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第24話

お久しぶりです。前から2カ月経ってるんで、ちょっと時系列を置いておきます。


主人公アマネが異世界に迷い込み、そこでソラというお姫様と出会って仲良くなる→連れ戻され、記憶を消される→アマネを連れ去ろうと異世界の連中がやってくるが無事追い返す。アマネの記憶が戻る→人間界と異世界が長い間対立をしていることを知らされ、なんとかしたいと思う→異世界から新たな刺客が出てきて、親友とその妹二人が連れ去られる→助けに異世界に向かう→妹を見つける→そこで人間と戦争が起こる(イマココ)


これからもテンノオトをよろしくお願いします

 夜になった。城内は昼間と打って変わって静かで穏やかだ。いつも通りの日々の空気が流れていて、とても戦争中だとは思えない。しかし窓の外を見れば、城壁の向こうでは爆炎がたしかに見える。


「………」


 アマネは玉座の間の隅っこに体育座りをして、ひたすら目を瞑って時間が過ぎるのを待っていた。もうじきフウラの言っていた作戦に入る頃なんだろう。一刻も早くこんな状況終わってしまえと願っている。何より今その渦中にいない自分が情けなかった。


「クソっ」


 東弥が舌打ちをする。通信機で交信を試みて入るが結果は芳しくないようだ。米李はアマネの隣で心配と申し訳なさが同居した複雑な表情を浮かべている。


「ねぇ、ハナちゃん」


「……なんだ」


「これってほんとに、ほんとに協会じゃないんだよね」


「そう信じてる」


「じゃあパパと久世さん、畠山さんもや先生も関わってないんだよね」


「……ああ」


 東弥は気づいている。これは自分に向けた質問じゃない。アマネが自分で信じたいことだ。アマネと関わって一月ほど。精神が摩耗したアマネを東弥は見たことがなかった。それは付き合いの長い米李も同じらしい。


「アマネちゃん……」


「ごめんね、米李ちゃん。私、ちょっと不安で」


 ちょっとどころではない。米李はアマネの頭をそっと自らの肩に乗せた。


「……本当に静かだな」


 東弥のぼそりとした独り言さえやけに響く。


「戦争中なんて思えなくらいだ」


「うん。きっとフウラが私たちに気を使って音が聞こえないようにしてくれたんじゃないかな」


「…………空気が淀むな」


 東弥は窓に近寄り、開けようとする。しかしビクともしない。


「……まさか」


 東弥はすぐさま踵を返し扉の方へ行く。


「ちょっと、フウラはここから出るなって────」


 アマネの忠告も聞かずに扉を開けようとする。ガタガタガタ! 大きな音がなっても開かない。


「え……」


 アマネと米李も状況をやっと察する。東弥は力一杯扉を蹴り飛ばした。しかし何も起こらない。


「まずい……!」


 ナイフを取り出し、左手を刺す。血司武器、刀を顕現させる。斬りつけた。しかし手応えがない。まるで攻撃がすり抜けてしまったかのように何の成果も得られない。


「クソっ! あのクソノウナめ! 騙された!」


「だ、騙されたって……」


「閉じ込められた! まんまとこんな密室に! まさか全部織り込み済みで立松を殺そうと……」


「ま、待って! ハナちゃんが言ってることって、フウラが私たちを騙したってことだよ」


「それ以外考えられないだろ」


「そんな……フウラがそんなこと」


「そう考えるのが妥当だ。最初からあいつは怪しかった。何か隠してると思っていたが、こんな直接来るなんて」


「フウラは人間とノウナの対立を終わらせたいって……それで……」


「嘘だったってことだ。米李さんを助けたのも、俺たちをここに誘き寄せるためってことだ」


「でも、私たちがここに来たのは偶然だったじゃん」


「偶然じゃなかったってことだ。おそらく、俺たちがここに来るときすでに仕掛けがあったに違いない」


「それって、私が連れてこられたのがここだったのと関係があるのかな……」


 米李がおずおずと口を挟む。


「多分。お嬢と米李さんを攫った連中は俺たちをここに誘き寄せたかったんだ。俺たち、というより、立松を……」


 東弥は少し考え込むと被りを振った。


「そんなことをあれこれ考えてる暇は無い。とにかく早くここをでないと。米李さんも武器を出して────」


 米李が頷き、ナイフを取り出す。

 バン! 扉が勢いよく開かれた。全くの突然。予想できなかった状況に三人は固まる。


「三名確認!」


「警戒を解くな!」


 入ってきたのは、数人の、特殊部隊のような装備を身に纏い銃を手にした者たちだ。全員黒色のゴーグルとマスクをつけていて性別どころか表情もわからない。

 アマネはすぐさま米李をかばい、さらに二人を東弥がかばう。東弥は刀を構えた。


「なんだ、お前たちは!」


「言葉が通じる……隊長、人間です!」


「まさか本当だったとは……全員、銃を下ろせ」


 隊長、と呼ばれた男がアマネたちに近づいてくる。


「君たちが、異界に連れ去られたという……しかし妙だ。報告では四人だったはず……ああ、そう構えないでくれ。俺たちは敵じゃない」


「……俺の質問に答えろ。お前たちは何者だ」


 緊張を緩めず東弥が質問を繰り返す。


「これは失礼。俺たちは対異界防衛協会日本支部の特殊部隊『レパード』だ。俺は隊長の鐘戸哲だ」


 ゴーグルとマスクを外して素顔を見せる。白髪混じりの壮年の男性、鐘戸は軽く笑いながら自己紹介をした。


「俺たちは極秘任務を遂行している。立松副理事からの直々の指令だ」


「パパから!?」


 アマネは驚きのあまり大きな声を出す。どうやら礼司も人間界で動いてくれていたらしい。


「…………」


 しかし対照的に東弥と米李は警戒を解かない。


「レパードなんて聞いたことがない」


「そうかもな。俺たちは極秘の任務専門だ。任務内容はもちろん、俺たちの存在すら協会の表の人間は知らんだろう」


「……そんな奴ら、信頼できると思うか? ただでさえ今、俺たちは騙されたところなんだ」


「信じる信じないはお前たちの勝手だ。だが俺たちも任務できているんでな。お前たちを回収して人間界に連れ戻さなきゃならん。悪く思うな」


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


 近づこうとした鐘戸をアマネが止める。


「私とハナ……東弥くんは連れ去られた訳じゃなくて自分からここに来たんです。米李ちゃんとりん先輩を連れ戻すために。まだりん先輩のことを見つけてないから、帰ることはできなくて……」


「大丈夫だ。雫山凛のことは俺たちが責任を持って連れて帰る。安心してくれ」


「……でも」


「俺たちは一言もお前たちと帰るなんて言ってない」


 言い淀んだアマネに、東弥が引き継ぐ。


「悪いが、立松副理事の命令ってのも怪しいな。副理事は俺たちがお嬢と米李さんを探しに行くことに賛成してくれた。そんな人が今更俺たちを連れ戻そうとするなんておかしいだろ」


「…………」


「あ、アマネちゃん、この人たち────」


「俺たちは、お前たちをなんでも『生きて連れてこい』とは言われてない」


「────」


 身体中を一瞬で冷や水が駆け巡ったような、寒気。


「俺が必要なのは、お前だけだ、立松アマネ」


 パン。

 乾いた音が響く。目にも留まらぬ速さで抜かれた拳銃の矛先は、米李の心臓に向いていた。


「………………え?」


 何が起こったのか。ただ少し臭うだけ。東弥も、アマネも反応できなかった。米李でさえも。

 後ろで何かが崩れ落ちる音。少し下を向けば、小さな手が見える。


「……め、い、ちゃん……?」


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