迫る鋼鉄の掌
スパンキング・ゴーレムの巨大な右手が、オボロに向けて思いっきり振り下ろされる――!!
これによって、絶対絶命かと誰もが絶望的な光景を覚悟した……次の瞬間だった。
スパパン!と快音が響き渡る。
それは凄まじい速度で右手を振り下ろしたスパンキング・ゴーレムによるものに違いなかったが……何かがおかしい。
見れば、その対象となったオボロは、原形をとどめているだけでなく、「ヒンッ!」と高めの悲鳴を上げながらも無事に生きていた。
一体どういう事なんだろうか……?
そう思っている間にも、再び敵の右手が反対の手でがっしりと押さえつけているオボロに向かって再び見えない速度で振り降ろされ、それど同時に再度スパパンッ!という音とオボロの悲鳴がこの通路内を満たしていく――!!
「ぎゃ、ぎゃひ~~~っ!!こんなの、アタシのお尻が壊れちゃうよ~~~~~~~~~~ッ!!」
俺に呼びかけた時とは異なる種類の泣きそうな表情で、そのように叫ぶオボロ。
その様子を見てから、俺はようやくオボロの身に現在何が起こっているのかを理解する――!!
「ま、まさか……あのモンスターは本当にその名前通り、オボロの尻をメチャクチャに叩いている、ってのか……!?」
そんな、バカな……!?
だって、どう考えても普通に捕らえた相手をあのまま殴りつけたりした方が、甚大なダメージを与えられるって分かり切っていることなのに……!!
だが、スパンキング・ゴーレムは他のことになど目もくれぬ、と言わんばかりに、オボロの尻を苛烈に超速で叩いていく。
「ぎゃひんっ!!」
敵の攻撃を受けて、オボロが今度もあまり可愛くない感じの悲鳴を上げていく。
攻撃の印象に反して、HPはそれほど減っていないようだが、鋼鉄?らしき素材で構成されているゴーレムの掌で何度も叩かれていては、オボロの尻も持たないに違いない。
そんな俺の意図を汲み取ったかのように、ラプラプ王がヒサヒデとともに俺へと呼びかけてくる。
「リューキよ、よく分からんがひとまずオボロの命は無事だったようだが、これ以上は流石にオボロが危険だ。ここは覚悟を決めて斬り込むしかないぞ!!」
「ピ、ピ、ピ~~~ッス!!」
そんな両者に対して、俺も敵を見据えて答える。
「あぁ、幸い……と言って良いのかは分からないが、今のアイツはオボロへのスパンキング行為に夢中で俺達には全く注意を向けていないようだ。――今のうちに、一気に近づいて奴を倒すんだズェ!!」
そう言うや否や、俺達は一気に奴のもとへと駆け出していく。
狙いは当然、オボロの【野衾・極】を受けてヘコんでいる胸の部分だった。
俺達が奴の身体をよじ登っている間にも、スパンキング・ゴーレムは全くこちらに注意を向けることなく百裂尻叩きをオボロにお見舞いしていた。
「おひひぃ~~~っん!!ア、アタシ、もうダメになりゅ、かも……!!」
……アイツ、何か変なものに目覚め始めてないか?
てゆうか、そんなオボロのメスの相貌らしきものを初めて引き出したのが、こんな不感症レベルMAXな木偶の坊という事実が面白くない。
これまでに見せた事のなかった女の部分を見せ始めたオボロと、それを弄ぶが如き無機質なゴーレムへの怒り……。
それらがないまぜになった結果、俺の感情はさらに激しく燃え滾っていた。
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
勢いよく敵の窪んだ部分に向けて、天空流奥義による攻撃を放っていく俺に続くように、他の仲間達も慌てて猛攻を仕掛けていく。
一撃では潰せなかったものの、オボロのスキルが効いていたのか、俺達の攻撃によって敵の身体は盛大に後方へと倒れていった……。
「皆の者、無事か!?」
ラプラプ王が俺達へと呼びかけてくる。
なかなかの衝撃ではあったが、スパンキング・ゴーレムは後ろ向きに倒れたので俺達は何とか耐えられており、無事を伝えるためにラプラプ王へと声を張り上げて答える。
「俺は無事でーす!!ラプラプ王!」
「ピ、ピ、ピ~~~ッス!!」
続いてヒサヒデも元気よく答える。
そして、オボロは……。
「ヒィ~~~ン。……もぅ、お尻痛くてもう立てない……!!」
ゴーレムに叩かれた箇所を両手で後ろ向きに抑えながらも、とりあえず無事のようだった。
互いの無事を喜びあっていたが、ふと俺は視界の隅に何かが光っているのを見つけた。
それは衝撃で砕けたスパンキング・ゴーレムの中から覗いている大きな水晶のようなものであり、見つけた俺はそれを慎重に仲間達と取り出していく……。
素材アイテム:【スパンキング・ゴーレムの核】
スパンキング・ゴーレムを動かすために必要な中心核。
このアイテムを用いることによって、ある特殊な武器を作ることが出来るようになる。
……スパンキング・ゴーレムの核、か~……。
普通ならゴーレムの核で何か作れる!となったら、ワクワク出来るんだろうけど、コイツの特性が引き継がれたりするのか?と考えたりすると、なんか尻叩き的な事しかしない感じがして少し不安になってくるな……。
まぁ、これで何が出来るかは今のところ分からないが、ひとまず戦利品はゲットする事に成功した。
俺達はオボロを気遣いながらも、スパンキング・ゴーレムの残骸を踏み越えて先へと進んでいく――。




