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"天空流"奥義――!!

 ――いつも通りの日常。かけがえのない平穏なひととき。



 そんなモノは、"山賊"である以上……いや、それ以前から俺の人生には全く縁のない存在なのだと、改めて実感させられていた。


「ちょっと、リューキ!敵がそっちに逃げてるよ!こっちは、アタシが"障気術"で抑えておくから、アンタ達はいつも通りで!」


「あぁ!任せろ!」


「キキッ!」


 そう呼びかけるオボロに俺とキキーモラさんは返事して、こちらに接近してくる敵と対峙する――!!



「ヤッホー♡」



 丸っこいというよりも、そのまま球体のような頭部にクリクリとしたつぶらな瞳が特徴的な、一見愛らしいともいえる人型の魔物:"ヤッホー・ソルジャー"。


 山彦が実体化した魔物、なのだろうか。


 まさに打てば響くような、的確かつ迅速なカウンターを得意としているが、そのため、こちらから攻撃しなければダメージを受ける事はない。


 だが、至近距離からの大声を浴びせる事によって、こちらをスタン状態にして動けなくしてくるので、そちらの厄介な攻撃には注意しなければならない。


 幸いにも、コボルト(×2)やエテキチといった打撃が得意な3体の魔物は、オボロがスキル:【障気術】を使いながら、一人で相手してくれている。


 ならば俺は、全力で集中して目の前の敵を倒すのみ――!!


 そう判断した俺は、キキーモラさんに指示を出す。


「キキーモラさん!何かあったときのために、いつでも回復出来るように待機していてくれ!」


「キキッ!」


 キキーモラさんが了承するかのように、鳴き声を出しながら頷く。


 これで万全の準備が出来た俺は、心置きなくヤッホー・ソルジャーへと疾走していく――!!


 ……ヤッホー・ソルジャーのカウンターは、およそ1.2倍のダメージをこちらに与えてくるらしい。


 そんなモノを喰らってしまえば、最弱職の"山賊"である俺は瀕死になってもおかしくはない。


 それを防ぐために、俺がすべき事はただ一つ。


「だったら、カウンターが間に合わないくらいの早くて強い一撃で、お前を倒せば良いだけだ!!――スキル!【凌辱に見せかけた純愛劇】ッ!!」


 発動とともに、俺の全身から力がみなぎってくる。


 このスキルによって、この戦闘中においてのみ、"ヤッホー・ソルジャー"限定で俺の全能力値は全て2倍となる。


 敵が慌てたように自分の口元に、両手を持ってきて大声を出そうとしているようだが、もう遅い。


 "山賊"とは思えない速さで奴の眼前まで近づいた俺は、力を込めて拳を握り締める――!!


「――"光"とはすなわち、盛大にイキった在り方なり。……喰らえ!天空流奥義:"DQN(ドキュン)突き"ッ!!」


「ッ!?ヤ、ヤホホッ!!」


 俺の拳を受けて、ヤッホー・ソルジャーが思いっきり吹き飛ぶ――!!


 そうして、地面を転がってから動かなくなり、やがて光の粒子となって消えていった。





「プフー!今の一撃で何とか出来たか〜。……てゆうか、無駄に横文字使うわ、技名が致命的にダサ過ぎだし……"天空流"なんて本当に存在するのか……?」


 今さらながら、激しくテンションがガタ落ちし始めた俺。


 こんな状態で良く【凌辱に見せかけた純愛劇】というスキルが使うだけのBE-POP"があったものだと、我ながら感心するほどである。


 そう、俺がヤッホー・ソルジャーに放ったのは、【凌辱に見せかけた純愛劇】で強化しただけの単なる拳であり、訳の分からない"天空流"とかいう武術の技なんか微塵も使っていない。


 ただ、これまでのスキルがレベルアップとは関係ない、俺自身の行動によって習得出来ているため、"BE-POP"を消費する事によって使用出来る"天空流"の奥義も、実戦中に何度も試していくうちに本当に出来るようになるかもしれない――というオボロの勧めで試してみてはいるのだが……。


 ……うん、実際に習得出来たところで、"エッチ"やら"DQN"とか言ってる技が使い物になるかは甚だ疑問である。


「コラッ、アンタまた何か失礼な事を考えてたでしょ!」


 3体の魔物達を倒し終えたオボロと背後で待機していたキキーモラさんが、俺のもとへと近づいてきた。


 内心がバレないように俺は平常心を保ちながら、「ち、ちち、ちげーし!」と、否定の言葉を口にする。


 そんな俺を訝しげに見ながらも、オボロが俺に向けて何かを差し出してくる。


「ほら、これ。さっきアンタが倒した魔物がドロップしたアイテムだけど、放置したまんまだと消えちゃうから、アタシが拾ってきてあげたし。……アタシが持ってるよりも、アンタの方が有効的に使えそうだし、絶対に失くさないでよね!」


「あぁ、あんがと……って、何じゃこりゃ?」


 オボロから俺に手渡されたアイテム――それは一本の、まごうことなき"マイク"だった。


 困惑を隠せずに、俺はオボロへと訊ねる。


「えっ、オボロ……これで、どうすりゃ良いんだ俺?」


 それに対するオボロの返答は、


「……アンタは"山賊"なんだから、そのうち必要になってくるわよ」


 という、要領を得ないモノだった。



 ……本当に実在するかも怪しい"天空流"だの、マイクが必須アイテムだの……。


 コイツの言う事を信じて、本当に大丈夫なんだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] ついにマイク登場ですね。 もしかして、NPCを出したのはこの為ですか?
2020/06/03 03:11 退会済み
管理
[良い点] モンスターのネーミングにいちいちセンスに感じます。ヤッホー♡ それにしても、【凌辱に見せかけた純愛劇】が普通に強いというか、このスキルが今のリューキにとっての生命線ですね。 序盤で重宝し…
[良い点] おおお……! ついにマイクが……ッ! これで近隣の村々を陥落させていくのですな……! …………いずれは。 この先の展開に期待大なんだズェ……!
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