悔しさをバネに
"天空流"という武術における"八大属性"の一つ、『イキった感じの光』属性の奥義を使用したつもりで、なんとか魔物との戦闘を終えた俺。
この戦闘の戦果として、俺は"マイク"という装備品を入手したものの、これを活かせるスキルがある訳でもないため、当分は使用する機会もないはずだ。
ちなみに、今回の戦闘で俺達は、
・ヤッホー・ソルジャー
・エテキチ
・コボルト(×2)
という魔物達を退治した事によって、俺はついに!レベルアップして9レベルになる事が出来たのである!!
「あっ、私もレベル上がったー!」
「キキッ♪」
そのように嬉しそうな声を上げるオボロとキキーモラさん。
……ちなみに、オボロは出会った当初は1レベルだったのに、今や俺を追い抜かしての12レベル。
キキーモラさんも当初は5レベルだったにも関わらず、既に8レベルにまで上がっていて、俺の焦燥感は臨界点に到達しようとしていた。
……まぁ、これも全て底辺職の"山賊"固有のデメリットの一つ:『極端なまでのレベルとステータスの上がりにくさ』である。
今はかろうじて攻撃力や防御力の面で、俺の方がキキーモラさんには勝っているが(なお、オボロは既に除外)、同レベルになったら結構危なくなるかもしれない。
「前衛職に匹敵するほどの回復役、か。……ヘヘッ!キキーモラさんの将来性には、期待が高まるばかりだな!!」
「そう……」
「キキッ……」
何か痛ましいモノでも見るかのような視線をこちらに向けてくるオボロとキキーモラさん。
――やめろ。単に俺が弱すぎなんだって事くらい、自分で痛いほど分かってんだよ!!
いや、そんな俺の心情を分かってるから、二人はあえて触れないでいてくれてるのか……。
でもそれならいっそのこと、スパッと軽口言われた方がマシか?
……それされたら、今の俺の精神状態だと泣いてしまうかもしれない。
とにかく俺は、触れられたくない話題から二人の意識をそらすために、今しがた消えた魔物達の方を見ながら話を切り出す。
「今回俺達が倒したのは犬型のコボルトやら猿型のエテキチ、あと……山彦の化身のヤッホー・ソルジャーの三種類。多分あと数日は持つと思うけど、念のためにとりあえず別の奴を倒しとこっか?」
「……リューキにしては、マトモな判断じゃない。アタシは構わないけど、キキーモラさんはどうする?」
そんなオボロからの問いかけに対して、キキーモラさんが「キキッ!」と嬉しそうに了承の意思を伝える。
俺達が何故、まだ魔物を狩るかと言うと、レベルアップのため――などではなく、単純に食料を確保するためである。
プレイヤーや魔物の身体は、死亡したあとに放置したままにすると光の粒子になって消失するが、魔物の肉体などを消える前に解体すると、ドロップアイテムとは別に武器の素材や食料として活用する事が可能なのだ。
魔物を食うことに関しては、文字通り生死がかかった山に入りたての当初よりも、ある程度余裕が出てきた今の方が抵抗はあるかもしれない。
……毎日猪の肉とは言わないが、せめて犬とか猿とかじゃない、ちゃんと口に出来るもので腹を満たしたい。
顔面が明らか鳥類なキキーモラさんはともかく、イマドキ女子です♡みたいな顔と言動のくせに、他に食料がないときは平然とオボロも芋虫みたいなヤツをつまみながら、キキーモラさんと女子会?トークに花を咲かせたりするし、食事に関しては(料理は全く出来ないけど)俺がキチンと手綱を握っとかないとな!
……などと考えていた、そのときである!!
『――ッ!?』
突如、俺達の近くの茂みから、ガサッ、と何やら大きい物音が聞こえてきた。
俺達はすぐさま警戒しながら、何者かがいる茂みに向けて臨戦体勢を取る――。
「……ッ!!」
場が緊張感で、満たされる。
そんな中、再びガサッ!と大きい音がしたかと思うと、勢いよく一つの人影が飛び出してきた――!!
"BE-POP"はまだ完全に回復しきってないが、とにかく敵を攻撃する、と考えていた俺だったが、その相手の顔と格好を見てすぐさま驚きの声を上げていた。
「なっ……お、お前は!?」
そんな俺の驚愕に対して、「知り合い?」と困惑した表情をするオボロとキキーモラさん。
対する相手の人物――かつて、俺達雑魚プレイヤーを苛めてきた『肝っ玉バイプス』のギルドメンバーの一人である、超絶キョロ充な取り巻き気質のプレイヤー:マリオだった。
何があったのかマリオは、装備品も自身もボロボロになったみすぼらしい格好で、懇願するように俺達へと語りかけてきた。
「ま、待ってくれ!!……い、命だけは……何とか、俺を助けてくれッ!!」




