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パーティ壊滅の危機

 『ナハバツ』近郊で野宿した翌日、俺達は起きて早々これからの方針について話し合うことにした。


「ロクに休憩すら取れない町にこれ以上居つく必要なんてないわ。――リューキ、キキーモラさん。こうなったら、獣人とやらに偽装してこの町に夜襲を仕掛けたら、さっさと金目の物を分捕って別の町に移動しましょ!」


「待て、待て、待て~~~い!!お主、いくら何でも思い切りが良すぎやしないかい!?」


「それに……奇襲が成功したとしても、流石に私達の速度では逃げ切れないと思うのですが……」


 さらりと、問題発言を言い放ったオボロに対して、俺とキキーモラさんが期せずして感情と合理的な側面から挟む形で、彼女の凶行を食い止めようとする。


 慣れないテンションでツッコミをすることになったが、それどころじゃない。


 マリオを”瘴気術”で倒したことによる経験からくる自身の実力に対する過剰な自信、度重なる野宿による疲労が十全に癒されないことによるイライラ感、『町を襲撃する獣人と似ているから……』という理由による町民達からの不当な差別……etc.


 それらが一緒くたになって、オボロを過激な方向に駆り立てているようだった。


「む~~~!!何よ、二人とも!ノリが悪いな~……」


 俺達二人の制止に対して、オボロは非常に不服そうである。


 ……このままでは、非常にマズイ。


 こんなフラストレーション溜まりまくりのオボロと行動を共にしていては、何とかこの場を離れる事が出来たとしても、次の町に到着する前に荒ぶったオボロによって、何らかのトラブルに巻き込まれるのは明白。


 そうなったら、まだ戦えるだけのステータスと”瘴気術”という強力なスキルを持っているオボロや、回復術を持っているキキーモラさん(またもレベルが上がって、既にあらゆるステータスが俺を追い抜いている)はまだ助かるかもしれないが、俺のような最弱性能では、予期せぬトラブルに見舞われるたびに、確実に死亡するリスクが高まるのだ。


 何とか、今のオボロをどうにかしないと――そう考えていたそのときだった。


(ん?待てよ?……フラストレーション……溜まりまくり……ッ!!ま、まさか!!)


 刹那、俺は「は、はぅあ!?」と自身で思いついたアイディアに対して驚愕の声を上げる。


「何よ、リューキ……いきなり変な声なんか出したりして……何かヤバいものでもつまみ食いしてたの?」


「まぁ!それは大変です!!リューキ様、お熱はありませんか!?」


 怪訝な表情でそう語るオボロの発言を真に受けたキキーモラさんが、何を思ったのか、俺の正面に来て前髪を上げてから、自身のおでこをコツン、と俺のおでこに当ててくる――!!


 まつげなっが!


 目キラキラしていて、その溢れる魅力を前に心が吸い込まれそう!


 でもって、俺の胸に当たっている驚異(胸囲)のムニュ……ッ!とした柔らかい破壊力が凄まじ過ぎる!!


 ……俺を気遣う優しさと、正面から伝わるダイレクトな感触。


 初対面の時とは方向性が異なるが、それでも変わらぬ母性を前にして、俺はこのまま圧倒的な包容力に思考も何もかも委ねたくなる。


(――だが、否、だからこそ!……俺は、絶対にこの策を通さなきゃいけないんだッ!!)


 今までは、僅かなりと命の危険性があったから口には出来なかった。


 だが、このまま何もしなかったら、どのみち暴走しそうなオボロによってそれ以上の確率で危機に曝されることになる!!


 意を決した俺は、キキーモラさんの両肩を掴んで「きゃっ!」……なんか、キュンとした。


 とにかく引きはがすと、オボロの方を向いて、自身の想いを口にする――!!


「このまま目的地も定まっていない状態で歩き続けても、到底キリがない!――それならいっそ、俺達でこの先の”シスタイガー大森林”に打って出ないか!?」


 意思が込められた俺からの提案。


 ――そんな真剣な俺の想いを真正面から受け止めたオボロは、



「いや、アンタ”修正パッチ”とやらが欲しいだけでしょ?付き合うわけないでしょ、そんなことに」



 あろうことか、一刀のもとに斬り捨てた――!!


 早くも心が折れかかっているが、俺はさきほどの柔らかな感触を脳裏で思い描くことによって、どうにか意識を保つことが出来た。


 ――今ここで諦めたらそれこそパーティは全滅に近い状態にまで追い込まれることになる。


 そんな重責が俺の双肩にかけられるが、今の俺には勝算があった。


(俺の目的が、”修正パッチ”だと思い込んでいる……それが、浅慮たるお前の敗因だ!オボロッ!!)


 まだ、可能性はゼロじゃない。


 そんな確信とともに、俺はオボロに向けて颯爽と交渉を切り出す――!!


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラノベの主人公が時たま、ネタをぶっこんでくることはありますが、前話の、半端が許せなくてポーズを弄ったり、百合に挟まれたい妄想とか、リューキはなかなかいないタイプの主人公で好感が持てます(笑…
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