戦いの終わり
ロイ視点
朦朧とした意識の中、激しい音が聞こえる、頭のなかがグルグルと回転してるみたいに気持ちが悪い。
音がしなくなる、だんだんと意識がハッキリとしてくるとニコラに倒された事を思い出した。
あれから、どうなったのだろうか
体を起こ少し目を開く、目の前には一面凍りついた世界が広がっていた、アニーの魔法のためだろう。
そして、倒れているアニーとその横に立つニコラ。
『アニー!』
思わず私は叫ぶ。
私の声にアニーは答えない、代わりにニコラが視線を私に向ける。
アニーが負けたというのか!
信じられなかった、強い衝撃を受ける。
ニコラは私を一瞥すると、またアニーに視線を戻す。
アニーはまだ、無事なのか?
状況は分からないが、とにかくニコラを止めなければ
焦る様に魔法を構築。
【光熱線群】
五つの光線をニコラに放つ。
光線がニコラに当たったと思った瞬間、ニコラの手が動きチリヂリに弾ける。
バカな手で弾いたのか、避けられとは思っていたけど、まさか手で弾かれるとは思わなかった。
いや、アニーに勝ったのだからこれ位やってもおかしくないか。
どうやっても勝てない。
アニーは負けた、デニスとアリサも生きてはいるがダメージが深い様で目覚める気配はない、かろうじて動けるのは私だけか。
打つ手がない。
けれど、何もせず諦めてしまってはデニス達に顔向けできないなと思い、悪足掻きの様に、私はまた魔法を放つ。
ニコラが、また魔法を簡単に弾く。
もう一度、魔法を放とうとした時、ズキリと頭が痛み 私は倒れる。
私が倒れた先にはデニスの体がある、避けようとしたが上手くいかず、そのままデニスに覆いかぶさった。
唇に柔らかい感触を感じた。
場違いにも、私は赤面する、デニスにキスをしてしまったのだ。
以前、アニーにデニスの事が好きなんじゃないかと揶揄われた事を思い出す。
そんなはずはないと思っていた、けれど本当は、どうだろうか、好きになっていたのかもしれないな、今になって意地をはる意味もない。
全く私は捻くれているな、こんな状況にならないと素直に気持ちを認めれないなんて。
今更気づいて遅いか。
不意に体が熱くなる、ドンドンその熱さは増すばかりだ。
次の瞬間私のなかで何かが弾けた。
魔力が吹き上がる。
凄まじい魔力が、私のなかに湧いてきている。
『何なんですか、それは』
ニコラが訪ねてくる、彼女も私の異変に気付いたみたいだ。
『分からない』
そうとしか返せない。
ん、違和感を感じる、声が変だ、それに何だろう胸に圧迫感を感じる。
これは、自分自身を見返し気付く。
女になっている!!
意味が分からなかった、ただ一つ分かっている事は、今の私ならニコラを止められるかも知れないという事
『私もよくは分からないけど、いくぞニコラ』
炎をニコラに向ける、今までの比ではない。
避けるニコラ、その顔には焦りが見える。
『馬鹿な、こんな話しは聞いてないぞ』
魔法を放ち続ける、灼熱の世界が広がりアニーの氷を溶かしながらニコラを追いすがる、想像を超える威力だった。
これ程の火炎を凌ぐニコラも凄まじい
次第にニコラを追い詰めるが、彼女は覚悟を決めた様に此方に突き進んできた。
火炎でニコラを阻む、避け、弾き、防ぎながら向かってくるが、此方に向かってきている分、防ぎきれてない、炎がニコラの体を焼き、押しもどす。
ギリギリの攻防が続くなか、不意に湧き上がる魔力が消え、元の普段の魔力に戻ってしまう。
落ちた威力の火炎ではニコラを止められるはずもなく、火炎は容易く振り払われた。
くそ! あと少しだったというのに。
頭の痛みも戻っていた、もう普通の魔法さえ打てしないだろう。
私は絶望を感じながらも、強くニコラを睨みつけた。
不意にニコラが立ち止まり驚いた様な表情をする、そして、私に向かって少しだけ笑うと背を向けて走り去っていた。




