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絶対主義。

作者: 泡沫夢

思いつきでパーっと書きましたので、

あまり長くありません。

ちょっと回収しながら読んでみてください。


「君が居ないと淋しい」

「君が俺の心の支えなんだ」


初めてそんなことを言ってくれたのは貴方でした。

存在意義も、理由も何も見いだせなかったわたしは、

社会の海に溺れていたわたしを救ってくれたのは貴方でした。

波に飲み込まれないように、わたしは貴方の言葉に縋り付きました。


でももう、貴方はわたしの側に居ません。


独り乗りのボートに、わたしまでも乗せてくれて、

懸命にパドルを動かしていた貴方は、

独りで溺れてしまいました。

わたしを生かす為に、自ら身をあの世という冷たい湖に飛び込みました。


わたしは、誰かを見殺しにして迄、

誰かの幸せを踏みにじって迄、

奪って迄、わたしはわたしの幸せは望みません。

わたしに「生きろ」「負けるな」「此処から頑張れば善い」と掛けてくれたのに貴方は、貴方は____




「存在意義を見いだせない?」

彼は驚いたように林檎をまじまじと見つめる。

「ええ。わたしがわたしで居る必要が解らないンです」

「そんな事、後でわかるさ。遠くの事を考えるより、明日否、今日の事を考えた方が得策ではないのか」

彼は[得策]という言葉をよく使う。

効率と遣り甲斐を優先する彼は、正しく仕事の鬼と言われていた。

学生の身である林檎は、頑張る彼の何の力にも成れない気がして、心底辛かった。

「林檎は、林檎らしく居ればいい。」

「でも…何の力にも成れないわたしは、貴方の側にいて善いのでしょうか」

「其れを言い始めたら限りがない。居て欲しいから居てもらい、居たいから居る。それ以上でも以下でもない理由だ。問題有るか?」

疲れていながらも其の様な素振りを見せずに微笑して、林檎を励ます彼は人間味を帯びていなかった。


例えるとしたら、神様なのか、。


否、神様なんか居ない。


神様と云うのは、都合よく利用し、都合よく己を守るための、物でしか過ぎない。


其れでも、神様なんだ。林檎にとって、紛れもなく神様だった。


罪なんか擦り付けず、縋り付き、慰める彼は正しく林檎の神様だった。



「林檎、之からは自分の力で泳いで行くんだよ」

彼は水面のギリギリで、わたしの頬を優しく撫でて、

「行かないでください。わたしは、貴方の為なら命だって投げ出せる」

「俺だって、林檎の為なら命くらい惜しくない」

そうやってまた、微笑して沈もうとする。

その笑顔がわたしを悩ませるんだ。



「ダメです、わたしも、飛び込みます。」


覚悟してボートから立ち上がり、

脚を冷たい水面に浸す。


「其れなら、都合が良い。」


「え?」



____一瞬耳を疑った。

「ほら、沈むんだろう?」

彼はわたしの腕を引っ張って、沈めようと脚で押し込む。

水が物凄い量で口の中に入ってくる。



わたし死ぬのかな…





目を覚ましたら病院のベッドの上でした。


「林檎、おはよう」

微笑む貴方はそこにいた。

「お早う御座います」

「随分と長い夢を見ていたみたいだね」

「そうですね」


あれは夢?

現実?

溺れたから此処に居るの?


「林檎、昨日は大分魘されていたけれど大丈夫?」


嗚呼、夢か…


「大丈夫ですよ。少し悪い夢を見ました。」

それにしても、とてもリアルだった。

おかしいと思っても、何も証拠も無い。

「ちょっと俺は席を外すよ。」

彼が席を外したら、昨日見た夢で着ていたモノと同じ服がハンガーにかかっていた。

「でも、夢だよね…」

彼はわたしの神様。

そんなことをする筈が無い。


「××博士は素晴らしい。不死身の娘を沈めての実験を見事成功したとは…生還した彼女もすごいが、改めて××博士の技術の素晴らしさを体感したよ」

「…いえ、そんなことありませんよ。」

また、一瞬耳を疑った。

「真逆彼女を実験台にするとは…××博士も何とも残酷なお方で。」

「いえ、彼女の了承の元でやりました」

「はい?」

「俺は彼女の神様ですから、逆らえないんですよ。」

「またまたご冗談を」

実験台に?了承?

意味がわからない。


今迄のわたしは何をしていたんだろう。

馬鹿だ。それ以上何も言えない。

嗚呼、折角不死身なら彼に復讐したい。

同じ様に、湖に溺れさせるんだ、

脅して、飛び込ませるんだ…



「だって、彼女は俺の____

時制が大分バラバラですが、

解る方には解ると思います。

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