺は感じていた。


「このシスタイガーの獣人やエルフといった者達は、“マヤウェル”という神獣の加護を受けている事もあってか、魔物達は神獣に恐れをなしてか彼女達異種族を比較的襲わない傾向にあるらしい。ゆえに、この大森林で生きる者達はあまり争うこともないため、必然的にレベルとやらはそれほど高くなく、我の“固有転技ユニークスキル”で生み出した我が屈強たる勇士達によって、なんとか迎撃する事が出来た」


 確かにラプラプ王の言う通り、『ブライラ』に来た獣人やエルフのお姉さん達は、最大レベルが35であとは20レベル台だったし、それほど爆発的に強いって感じじゃなかったしな。


 それにしても、魔物達は基本異種族を襲わないのか。


 この森って、男も女も関係なくエチチッ!な異種族やら魔物達に狙われるとんでもない場所だと思っていたけど、ラプラプ王の話を聞いていると、プレイヤーと関わりを持たなければ、この森林で生きている存在は基本的に穏やかに生活しているのかもしれないな……。。


 思考が寄り道し始めていた俺に対して、ラプラプ王が話を続ける。


「……ただ、個々の力はともかく、数の力は如何ともしがたかった。異種族達もしばらくは動けないはずだが、我はあの戦闘の際に使った“固有転技ユニークスキル”の影響によって、大分この世界に存在するための力を消費してしまっている。……先程は目的地が同じだからと誘ったが、実を言うとあれ以上戦う事はおろか、我は現在歩くのもやっとな有り様な状態ゆえ、お前達に護衛代わりを任せようとしたのである……!!」


「えぇっ!?アナタ、そんなにヤバい状態だったの!!」


 それまで大人しく話を聞いていたオボロだったが、自分の責任が発生しそうな話題に移行して、慌てたように声を上げる。


 まぁ、これに関しては最初に警戒心マックスで“固有転技”を展開しながら、俺達に接触してきたラプラプ王の自己責任でもあると思うが……。


 でもそれも元はと言えば、俺達の面子は俺達自身が思うよりも異質であったため、不審な相手を『ブライラ』にいる仲間達のもとへ行かせまいとラプラプ王も必死だったのかもしれない。


 だとすると、流石に強気に出るのはマズいよな……。


 幸いにもラプラプ王はオボロの発言に対して怒ったりするでもなく、


「ウム。もう一人たりとも現身を呼び出すのは難しい状態ゆえ、我の分までお前達の働きには期待しているぞ」


 と笑いながら答えてくれた。


 とりあえず戦闘が起きた事を不問にしてもらえそうな事に、ほっと胸を撫でおろす俺達は、ラプラプ王の言うとおり彼の護衛を引き受ける事にした。


 ――まぁ、このまませっかく会う事が出来たラプラプ王を死なせるようなことになれば、後味が悪いとかもあるけど、何より、俺が知る限り最強クラスのラプラプ王という戦力が減ることによって、今度こそ『ブライラ』側と異種族側との戦力差が絶望的なものになるかもしれない。


 それはつまり、キキーモラさんが戻ってくるまで、『ブライラ』に身を寄せる事になる俺達にとっても他人事じゃないはずだ。


 ゆえに、現在全く戦う事が出来ないラプラプ王を、なんとか無事に『ブライラ』まで送り届ける……んだが、今の俺達のしてる事って、どちらかと言うと山賊達に襲撃される商人みたいだよな……。


 そんなとりとめのない事を考えていた、矢先だった。


「……みんな、どうやらアタシ達にお客さんみたい!」


 【獣性感知】で敵を見つけたオボロが、俺達に向けてそう告げる。


 見ればオボロの言う通り、俺達の前からは十体ほどのオーク達がこちらに向けて下卑た笑みを浮かべていた。


 俺は拳を構えながら、仲間達に呼びかける。


「護衛対象のラプラプ王もいる事だし、今回オボロは味方も巻き込みかねない【野衾・極】の使用はなし!!――みんなで協力して、アイツ等を迅速に倒すぞ!!」


「ピ、ピ、ピ~ス!!」


「…………(もぞもぞ)」


「もぅ!そんな言い方しなくても良いじゃん!……こうなったら、この鬱憤まとめてアイツ等全員、リューキだと思って返り討ちにしちゃる!」


「物騒な事言うなよ!ごめんなさい!!」


 そんなやり取りをしながら、俺達は敵の集団へと対峙する――!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ……はっ!? あのオークたちはもしや、なんか少々強引な手段で女子高生をアイドルに勧誘しようとしていたヤツらでは……!?(笑) てゆーか、リューキの武器はもう拳で確定なんすかね? アリっち…
[一言] >「もぅ!そんな言い方しなくても良いじゃん!……こうなったら、この鬱憤まとめてアイツ等全員、リューキだと思って返り討ちにしちゃる!」 >「物騒な事言うなよ!ごめんなさい!!」 この夫婦漫才感…
[良い点] ラプラプ王も転倒者だからエチチッ! な戦い方でも大丈夫ってことは、ユニークスキルで数に任せてエチチッ! なのかなぁ? とか想像してしまいました(笑) そして、商人どころか王様の護衛とは、…
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