女になった理由
あの戦いからひと月がたとうとしている。
激しい戦いではあったが、幸いな事に死者は出なかった、怪我人もアリサを含む治癒魔法士のおかげで今はもう元気を取り戻している。
学園長は実習先から戻ってくると、私達に頭を下げて謝った、多少思うところはあったが学園長に頭を下げられては恐縮するしかなかった。
全てユリウスの計画だったのだろう、魔猿の件も含め、学園を手薄にし襲撃を行うという。
学園からは六人の生徒がいなくなっていた、その内二人はニコラと私を刺したナダルと言う生徒だ、ナダルは拘束されていたが、見張りの人間が二人の生徒に襲われて逃げられてしまったらしい。
もう一つ、学園が隠し持っていた魔宝石が無くなっていた、魔宝石は稀に見付かる天然の魔力の結晶で高価な魔道具の作成、高位の魔法の術式の媒体等に使われる貴重なものだ、今回盗まれた物は国から保管を任されていたもので学園長も流石に顔を青くさせていた。
それもいなくなった生徒の仕業だと思われ、六人ともユリウスの部下であろう。
完全にしてやられた形になった。
しかし、ニコラが私達を見逃した理由を含め疑問は残った。
『しかし、大変ですけど皆んな無事で良かったですね』
デニスが横でご飯を食べながら話している。
笑ってはいるが彼がニコラの事をずっと気にかけている事を私は知っている。
『それはそうだね』
デニスの内心を思いながらも返事を返す。
今は私とデニスとアニーの三人でアニーの部屋に来ている最近は休日に集まる事がよくある、アリサは今日は用事がありいない。
たわいもない話しをしながら三人で食事をとる。
『あれ、何だか眠くなってしまいました少し横になってもいいですか』
デニスが眠そうに目をさする。
『ええ構わないわ、大丈夫疲れてるんじゃない』
アニーが心配そうに目を細める。
『すいません、心配はいりませんから』
そう言うとデニスはソファの上に寝転がる。
暫くするとデニスの寝息が聞こえてきた。
『寝たわね』
アニーが確認すると、意地の悪い笑みを浮かべた。
『寝てるな、でもやっぱり止めないかこんなのデニスに悪いよ』
私は胸に罪悪感を感じてくる。
『悪いもなにも、もう一回してるじゃない、もしかして照れてるの、さっさとキスしなさい』
『あれは事故みたいなもんだから』
『焦れったいわね、じゃあデニス君を起こして頼むキスして下さいって』
アニーの言葉に私は顔が赤くなる。
『そんな事出来るわけないだろ』
『だったら早くしなさい』
私は俯き考え込む
やるしかないのかな
何故こんな事になったのかとゆうと、アニーが目覚めてから私が女の体になった事を話したのだ、流石に信じてもらえない思っていたが、アニーは大いに話しに食いつき詳しく話しをさせられた。
その時、私がデニスと偶然にもキスをした話しをしたら、キスが原因かもしれないと
アニーが言い出し、アリサがいない今日、デニスに睡眠薬を盛りこの状況にいたる。
『早くしなさい』
アニーがまたキスを促す、先程より口調がキツイ。
くそ
私は意を決してデニスに顔を近づける、唇が触れ合う瞬間で止まる。
いいのか、本当にこんな事して
デニスの顔が近い、ドキドキと胸が高鳴る。
もう一度覚悟を決める。
私は目を瞑り、さらにデニスに顔を近づけた。
デニスの唇と私の唇が触れ合う。
壊れそうなくらい心臓が強く脈打つ。
慌てて私は顔をあげる。
『どう?』
アニーが真剣な眼差しを向けてくる
『よく分からないけど......お!』
言葉の途中で、急に体が熱くなる。
あの時と同じだ、ドンドンと熱さは増していく。
体の中で何かが弾けた。
『本当に女になってるわ』
アニーが興味深そうに私の全身を見る。
アニーの手が私の胸に伸び、揉まれる
くすぐったい
『大きい』
ポツリとアニーが呟く
『関係ないだろそれは、やめろよ』
アニーの手を払う
『ごめんなさい、ちょっと面白くて、でも結果は成功ね、女になったわ後は魔力ね 、小さくていいから炎をだしてみて』
アニーに言われた通り、私は小さい炎をだす。
『桁違いね、これ私より強いんじゃない』
『そんなにか』
『ええ、この炎から感じる魔力からの予測だけどね』
『一体何でこんな事に』
全く意味が私には分からなかった。
『まあ予想はつくけどね』
アニーが当然の様に言う。
『えっ!つくの』
アニーの衝撃の発言に驚く。
『説明してあげるわ、そもそも、この世界に体の性別と心の性別が違う人間がいないのは知っているわよね』
私は肯定し頷く
『じゃあ何故いないのか分かる』
『それは分からないな、理由なんてあるのか』
アニーの言葉に戸惑う、いないのは知っていたが、理由なんて考えた事がなかったからだ。
『あくまで私の予想で確証はないけどね、貴方がいた世界と違ってこの世界には魔力がある、そして魔力は体に影響を及ぼすわ、魔力の源は何だと思う』
『エレメントじゃないかな』
自信はないが答えてみる。
『不正解、エレメントは魔法を放つ元であって、魔力の源ではないわ』
『よく分からないけど』
アニーの言葉に私は混乱する。
『まあいいわ、とにかくエレメントは違う、では魔力の源は何か、それは精神だと私は思うわ、これも確証はないけどね』
『精神が魔力の源』
『そう精神、精神が魔力の源であり、そして魔力は体に影響を及ぼす、だから男の精神は男の魔力をもち男の体になる』
『なるほど、なんとなくだけど分かったよ、じゃあ私は何で男に生まれたの』
『そこが問題、貴方は特殊な状態で生まれた、貴方の精神は既にある程度成熟していたし、何より世界を渡っている、さらに男に対する強い嫌悪感、それらが重なってこの世界では本来ありえない男の体に女の精神が生まれたと私は考えるわ』
『なるほど、でもこの魔力の強さは』
『本来、世界を渡るほどの異常な精神よ、精神が魔力の源と考えたら、むしろこれが正常な状態よ、そして今女の体に戻ったのは貴方の精神が自分が女である事を強く意識したから』
『女である意識か』
確かに、デニスとキスをした瞬間私は女になっていたと思う。
アニーの説明は分からない事もあったが、何となく自分の状況は掴めた。
しばらくして、私の体はまた男に戻った、前より女でいる時間が多少長かった気がする、アニーによれば女の意識が強くなったせいだという。
デニスも目を覚ましたので、その日は家路についた。
部屋のベッドで今日の話しについて考える。
このまま女である意識が強くなれば、私は完全に女になるのだろうか、アニーもそこまではわからないと言っていた。
自分が女に戻る想像をしてみる、横にはデニスがいて...... 妄想が膨らみすぎたころ、ハッと我に帰り、想像を打ち消した。
恥ずかしさで顔が赤くなっている。
凄く恥ずかしいが悪くない気分だった、知らず笑みが浮かぶ。
私は目を閉じ眠りについた。
そろそろ、完結させます。
文章も何から未熟ですので、改善点等教えてもらえたら嬉しいです。




