本領発揮!!
「そんじゃあ、今度はこっちから行かせてもらうぜッ!!」
オボロの”瘴気術”を無効化したお猿のお姉さん二人組が、反撃と言わんばかりにオボロへ殴り掛かろうとしてくる。
もしも、パーティで最強といえるオボロがやられてしまえば、残った俺達でこのお姉さん達を倒すのは絶望的となってしまう事は確実である。
そんな事態を避けるためにも、連戦覚悟で俺はスキル:【凌辱に見せかけた純愛劇】を使おうとしていた――そのときだった。
「ピ、ピ……ピ~~~ッス!!」
刹那、そのように声を上げながら3ピース・ホロウが両手を広げながら、颯爽とオボロの前に身を挺して飛び出すッ!!
ムチプリ♡お姉さん達によってほぼ同時に繰り出された拳が、3ピース・ホロウの鍛え上げられた胸板にめり込んでいく……。
ミシッ……!!という鈍い音を軋ませながら、3ピース・ホロウが短く呻き声を上げる。
それに対して、獣人のお姉さん達は攻撃が上手くいった事を喜ぶよりも、驚愕に満ちた表情を浮かべていた。
「な、なんだ……!?コイツ、魔物のくせにアタシ等の攻撃から、”プレイヤー”達を守ったってのか!!」
「てゆうか、あの変な気色悪い靄出した女の子も、アタシ達と同じ獣人なんじゃないの姉さま?……何がどうなってんのか、アタシさっぱり分かんな~~~い!!」
この二人は優れた身体能力を持っているようだが、それらでは理解出来ない現在の状況を前にして混乱しているようだった。
まぁ、彼女達の気持ちは分からないでもないが、それでも今は戦闘中に変わりはない。
迂闊にも動きを止めてしまった二人のモンキーお姉さん達に向けて、勢いよく両腕を振り下ろす――!!
「ッ!?し、しまった!!……このままだと、アタシ等二人まとめてなし崩し的に関係を結ばされちまうぞ!!」
「マ、マズイよ姉さま!!……コイツのガッシリした胸板に抱きすくめられちゃうと、アタシ、クラクラしてくる……♡」
「3ピ~~~ッス♡」
悔しそうな獣人お姉さん達とは裏腹に、自分が受けたばかりの痛みすら忘れ切ったかのような嬉しそうな声を上げながら、梟野郎が二人を抱きかかえた状態で器用に両手ピースを行う。
そして、あろうことか――いや、ある意味予想通りにコイツは俺達の前で、Shippori and the Cityな行為を二人相手におっぱじめやがったのである!!
あまりにも自然に始まった”プレイヤー”なら修正パッチ必須レベルの凶行を前に、残された俺達は誰一人として動けなくなっていた。
(パーティメンバーに欲情するような事態を防ぐために、このエリアに住んでいるムチプリ♡異種族のお姉さん達から何かインスピレーションが得られたら良いな、程度に考えていたけど……まさか、入り口付近でいきなりこんなとてつもない光景に遭遇するとは!?……す、凄すぎるッ!!)
興奮と歓喜のあまり思わず前かがみになるが、こんな状態になっても梟達に交じって4ピ~ス♡な行為どころか、自身の熱き衝動を慰める行為すら出来ない現状に激しくもどかしさを感じる俺。
それと同時に、俺の中で全く意識していなかったはずの『”修正パッチ”を手に入れたい!!』という想いが急速に膨れ上がっていく――!!
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
「リューキうるさいっ!!……てゆうか、な、ななっ……アンタ達は本当に、何してんのよ!もうっ!」
「ま、ま、まぁ……♡」
我がパーティの女性陣達も顔を真っ赤にして抗議したり、驚いた声を上げながらも、眼前で繰り広げられている痴態に釘付けになっている。
「こ、こいつぁヤバ過ぎるぜ……!!」
俺達に助けられる形になった”プレイヤー”のコイツも相変わらず立ち上がることを忘れたかのように、尻もちをついたままの状態で熱心な視線を向けていた。
そうして、3ピースホロウがお姉さん達とそういう感じの行為を終えるまで、俺達は種族や立場の違いを超えて想いを一つにしたかのように、この闘争の結末がどうなるかを固唾をのんで見届ける……。
熾烈を極める真剣勝負の結果、二人組のお姉さん達は「クッ……テメェの面は忘れねぇからな!!」とか「今度はアタシ等がもっと余裕のあるときに、楽しもうよ♪」などと捨て台詞を俺達 (というかフクロウ)に向けて吐き捨てると、すぐさま木の上にジャンプして去っていった。
戦いが終わりかける段階になってから(そういや、魔物とはいえ”修正パッチ”もない状態で、モロにそういう事しちゃってるわけだけど……大丈夫なのか?)という疑問が芽生えかけたのだが、どうやらあの縛りがあるのは”プレイヤー”のみで”魔物”である3ピースホロウも”異種族”であるお姉さん達も、決着がついてからも特に光の粒子になるようなことはなさそうだった。
それと同時に、ひとまずの脅威が去ったとはいえ、俺は大事な事を思い出していた。
(――って、いきなりこのエリアを拠点にしている”異種族”のお姉さん達に明確な敵対行為を取っちまったよ、俺達!!……これから、ここで動きづらくなること間違いなしだし、いきなり幸先悪いぞ!?)
これでは、当初オボロに説明した『このパーティメンバーの特殊性を説明すれば、”プレイヤー”達と敵対しているエルフや獣人にも受け入れてもらえるかもしれない』というこの森林に訪れた目的が、完全に瓦解する事になる。
今はまだ、先ほどまでの衝撃的な光景を前に冷静さが戻っていないようだが、このままではオボロがそのことに気づくのも時間の問題――。
その前に、何とかこの状況を打開しなくては……!!と思考を張り巡らせていた、まさにそのときだった。
「いや~……正直今でも何が起きたのか分かんないけどさ、それでも何とか助かったよ!本当にありがとな!!」
そのように俺達に声をかけてきたのは、ようやく立ち上がったプレイヤーの男だった。
これまで見せてきたのとは違う、ようやく緊張が解けたと言わんばかりの笑みを浮かべながら男が名乗り始める。
「俺の名前はロクローってんだ!……アンタ等、よく分かんない連中だけど俺の事も助けてくれたし、アイツ等とも敵対しているみたいだからさ、もしもこの”シスタイガー大森林”でどうしていくつもりか決まっていないなら、俺と一緒に”あの人”や仲間達のもとに来ないか?」
ロクロ―というプレイヤーからの、まさかの申し出。
コイツが一体どういう立場の存在なのかは分からないが、それでも、現状を打破するきっかけにはなるかもしれない。
そう判断した俺は、矢継ぎ早にオボロやキキーモラさんを説き伏せた結果、俺達はロクローのもとについていく事に決定した――。




