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脱出への挑戦

 キキーモラさんの指示のもと、出口があるとされる空間の前に佇む俺達。


 オボロやキキーモラさんが心配そうに見守る中、俺は自身の両腕に“BE-POP”を込めていく――!!


「……俺がやることは変わらない。要はこじ開ける対象がラノベから、自分の未来に変わっただけだぁッ!!」


 そう言いながら、俺はさらに腕に力を入れて、空間を必死にこじ開けようと試みる。


「ヌ、グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


 とてつもなく硬い、というか掴みどころのない重さのようなものがズシリ、と両手にのしかかる。


 一瞬、呻き声を上げそうになるが、今自分が掴んでいるこの術式こそがここにかけられた術式とやらなのだと、確かな手ごたえを俺は感じていた。


 かつて『過激な性描写のライトノベル』に挑んだときのように、力技で強引に無理な事を為そうとしているからか“BE-POP”を込めた手から雷光が迸り、反動によってHPが急激に減り始めていく――。


「グ、ガハァ……ッ!!」


 それでも――いや、だからこそ、すでにこれほど力を消耗しているからこそ、途中で諦めるわけにはいかない、とさらに全力でこじ開けようとするのとほぼ同時だった。


「もう辞めてください、リューキ様!!――これ以上、無理をなされたら流石に死んでしまいます!」


 そんなキキーモラさんの言葉が聞こえたかと思うと、後ろからガッと強い力で身体を引き離されていた。


「……ヒサヒデ、か?」


「……ピース」


 見上げる形になった俺に対して、ヒサヒデがゆっくりと頷く。


 そこから周囲を見てみれば、今のヒサヒデ同様に心配やらそういう感情が入り混じった表情をしたキキーモラさんとオボロがこちらを見つめていた。


 今の呼びかけを思い出し、自身のステータスを確認してみれば、HPも“BE-POP”も枯渇……というほどではないが、結構ギリギリのところまで減少していた。


 もしも、自覚しないままあのペースで――いや、それよりもさらに力を込めていたら、俺はあっという間に死んでいたかもしれない。


 線引きミミズの時は上手くいったとはいえ、こんな『後には退き返せないから』みたいな理由だけで無謀に突っ込んでいくやり方は、到底褒められたもんじゃないよな。


 そう自覚した俺は、みんなに向かって頭を下げる。


「すまん、みんな。何とかこの場所を脱出しようと気が逸るうちに、自分でも気づかないうちに、無茶をしていたみたいだ……なんていうか、色々含めて本当にゴメン!」


 そんな俺に対して、それぞれの言葉が返ってくる。


「まったくよ!……おかげでこっちは柄にもなく、スゴくハラハラさせられたんだから!」


「本当に今回ばかりは、あまりにも無謀でございますよ、リューキ様。……ですが、大事に至らずに本当に良かった……!!」


「ピ、ピ、ピ~~~ッス♡」


 そんな感じに心配の言葉をかけられた事に安堵する反面、そんだけ人に気を遣わせてしまった事にちょっとした居たたまれなさを感じる俺。


 羞恥心から逃げ出したい気持ちが瞬時に沸いてきたりもしたのだが、そこはキキーモラさんに腕を優しく握られながら、柔らかな彼女の胸元で【ミラクル☆ヒーリング・極】による治療を受けたことで、何とか思いとどまることが出来ていた。


 これまでの【ミラクル☆ヒーリング】とは比較にならない回復量を誇るこの新呪文のおかげで、俺はHPを全回復したが、“BE-POP”の方はそうもいかない。


 普通の戦闘なら、特にスキルとか使わなくても問題ないかもしれないが……。


 ここは、何が起きるか分からない“シスタイガー大森林”。


 いざという時のために、これ以上の“BE-POP”の消耗は避けたいところだ。


 とりあえず、今回は上手く行かなかった事を正直に仲間達へと伝える事にした。


「みんな、すまない……今の俺の“BE-POP”では、ここまで到達出来ても肝心の術式を突破するのは難しいみたいだ。付き合ってもらってこんな結果になったのは悪いけど、最低限の現状の確認が出来たってことで、ここは一旦『ブライラ』の方に帰らないか?」


 幸いにも、ヘンゼルさんからは『ブライラ』を出る前に渡された光る小石があり、これが『ブライラ』までの比較的安全な帰り道を指し示してくれるようになっているらしい。


 ヘンゼルさん曰く、


『本当なら、こんな大森林の中じゃなくて、外の拠点に導けたら一番なんだろうけど……僕は、突然このシスタイガーという大森林の中に転がり落ちてきた“転倒者”だから、外の事は全く分からないんだ』


 と申し訳なさそうに言っていたが、これは十分すぎる代物である。


 この石は他のプレイヤー達にも持たせているらしく、そのおかげでプレイヤー達の生還率も上がっているらしい。(ロクローが獣人と遭遇したように、絶対とはいえないようだが……)


 結構道を覚えていたヒサヒデもいる事だし、引き返す分には問題ないはず。


 だが、ここで異論をはさんだのは、意外な事にキキーモラさんだった。


 彼女は意を決した表情とともに、俺達に告げる。


「リューキ様、この出口を通れないのは、リューキ様とオボロ様のような“プレイヤー”と呼ばれる方達であることは間違いないようです。……ゆえに、リューキ様達から御許可を頂けるのなら、この出口を通過できる“魔物”である私が単身で、外へと移動してみようかと考えております」

※性質・能力などの関係から、シスタイガー大森林の神獣の名前を『マヤウェル』に変更しました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすがに、強引な手段はムリでしたな……。 というか、これによってまた新たなBE-POPの使い方に目覚めるかとも思ったけど、それもなかったか……。 そして、キキーモラさんの単独行動……。 …
[良い点] >「……俺がやることは変わらない。要はこじ開ける対象がラノベから、自分の未来に変わっただけだぁッ!!」 ↑ 当時は「お前が読みたいだけじゃろがい!」と、結論付けてしまいましたけど、その行為…
[一言] おお! リューキが精神的に成長している……!(じんわり) そしてここにきてキキーモラさんが!? これは楽しみなんだズェ……!!
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